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遥か未来の可能性の世界。

 あたしは再び白い空間を移動していた。


 あの、デートリンネのいた白い世界を。


 ただあの時と少し違うのは、あたしの左腕にはシルヴァガント、右手にはアリシアのドラゴンオプスニル。

 そして額には銀色に輝くサークレット。その中央にはあたしのレイスで眠っていた魔ギア・キャッツアイが嵌る。

 そんなある意味戦闘モードになっていた事かな。


「ふっ。まるでそのままラギレスのようだな。レティーナ」

「ようだなって何よ」

「お前のそのキャッツアイ、ラギレスの魔・ギアとそっくりだよ。もっともアレのは左目に埋まってたけどな」

「はう、それって痛くないの?」

「まあ、痛くはないんだろうよ。そもそも俺たち魔ギアは通常の次元とは別の次元に存在するから」

「ふーん。便利なのね。っていうかシルヴァはなんでそんな姿になってもしゃべれるのよ」

「まあ俺は特別だから? っていうかそれも多分ラギレスのおかげなんだろうな。普通、魔・ギアにも意思はあるけれどそれはもっと漠然とした意識であって、俺のようなはっきりした自我は持ってないものなんだ」

「そうなの?」

「ナノマシンであるギアの意識はほぼ全体意識の端末程度。魔・ギアになるとある程度個としての意識が芽生え、上級管理ギアレベルでやっと自我を持つ、それが普通なんだけどな」

「シルヴァは上級管理ギアなの?」

「意識的にはそのレベル。実際は管理なんぞしとらんからな」

「じゃぁなんで?」

「俺が生まれたのはセリーヌがこの世界に帰ってきた時だっていうのは話したよな? どういうわけか管理ギアのふりをしていたラギレスにセリーヌ用に調整された時、彼女の滞在していた世界の記憶からレイスのかけらを掘り起こされた? みたいな? そんな感じでさ」


「だからあなたにはちゃんとレイスが存在するのね」

「アリシア!」

「ああ、あんたにはそう見えるか。それなら嬉しいよ」

「まあわたしも今はあなた(シルヴァ)と同じような状態だしね。レティーナのレイスの中に間借りしてる同士、仲良くしましょ」

「はは。違いない。よろしくなアリシア」



 ☆☆☆☆☆


 あの時。

 アジャンさんはシルヴァとマリンのやりとりをただ見ているだけだった。

 口を出すこともできないことに、苛立ちみたいのを感じている様子も見えて。

 あたしもこの二人の会話には入っていけなかったから、似たようなものかもだけど。



「あなた、似てますね。先日ここを訪れたノワールさんに」


「俺が? 誰に?」


「遥香・ラギレスの最愛の人、ノワール・エレ・キシュガルド。この世界に散った彼女の思念を取り戻すため、時空を超えて旅をしている彼に」


 あ、それ、もしかして。

 ——うん。

 デートリンネから頼まれた主様、ラギレスの。

 ——彼女を助ける為にはもしかしたらこの時空をも越えないといけないのかもしれないね。

 だとしたら。


 もしかしたらそのノワールさんを追いかける必要がありそう?


「ごめんなさいマリンさんっ。そのノワールさんは結局今どこに?」


「ああ、彼は——ここより遥か未来の可能性の世界に向けて旅立ちました」

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