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転生少女、と、コルネリア。

 中庭にはもともとベンチがいくつか設置してあって、あちらこちらで座って休憩したり木々やお花を楽しんだり出来たんだけど、この度なんとテーブルセットが新たに設置された。

 中庭の噴水が見える場所に、日中ちょこっと木陰になる場所があるんだけどそこにちょっとお洒落な白のテーブルセット。

 雨にぬれても大丈夫な金属製で、意匠も凝ったロココ調。猫足がかわいい。


 お昼休みはここでお茶しながらお弁当食べたり。

 サーラもリーザも厨房でお弁当にして貰う様になったから、みんなで食べれて嬉しい。

 もちろん貴族様のお茶会の様に給餌がいるわけじゃないからお茶もお菓子も食事も基本ぜーんぶ自分たちで用意するわけで。

  それはそれで楽しいし。


 ただ。


 サーラにだけは側仕えの人がくっついて離れなかった。

 わたしたちのお仕着せのメイド服とは違う、もっと上品な侍女服を着た彼女、アスターニャさん。

 サーラが生まれた時からお側に居るのだと豪語する彼女のサーラへの愛情は見ててすごくわかりすぎる。

 偉ぶらない気さくな方で、最初、サーラとわたしたちが仲良くしてることに文句は無いっぽくてちょっと安心したのも。


 今日は新作ケーキのお披露目らしい。

 サーラが作ってきたといういちごのミルフィーユ。


 その綺麗な出来栄えに、

「ほんとにサーラが一人で作ったの?」

 と、思わず言っちゃって。


「うう、ばれますか……? 実はアスターニャに手伝ってもらったのです」

 そう、真っ赤になって答えるサーラ。


「うふふ。私はほんの少し、お手伝いしただけですわ。クリームを絞ったのも、いちごをのせたのもサーラさまですから」

 にっこり微笑むアスターニャさん。


 まあ、でも、たぶん。この綺麗すぎる出来栄えはプロ級だ。サーラだともうちょっと素人感があるかな。

 おいしいからいいんだけど。


 そうして食後のデザートを楽しんで。

 お茶はアールグレイの茶葉をミルクで出したミルクティー。うん。美味しい。


 そういえばラインハルトさまと初めて会ったのはこの中庭だったなぁ。

 あの時はバグから助けてもらったんだっけ。

 なんだか随分時間が過ぎた気がする。


 最近はめっきり当時の様な怖い事は起こってなくて。

 わたしもすっかり日常を楽しんでる。


 でも。


 なんだか少しだけ、引っかかってることがあるような気がしてしょうがない。

 うーん。




 ガラン


 中庭の入り口扉の鐘の音。

 誰かが入ってきたみたい。


「サーラ様! やっとお側に参ることが出来ました!」

 大きな声でそう叫びながらやってきたのは、真っ赤な騎士服を着た綺麗な女性騎士だった。


「コルネリア。どうして……」


「サーラ様の護衛騎士になりました!」


「いえ、コルネリア、あなたまだ卒業前でしょう? それなのに……、ご両親やご家族の方に申し訳ないです……」


「ああ、ちゃんと飛び級して卒業してきましたよ。だから大丈夫です」


 なんだかこの子、押しが強いな。サーラが困惑して黙ってしまった。

 そのまま少しの沈黙。うーん。


「サーラ様が、悪いのですよ……。私を置いて行くから……」


 困り顔のサーラを見てるうちに段々と顔が曇っていく彼女。しまいには泣きそうになってそう呟いた。


 ああ。好きなんだなサーラの事が。ちょっとかわいそうに見えてくる。


「しょうがないなぁ。もう。そんな顔しないの。」

 サーラは立ち上がってコルネリアのそばまで行くと、ちょっと背伸びして頭を撫でた。

 途端にぱあって顔を綻ばせるコルネリア。

「ありがとうございます。一生お側でサーラ様をお守りします!」

 と、サーラに抱きついた。


「だめ、離して、もう、バカ力なんだから」

 そう言いつつ顔はそんなに嫌がってない感じのサーラ。

 なんだか犬がじゃれついてるみたいにも見えなくはない。

 ん? ちょっと失礼な感想だったかな。


 ちょっと落ち着いて。

 サーラはコルネリアを席まで連れてきて、

「この子、コルネリア。わたしの帝都時代の知り合い。宜しくね」

 そう紹介してくれた。


「え? 知り合い、じゃないですよう。私はサーラ様の騎士で……」

「わたくし、あなたを受け入れてませんよね? わたくしの騎士になりたいっていう話」

「えー……。あのとき仰ってくれたじゃないですか……。わたくしの剣として共に戦うことを許す、って……」

「あれはあのときだけのはなしでしょー? 緊急事態だったじゃないですか」

「私、あのときここでご一緒に戦ったあの思い出だけを心の拠り所にして今まで耐えてきたのです……。頑張って卒業して、やっとお側に来れたのに……」


 ちょっとかわいそうになってきた。

「ねえサーラ。あんまりじゃけんにするとかわいそうじゃない?」


「そういう問題じゃないんです。亜里沙ちゃんは黙ってて」

「あなたサーラ様のことを呼び捨てにするとはどういう事ですか! 許しませんよ!」


「亜里沙ちゃんはお友達だからいいんです。コルネリア、亜里沙ちゃんに何かしたら追い返しますよ!」

「あわわ……。ごめんなさいサーラ様」



 あは。

 ちょっとびっくりしたけどこの子もそんな悪い子じゃなさそうだし。

 何よりサーラのテンションが高い。

 おとなしいだけじゃないサーラが見れて、ちょっと嬉しい、な。



 あらためて。

「アリア=レイニーウッドです。よろしくお願いします」

「リーザです。よろしくね」


「ほら、コルネリア、あなたもちゃんと自己紹介してね」


「えっと、コウラス・コルネリウス・プブリウスです。よろしくー」


 え?


 コウラスもコルネリウスも男性名? だよね?

 どういう事?


 っていうか、あまりにも自然で気がつかなかったけど、この子、ひょっとして男の子??







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