狩。
ゴーっと響く音、音、音。
クラン『竜血の炎』のメンバーは今日も魔物を狩に森に入っていた。
基本、大勢で追い詰め狩る。
個人の力量よりもチームワークを重視した戦い方だった。
今日の目標は、黒羊。ブラックシープ。
群れで行動するこの魔物、全てを狩るのではなくそのうちのはぐれシープを二、三頭狩る。
一頭あたりの身体の大きさは地球の牛くらい? 割と大人しい魔物とはいえ大群で向かってこられては人なんかひとたまりもない。
だから。
移動する群れを見つけたら追い立ててはぐれたものを狩る。
魔物はその肉や素材を求めて狩る。魔獣はその上、魔石を求めて狩る。
この世界の魔物は地球にいた動物の延長みたいなもの? 生物が魔力によって変質した、そんな生き物で。
魔獣はそのうち身体の中に魔石を持ったもの、そんな区分。
あたしの元世界と違うのは、この世界の魔獣はまだ肉体を保っているらしいってとこ。
魔獣のお肉も立派な食料として流通しているって話だった。
「ほら、レティーナも食っとけ。リザードドラゴンの尻尾肉の燻製だ。うまいぞ」
そうアジャンさんに渡された干し肉を齧る。
うん。美味しい。
「追い立てて役はタクマ隊、例の場所に追い込んだら後ろニ頭の鼻先を変える役目をドワンとシルヴァ。あたしは全体を注視しつつカバーする。いいか?」
「あたしは?」
そう、あたしにも何かさせて欲しいんだけど。
「レティーナはあたしと共に。万が一の場合にはそこにフォローに入る」
あたしはうんと頷いて。アジャンさんと共に竜馬に乗る。
ふふ。この馬みたいな竜、そのまま竜馬っていうらしい。
アジャンさん達は特に魔法とか使うわけでもない。それぞれ特殊なスキルを持ってる感じなんだけどあまり大っぴらには出さないのかな?
「魔術師は国のお抱えなんだ。だからここにはいない。それだけのことさ」
と、意味ありげにそういうアジャンさん。
じゃぁあたしもあんまり魔法を使ったりしない方がいいの?
まあでもね。
使わなきゃな時には躊躇しないけどね。
ピー!
作戦開始の口笛を吹くアジャン。
目標に向かって大きな音を立てて走るタクマさんほか。
先に例の場所とやらに向かったシルヴァさん達にも聞こえただろうか。
想定通り逃げ惑うブラックシープ。彼らは逃げ足だけは早い。大勢で固まってるし個々の戦闘力は高いからそんなに焦って逃げなくても大丈夫なはずなのにね。
——どうする? わたし力貸そうか?
うん。まだいいよ。でも、ありがとうアリシア。あなたのおかげでなんとかなりそう。
この世界でどうしようかなって色々迷ってたけど、アリシアが居てくれたら百人力だ。そう思って。




