パラレルな世界。
「ふーん。じゃぁ何? それじゃまるでボクがいけないみたいじゃない?」
え?
シルヴァからのおおよその説明があった後、あたしも二、三付け足した。
そうした説明の後彼女セリーヌは唐突にそう結論を出したのだ。
「だって、因果が変わった原因があの事故なんでしょう? ボクを助けるために現れたラギレス。結果本来のラギレスが辿るはずだった過去が変わっちゃった。そういうはなしでしょ?」
そうなるの?
——んー、そうなるの、かなぁ?
「だがそれだけが原因では無いだろう? そもそもラギレスは未来のお前だと言っていた。であればあそこでお前は死ぬべきじゃなかったというのは本来の歴史通りなのだろ?」
「うーん。それはそうみたいなんだけど。でもね。なんでか知らないけどボクがあそこで助かった後、過去のアリシア・ローレンが目覚めなくてってもう一度ラギレスがやってきたの。それでボク、アリシアの中に還ったんだ。そうして佐藤悠希の人生を経てもう一度ここに帰ってきたって事みたいなんだけど……」
☆☆☆
ねえアリシア。あたしちょっと疑問があるんだけど。
——なに? レティーナ。
ラギレスは何かあって過去を変えたんだよね?
——うん。そうみたいだね。
だったら未来が変わっちゃったってこと?
——うーん、それはどうかなぁ?
え? どういうこと?
——先日のケンタアウリの遺跡でのマリンの言葉、「遥香・ラギレスの最愛の人、ノワール・エレ・キシュガルド。この世界に散った彼女の思念を取り戻すため、時空を超えて旅をしている彼」っていうの覚えてる?
ああ、そっか。
——未来が変わっちゃったんだったらそもそもノワールさんはわざわざ時空を超えて来ないよね。
うん。でも、じゃぁ?
——平行世界、パラレルワールド。このあまたの世界にはそんなパラレルな世界がいっぱいあるのはもう間違いないんだけど、っていうことは過去を変えてもそうしたパラレル世界が増えるだけだと思うよ。普通はね。
うん。わかる。
地球で日本で瑠璃だった頃、あたしは沢山の本を読み漁ってた。パラレル世界っていうのはそうした小説にはけっこうありふれていて。
ウエブ小説もいっぱい読んだ。
アリシアの、亜里沙ちゃんの書いたおはなし、マシン=マスターっていうおはなしもその時に読んだのだ。うん、だんだん思い出してきた。忘れてただけ? かも。
確かラギ・レイズって女の子が主人公で、マザーっていう管理AIと戦うおはなし、だったっけ?
——あは。思い出してくれたんだ。じゃぁさ、この世界のお姫様、セリーヌ姫の正式名称はわかる?
うん。聞いたよね。確か……え?
うそ。
セリーヌ・ラギ・レイズ、だったよ、ね。
——うん。だよね。
ここは、マシンメア=ハーツの世界だって言ってた、よね?
——うん。作者、アリシア・ローレンの書いた小説、マシンメア=ハーツの世界、だって。
えーーーーー? じゃぁ?
——パラレル世界なのかもね。この世界そのものがわたしたちが居た地球の日本の。それも、アリシア・ローレンさんがパラレルのわたしなのかもだし。
でもでも。
パラレルな世界が許されるのならなんでラギレスは居なくなっちゃったのさー? それってそもそもおかしくない?
——そこなんだよね。一番よくわからないのが。




