転生少女、と、魔法少女のつくりかた。
あれから。
とりあえずわたしとあきさんは泣きながら待ってたサーラを宥め、応接室に向かった。
人払いしてもらい三人でソファーに座る。
サーラはわたしにくっついて離れなかったので隣に並び、向かい合ってあきさん。
まあ三人っていっても、結局ここにいるのはサーラ、カッサンドラ様、わたし、ナナコ、あきさん、ともさかさん。あ、クロコもいる。
クロコは今わたしの中で寝てる。
結局クロコ、影、どころか、わたしのインナースペースを自由に出入りできるようになってた。すごいよね。
そんで今はわたしの中ってこと。
わたしの魔法少女の格好はとりあえず解除できたけど、それでも以前より身体が軽い。運動なんて苦手だったのに、今ではたぶんその辺の人より強い? かもしれない。なんかどんどん人間離れしていっちゃうけど、しょうがない、か。
「結局魔王を魔法少女で上書きして、で、悪いプログラムを押さえ込んだ格好だな」
と、そう、あきさん。
「ですが、終末プログラム自体が無くなったわけではありません。今回の魔石に取り込まれていたのはほんの一部、いえ、コピーの一つ、です。根本的に解決したわけでは、まだ、ないでしょう」
カッサンドラ様か。
って、そうなの? ちょっとふにゃぁ。
……それよりも。あきのこと、知りたいかも。
え? ナナコ? ひょっとしてあきさん好きになっちゃった?
……ばか。そんなんじゃないわよ。 エンジェルレイヤーの事とかそのマッドな博士の事とか、色々聞いておかなきゃ困るでしょ?
そっか。そうかもね。
「あの、あきさん? このレイヤーの魔法とか、マッドな博士の事とか、ちょっと教えてほしいな」
「そう、だな。ちょっと話長くなるけど、いいか?」
「もちろん。お願い」
「ま、そんなに期待されるような話でも、ないんだけどな」
でも、ちょっと、興味ある、よね。やっぱり。
「俺たちは今、元の世界へ帰るための旅をしてる」
そう切り出したあきさん。って、元の世界にって、もしかしてなかなか戻れなかったり? する?
「世界ってほんといっぱいあるんだ。数え切れないくらい。その上、どんどん新しい世界が生まれてる」
「で、もちろん消えていく世界も、あるみたいなんだけどね」と、ともさかさん。
「で、ここがそうか、とか思った似た世界でも、やっぱり違ったり、でさ」
「ひょっとして、帰れなくなってる? とか?」
「まぁ、ぶっちゃけそういうこと」
あは。でもなんだか危機感なさげ。
「まぁ。ついでに行方不明の兄貴探しもしてるんだけどね」
「んで、もともとはエンジェルレイヤーの発案者であるとあるマッドなじいさんとちょっと対立して、悠のやつが暴走した結果エネルギー過剰で次元突き抜けちまったのが原因」
「俺は本体をそのじいさんの研究室に置きっ放しだから、仕方なく悠と二人で一つの身体共有してるってことさ」
「で、本題。元々そのじいさん、っていうか、天城博士の研究が、魔法少女のつくりかた、っていうか。人工的に魔法少女をつくる為色々研究してたらしく、そのうちの成果の一つがエンジェルレイヤーなのさ。魔法の触媒を人のインナースペースと重ね合わせ融合し、そんでもって変換して書き出す。それによって元々魔法回路を持たない人間でも魔法少女になれる、っていうはなし」
「その過程で色々変質したりする個体もあったりで。性別が変わったり人格が変わったり。色々ありすぎて、結局危険だからってお蔵入りになった魔法なんだけど」
「まさかアリシアの魔王のキオクの中に同じのがあるなんて、ね」
ああ、そっか。それはほんと不思議。
あ、
でも、そっか。
それなら。
わたし、気がついちゃった。かも。
もしかしてもしかしたら、わたし、あきさんの世界、わかるかも、しれない。
あ、でもダメか。そもそもわたしが前世の世界に帰る方法だって、わからないわけだし。
「こんな事言ってもなんともなんないかもだけど。わたし、あきさんの事、昔お話で読んだよ。好きだったお話。あきさんはヒーローだった」
「お話の作者、は、友坂悠さん。たぶん、別世界のともさかさん。だから。きっと。わたしの前世の世界にいた友坂さんの心の奥底が、きっとあきさんの世界と繋がってたんだよ」
世界はいっぱいあって、いっぱい増えてて。
おはなしも、いっぱいあって。増えている。
そしてそれらが繋がってる、なんて。
なんだかすごく素敵だなって。ほんと、そう。おもう。




