異世界転移。
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「じゃぁ、会いに行ってくる? レティーナ」
わたしがそう彼女の碧い瞳の奥を覗くように微笑むと。
「え? いいの?」
と、そうこちらを真剣な目でじっとみつめるレティーナ。
やっぱりだいぶんと精神的に不安定になってる、かな?
このままデートリンネのいう通り事を進めることが少し不安。
そうでなくともこの子の精神はここにきて疲弊している。それはその魂の中にずっと居たわたしが一番よくわかっている。
元々世界を救うだなんてそんな事、進んで出来る子じゃ無かった。
それなのに。
ずいぶんといろいろ背負わせちゃったな。そう思うんだ。
カイヤやティアが今のレティーナにとって心の拠り所になれるなら、近くに居させてあげたいってそうは思う。
まあ彼らにとってもここは異世界。絶対無事に戻れるって保証をしてあげることはできないからあえて連れては来なかったんだけども。
あ。
レティーナが今少しまた不安そうな顔になった。
戻るのはいいけどまたここに来れるのかが心配になった、のかな? もしかしたら。
それなら。
「それとも、わたしが彼らをここに連れてきてあげようか?」
「え? それって」
「今あの世界とこの世界を繋いでいるのはわたし。一応わたしの半身を向こうに残してきているからいざとなったら行き来は可能なんだけど。まあカイヤたちに聞いてみないとって問題はあるけどね?」
「ここにちゃんと帰ってきてくれるの?」
「うん。大丈夫よレティーナ。わたしにまかせて」
わたしがそう断言した瞬間。
ふわっと。
レティーナの顔が安心するように微笑んだ。
次元の位相、世界の位相は常に変わってしまう。
別の世界同士を任意に行き来する方法は確か存在しない、そう聞いたこともあったっけ。
でも、
今ここにわたしアリシアっていう例外がある。
自分の魂を繋げたまま分離する。
以前サーラがカッサンドラとやったように、わたしが以前世界を転移した時にちゃんと元の世界に帰れたように。
わたしの記憶にはそうしたノウハウもちゃんと残ってるんだけどね?
だからこそデートリンネはわたしとレティーナに白羽の矢を立てたのだろう。
こんなふうに遠く離れた異世界で尚且つ自身の魂を繋げていられる存在なんて、他にはきっと存在しないのだろうから。
きっとこれさえもが。この力こそが。
瑠璃が世界を形成した時に。
デートリンネが瑠璃の魂に埋め込んだラギレスのカケラのおかげなのだろう。
神のカケラを埋め込まれた瑠璃。
そしてそのカケラを継承したわたし。
そうだからこそ、だ。
わたしは笑顔でレティーナに「まかせて」って微笑んで。
そうしてそのまままた次元を、世界を跳んだ。
わたしの心の一部はレティーナにもちゃんと繋がっている。
そして。
半身でもあるレヴィアとしてあの世界にも存在している。
わたしは再び次元の通路を通りぬけ。
久々に。
元の世界、瑠璃が生み出したわたしたちの世界に帰ったのだった。




