寂しいよ。
あたしたちがたどり着いた先は最初のマシンメアの世界から1000年は時間軸が未来に飛んだ、可能性の行き着く先の世界だった。
デートリンネによれば拡散した遥香ラギレスの魂のカケラたちは、いろんな世界を巡って再びこのマシンメアの時空に集まってきている、と。
そんな魂の収束する時間軸がここ、1000年以上後の世界だと言うのだ。
「ラギレスがラギレスとして生きた時代?」
……いいえ。その時間軸よりもさらに先の未来になりますね。
白い道を抜けたどり着いた先は、お馴染みのケンタウリ遺跡の場所。
石のピラミッドのその頂上だった。
あたしたちはそのまま周囲を確認しながら街へと急ぎ。
そして。
「ああ、なんだかあんまり変わってないね」
「1000年経っても結局街の維持はギアが行なっていると言うことだろうな」
「そうなの?」
「ああ。ここにある白いレンガは皆ギア・オプスが生み出したものだ。自動修復がまだ生きている。上にのっかっている木造の建物たちはどうやら人の手で建てられているようだがな」
やってきた街、アンダーノウスの街並みは基本的には過去の街とそう変わりは無かった。
どこにでもある白いレンガ。
それが道路にも建物にも使われて。
全体的に白い街並みを維持していた。
「ふむ。金も以前の貨幣がまだ流通しているようだ」
そう言うシルヴァ。
彼にうながされるまま旅館に着いたあたしたち。
シルヴァは一応ふた部屋とってくれたから、そこでちょっと休むことにした。
「ふう。ほんとにこれで解決するのかな」
「とにかくラギレスのカケラを宿している人を探すところから始めないとね」
お部屋に入ったところであたしから分離したアリシア。
っていうかアリシアったらこんなこともできたの? って感じだけど。
「わたしは今は魂だけの存在になっているから。元の人間の体はとっくに使い物にならなくなってたからね? って言うかこれもともとサーラが考えたんだよ覚えてない?」
ってそんなことを言うアリシア。
マナで体を構成し、そこにマトリクスのがわを被せる。魂をその中に入れればはい出来上がり。
そんな人智を超えたような存在、流石の神様の系譜だと感心してたのに。
「もともとサーラが自分の中にいたカッサンドラに体を分け与えるために考案したんだよ。まああの世界は瑠璃のインナースペース、魂から創造された宇宙だったしね。言うなればあなたはもともとのあの世界の創造神みたいなものだったんだよ?」
なんて言う。
はあ。
あたしは今はレティーナで、サーラの記憶は夢で見た分しかないしそんな神様だなんて実感はカケラもないんだけどとちょっと反発したくなるけど。
それに。
アリシアとかラギレスとか見てると命ってなんだろうって、ちょっと思ったりもするんだよね。
あたしはあたしのこの人生、今は幸せだと思ってるし早く元の世界に帰りたいと思うけど。
うん。
いつでも帰っていいよって言われたから早く片付けて帰ろうって思いで考えないようにしてたけど。
いいかげん、ちょっとホームシック。
カイヤやティアがあたしのこと心配してるんじゃないかって思うともう。
ちょっとふにゃぁ。
いてもたってもいられなくなる。
ああ、カイヤ、会いたいよ。
ティア、寂しいよ。
もう、なんだか泣きそうだ。
「じゃぁ、会いに行ってくる? レティーナ」
アリシアがその碧い瞳を覗かせて、あたしにそう囁いた。




