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転生少女、デートする。



 とりあえず防御と転移に目処が立ったところで、わたしは外出することにした。


 お家のあった所も見てみたい。お母さんお父さんにも逢いに行きたい。そうサーラ様に言うと護衛騎士様を数人つけるって言われたけど流石にちょっと仰々しいのは勘弁だ。あんまり大勢で行くと両親にもビックリされちゃう。申し出は丁重にお断りしてそれでもたぶん何人かわたしの見えない所に護衛付ける気満々なサーラ様には悪いけどなるべくこっそりと門を出る。

 今日は一日お休みを取ってるし一応周りのみんなには魔王の事は内緒にしてるので、ほんと普通のお休みの外出っていうのを楽しみたい。


「遅いよアリシア。って、今日は何処に行こっか?」


「リーザ先輩今日はありがとうございます。わたし城下の商店街ってあんまり詳しくなくって。学生の頃はあんまりこっち遊びに来なかったし。どこか美味しいお店に行きたいなぁとか思ってたんですけどなかなかで」


「おうち無くなっちゃったりして大変だったもんねー。毎日朝晩賄いご飯も滅入るよねー。やっぱり」


「そ、そ、そうなんです。美味しいんですけどやっぱり別のご飯も食べたいです」


 お休みの外出で美味しいご飯がたべたいなぁって漏らしたら、リーザがあたしが連れてってあげるよ! って。


 ちょっと嬉しい。


 サーラ様に話したらなんか凄く機嫌が悪くなったけど、やっぱりわたし一人自由に外出するのが気に入らないのかも。瑠璃ちゃんも今度一緒に遊びに行く? そう誘ったら途端に機嫌が直ったから。

 まぁ。サーラ様を街に連れ出そうと思ったらちょっと工夫が必要だろう。最低でもウイッグとメガネで変装しなくっちゃ。でも……。

 楽しいかも。ね。


 まぁ今日はリーザとデートなので。瑠璃ちゃんにはごめんなさいだけどいっぱい楽しんでくるね。




 クロコはお留守番なのだけど多分わたしに危険があるようならどこからともなく現れる、そんな気もしてる。


 ……っていうかあの子、あんたの影に移動する技覚えてるっぽいよ。


 え? そうなの?


 ……この間あたしがあの子を空間転移させたじゃない。それでコツを掴んだっぽい。


 ちょっとすごいかも。もしかしたらあの子の方が魔王に相応しい? 魔力もおおいし。


 ……あはは。まちがいない。


 うきゅう。ナナコったら。そこはそんな事無いよって言う所でしょ!


 ……あはは。ごめんねー。


 もう。




 リーザはお仕事では先輩だけど、おしゃべりしたり一緒におやつ食べたりとかなり仲良くなった。一応彼女には「先輩」って呼びかけてるけど、たぶんそのうち忘れちゃいそう。リーザって呼び捨てにするのは気がひけるけどほんとうはちゃん付けしたいくらい見た目が幼いのだ。


「もう、なんか変なこと考えてない?」


 笑ってるけど目が怖い。


「ああ、リーザちゃんはかわいいなぁ、ってあうあう。ごめんなさい」


 つい本音が出た。


「もう、なにそれ。まぁ、いいわ。許してあげる」


 笑ってる。あはは。良かった。リーザちゃん呼びの許しが出た、訳ではなさそうだけど、まあいいか。そのうちなし崩し的にリーザちゃんにしちゃおっかなー。


 トライアンドエラー。本当はトライアルだっていう話だけどわたしはこのトライって言葉が好きだ。ただの試行錯誤ではなくて挑戦する感が出るからかな。好きな人との距離の測り方は結局当たって砕けろなのだと思ってる。嫌われてさえいなければこっちからアクション起こせばいい。うん。

 待ってるだけじゃ、望む結果は出ないよね。


 まず、自分から一歩近づいて行きたいな。


 ☆


 大門から正面の池を左に回り池の端から南に続くのがこの城下で一番の商店街。雰囲気としては日本の観光地のアーケードの商店街って感じで小さいお店が軒を連ねている。

 途中公園や教会に続く道に分かれてたりもするけど基本的にまっすぐ続いている。

 お肉の串やジャンボフランク肉まんコロッケいろいろ売ってる。ちょっとフランクに心が動いたけど今日はお店で食べる予定なので我慢だ。


 かわいい布やバッグのお店、服屋さん、靴屋さん。みんな規模は大きく無いけど幾つもある。木彫りの人形が飾ってあるお店には、アクセサリーも並んでる。ほんと目移りしてしょうがない。

 っていうかこうして見て歩いてるだけで楽しい。それも一人じゃなくてだれかとにこにこ一緒にまわるとほんと楽しさも倍増だ。


 鍜治屋さんや武器のお店は右側の通りに纏まってる。こっちにはほとんど無いな。わたしのお家のあった地域も両親の勤め先の騎士家もそっちの方角だから、夕方リーザと別れたらそっちに行く予定。

 昼間はどうせ両親はお仕事中だし、終わった頃見計らって逢いにいって、んでもって一緒に晩御飯食べる予定。手紙でやり取りしてある。

 待ち合わせ時間まではまだ充分時間があるので、ほんといろいろ楽しむぞ!


 ……ほんといろんなお店があるねー。なんか楽しい。


 ナナコも入れて三人で回ってる気になるけどあんまりナナコと心の中で会話してるとリーザにも悪いし難しいね。


 ……大丈夫。あたしのことは気にしないでいいよ。充分楽しんでるから。


 ごめんねナナコ。


 きゃぁきゃぁ言いながらかわいい小物とかを手に取って見たり買おうかどうしようか悩んだり。リーザと二人、いや、ナナコも入れて。ウインドショッピングを楽しんだ。




「ここここ。ここのお店が美味しいの」


 看板に「ねこや」って書いてある。ん?猫のお店? 入り口の前には猫の置物が「いらっしゃい」って書いた立て札抱えて招いてる。


 カランコロン


 ドアを開けると


「いらっしゃいませー」


 大きな声で迎えられた。


 時間はまだお昼じゃないけどお店の中はけっこう混んでガヤガヤしてる。


「どうぞ、お好きな席に座って」


 恰幅のいいおかみさんがそう言って空いてそうな席に手を向けた。


「あそこにしよう」


 リーザが選んだのは窓際の席。二人で座っても余裕があるテーブル。場合によっては椅子を移動して三人とか四人とか座れそうだ。


 広いテーブル。座り心地のいい椅子。そんでもって綺麗に整えられた店内。

 多少人の声でざわついてはいるが、とても居心地の良い空間だった。

 壁にはいろんな猫の絵が飾ってある。本当に猫がいる訳ではなさそうだけど。


 いいなぁ。こういうお店。


「何食べるー?」


「わたしオムライスにしよっかな」


「じゃぁわたしも一緒」


 二人ともオムライスにした。メニューは文字だけだからどんなのが出てくるのか楽しみだ。


 注文してしばし待つと、


「お待たせしましたー」


 大きなお皿二つ両手に持ったおかみさん。お皿が大きいのはそのまま持っても料理の熱で熱く無いように、っていうことかな?

 オムライス自体はそこまで大きく無い普通のサイズだったけど、ふっわふわの卵にソースが目一杯かかってて、すごく美味しそう。


「いただきます」


 両手をあわせいただきますするとリーザもいっしょに手を合わせてくれた。


「おいしーねー。幸せ」


 一口目からほんととろっとろの口当たり、ソースも絶品だ。思わず笑顔になる。


「あはは。そういう顔してくれるとほんと誘って良かったっておもうよー」


 リーザもすっごく笑顔。良かった。




 美味しいご飯に満足して。公園に行って水鳥を見て、そんでもって大道芸を観て。

 おやすみを思いっきり満喫した。


「リーザ先輩今日はありがとうねー。ほんと楽しかったデス。そろそろ西地区に向かおうかなって」


「ああ。おうちのあった所いくの?」


「ええ。無くなっちゃったおうち、まだ見て無いですから……。なんだかまだ実感無いです……」


 思い出すとちょっと悲しくなる。


「ねえ。わたしも一緒に行っちゃだめ?」


「え?」


「好奇心、とかじゃ無いのよ。わたしも昔あの辺りにちょっと住んでたことがあってさ。気になってるんだ……」


 え? ご近所さんだったの?


「もちろんいいけど、もう少し付き合ってくれるの?」


「うん。流石にご両親との晩御飯の時間には遠慮するから安心して」


「あは。なんだったら一緒に食べるー? わたしは大歓迎だよ」


 教会敷地突っ切ると早いかな。お墓の側も通るけどまあいいよね。


 ☆


 ……っていうかこの子幾つなのよ。


 そうなんだよねー。ほんと年下にしか見えないんだけどなんとなく悪い気がして聞くに聞けないんだよねー。


 ……ねぇねぇリーザちゃんって幾つなの? って聞けばいいじゃん。


 あはは。わるいよー、


「そいえばリーザ先輩ってどこの学校だったんですか? 中央の侍女科ではお見掛けしなかったですけど」


 ……あ、上手いな。そこから聞くか。


 そでしょ?


「わたし……、中学行って無いから」


 え?


「今の職場は完全コネ。っていうか両親共に勤めててわたしあの公主館で育ったんだ」


 えー? びっくり。


「三年前の騒乱、覚えてる? 先代がお亡くなりにったときの。あれで両親巻き込まれちゃってさ……」


 先代公主さまのお亡くなりになった原因の、あのテロ、か……。


「孤児院に行く筈のとこ、今の公主様に救って貰って。小学校出てすぐ働きはじめたの」


 ああ、そんな過去が……、ごめんね好奇心で聞いちゃって……。


「ああ、そんな顔しないで。わたし、今は幸せだから」


 強いな。リーザちゃん。あ、でもそしたら……。


「ってことでわたしはアリシアより年齢一個下でしたー。気になってたんでしょう?」


「え、じゃやっぱりリーザちゃんだぁ」


「あは。いいよ。そのかわりわたしもアリシアちゃんって呼ぶからねー」


 あは。なんだかんだでもう一つ仲良くなれた気がする。


「アリシアちゃんのおうちのあった側にさ、わたしのおばあちゃんも昔住んでてね。小学校上がる前まではわたしもそこで住んでたの」


 そっかぁ。


「おばあちゃんが亡くなって、そんで両親の職場の寮に住むことになったんだけど。やっぱり、あんな事があったっていうの、気になってて」


 そう。ほんとどうなってるんだろう。近くまでいけるんだろうか? それも心配だ。

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