セリーヌ。
「ここだ」
まだ通路は続いていたけどどうやら目的地? には着いたようで。
シルヴァがここだと言って階段を上がるのを、ただただ黙ってついていくあたしとアジャンさん。
天井に手をかけがちゃんと開けて持ち上げるシルヴァ。重くないの?
「これは半自動で開くようになっているからな。重さはそれほど感じないのさ」
あたしの疑問に答えるようにそう呟きながら階段を上り切ると、そこは温室? 芳しいお花のいい匂いが充満していた。
「ふふ。いい場所だろう?」
そうまたもドヤ顔のシルヴァ。別にあんたのじゃないでしょう? とツッコミたかったけどやめて。
周囲を見渡すと、薔薇、ばら、バラ。色とりどりのバラが咲き誇っていた。
「ここは……薔薇園?」
綺麗に手入れされた薔薇。ガラス張りの天井は高く、ここがとても広い温室に作られた薔薇の園であることが見て取れる。
「先まで行くと王宮最深部まで繋がっているんだけどな。流石に王様の目の前に出るわけにもいかないだろ? この辺がちょうどいいのさ」
「じゃぁ、ここから王女様の部屋まで歩いて行くってこと?」
それも見咎められそうな気がするんだけど。
「ああ、その必要はないよ」
え?
と、そんなシルヴァの言葉の意味がわからず聞き返そうとした時だった。
「誰?」
と、背後から声をかけられ振り向くと、そこにはふわふわな金色の髪を靡かせた美少女が佇んでこちらを見ていた。
☆☆☆☆☆
まんまるなかわいいらしい目をめいいっぱい見開いて。
いかにもお姫様然とした白のワンピース姿の美少女は、コテンと首を傾げ。
「どういうこと? シルヴァ。この方は?」
と、そう聞いてきた。って、この方ってどうやらあたしのこと? あれ? アジャンさんは?
そう思ってたらちょうど垣根の死角になっていたアジャンさんが飛び出してきて、「悠希!」と叫んだ。
「はう。拓真……、久しぶり、だね」
顔を真っ赤にしてそういう彼女。
——この反応。やっぱり二人は好き同士なのかな。
もう、アリシアったら。そういうのはあとあと。いきなりそんなの悪いよ?
「えっと、初めまして、あたしはレティーナ。あなたはセリーヌ姫さま?」
「え、と。そうです。ボクはセリーヌ・ラギ・レイズ。一応この国の姫ってことになって、ますけど……」
——はうう。ボクっ子?
もう、中身は悠希くんなんだからしょうがないよ?
「あたしは実は別の世界からきたの。ラギレスを助けてって頼まれて……」
「え? どういうことです!?」
「ああ、セリーヌ。どうやらフニウとしてやってきた女神のラギレスな、あれが今大変なことになっているらしいんだ。この嬢ちゃんはそれをなんとかするために別の世界からやってきた、ってわけ。わかる?」
「もう、シルヴァったらそんな説明じゃわけわかんないよ。もっとわかるように説明して!」
そうぷんとむくれて見せるセリーヌ。はう。もと男の子だとは思えないくらいかわいいよ。びっくりだ。




