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黒焔の帝は存命中  作者: ピッコロん
一章 唯一の生き残り
5/13

5 ゴーストとの戦闘

オリントラはおろかな自分に後悔する。最初からこれが目的だったのか。こいつら俺たちの身ぐるみを全部はがす気だったんだ。と。


オリントラはとっさのジャンプでゴーストたちをまたぎ、囲まれている状況から抜ける。

と同時にマルクの方を見た。もう捕まっていじめられていると思いそうなところだが、さすがはエルフ、身体能力は高く、マルクの場合逃げ腰だけは速い。それを戦闘でも使えたらな。とオリントラは惜しく思う。


そうこうよそ見しているうちにオリントラのほうに三人のゴーストが向かってきていた。オリントラの方が強敵と判断したのかマルクは一人が対応していた。


三人それぞれナイフを持ちオリントラに向かってきた。


「お前ら、失敗するんじゃないよ。こいつらは冒険者だ。きっととりわけランクが高い。多分ギルド内トップ3レベルだろう。相当な額を持ち合わせているのに違いない。」


オリントラはナイフを持つ手を取り、華麗に流して攻撃をよけていった。

それは三方から一気に来るので一瞬で敵を受け流す神業だった。


オリントラは自分の素性がばれていることに驚いた。そんなことまで最初から分かっていたのか?これは予想以上な計画的犯行でないかと。


受け流した敵は体制を崩し転ぶか壁に激突するかだった。足がないのに転ぶのか。とちょっと不思議に思うオリントラ。

しかしそんなことを考えている暇はない。部下のゴーストたちはすぐに体制を立て直してまた向かってくる。

オリントラはなにか武器を持ってこなかったことを後悔した。

武器を持っていったら怪しまれると躊躇したのだ。自衛のためにやはり武器は必要だった。ナイフ一丁でもあれば奴らの息の根を止めることも出来るはずなのに。と


正面から向かってきた敵をまたも受け流し、相手がこのレベルなら武器も奪えるかな、と思ってナイフに手を伸ばした矢先、後ろからナイフが突き出された。

間一髪だった。本能で頭がわきへよけたのだ。

オリントラは驚いて後ろを振り返る。ゴーストが一人接近していた。


「なるほど、気配がほぼゼロに近いわけか。これは厄介だな。」


オリントラを刺し損ねたゴーストはバランスを崩し体制が崩れる。そこにオリントラが腹に一発けりを入れた。


ゴーストが地面に倒れ、苦しそうに息をする。


「ひさしぶりだぜ、魔獣以外の動物との戦闘は。いいね、やっぱ燃えてくるぜ。でも厄介な本能だ。くそ。」


オリントラは倒れた一人のゴーストからナイフを奪おうとする。しかしそうはさせないと二人の仲間が一斉に向かってきた。


「くっそ、一人やられたか。まあいい。絶対に仕留めるんだ、いいな! クソな冒険者に負けるんじゃないよ!」


ボスの女ゴーストの口調が激しくなった。


オリントラは二人のゴーストの相手をすることに集中していたが耳の奥にボスの叫び声がひびいてきたのを無視することはできなかった。


「なんだお前、冒険者になにか恨みでもあんのか?」


オリントラはゴーストの相手をしながら問う。


「当り前さ。冒険者ってのは自分の利益しか考えないゴミのあつまりなんだよ!わかるか?

依頼されてきたものしかこなさない。金がないと動かない。

もうみんな気付きはじめているだろう?この町に潜む邪悪なものを。

この町はいつ何がおきてもおかしくないんだよ。私たちみんな恐怖を感じているんだ。

そんななか冒険者はなにをやっているんだ?どうせ簡単で金になる仕事を探してうろうろしているだけなんだろう。

この町を守るとかなんだとか言っている割には自分のためにしか動かず、私たちみたいな貧しくて力がない人の求める救いなんて眼中にないんだよ。」


その口調は早口だったが決して詰まることなくすらすらと出てきていた。そんな様子からどれほど冒険者を嫌っているということがかった。


「私はそんな冒険者が嫌いだ。憎い。そしていつか私はギルドをぶっ壊してやるのさ。」



オリントラはゴーストの攻撃をよけつつ少しづつダメージを与え続けていた。ゴーストお得意の不意打ちも気を常に張っておけば案外よけられるものだった。


そんな攻防もついに終わりオリントラは二人のゴーストを蹴りで沈めナイフを奪い取った。


「さ、残すはお前だけだ。どうするんだ?死ぬのか?さっさと逃げ出すのか?はっきりしろ。」


オリントラは女のゴーストにナイフを向け、強気な姿勢をとる。


女ゴーストは何も言わなかった。


「この世界は、強いものが生き残るんだ。弱肉強食、自然の摂理だ。だから冒険者もじつは生きるのに必死だったりするんだぜ?安定した生活を生涯築ける保障なんてない。よりよい暮らしを求めて自分のためにしか動かなくて他人のことは眼中にないんだ。でもな、そんな冒険者の中にもいるんだよ。ほかのやつのために自分を犠牲にする奴が。この町のみんなのために町に潜む邪悪なものを退治しようとするやつがよ。」


オリントラはジョニーの姿を思い返す。たしかこの町を守りたいとかいっていたな。まったく大層な意義を持った男だ、と思った。


「冒険者の中にいるだと?は、くだらないうそをつくね、あんた。私が知っている冒険者なんてみんな傲慢なやつばっかだよ。そんな話を信じるわけない。」


「ああ、そう。別に信じる信じないはどうでもいいぜ。こっちはお前がしっぽ巻いて逃げ出すのか、俺に殺されるのかはっきりしてほしいだけだ。さっさとしろ。」


オリントラは手にもったナイフを女ゴーストに向けていることを強調する。


「なんだあんた、自分が有利な立場に立ったとでも思ってるのかい?これだから最近の若者は、早とちりがすぎるね。」


女ゴーストはにやりと笑う。


「その不気味な笑みをやめろ。」


さらにオリントラは圧をかける。女ゴーストの発言を単なるはったりでしかないとふんだのだ。


「そんな言葉遣いをしていいのかい?何もわかっていないようだね。お前はいま窮地に立たされているのだよ。」


そこでオリントラは気づく。女の視線がオリントラの後ろへむけていることを。オリントラは慌てて後ろを向いた。




「こいつがどうなってもいいのか!?」


そこには首を固められナイフを突きつけられるマルクの姿があった。


「なんだと?」


オリントラは、マルクの存在をすっかり忘れていたことに気付く。ボスとの会話でマルクのことに気が向いていなかったのだ。すまない、マルク!と心の中で誤っておいた。

これもお前の作戦のうちなのか?とオリントラは女ゴーストをにらみつけた。

マルクはピクリとも動いていなかったが単に気絶しているだけらしい。目立った傷はないんでオリントラは安心する。


「でもそれくらいじゃ俺はあいつを傷一つ、つけさせることなく助けることぐらい容易だ。そんなんで有利になったとか思うなよ。」


ゴーストひとり程度の相手ならマルクが人質に取られても何も問題なかった。


「そうかい、でももしそのゴーストが4人だったらどうしようか?」


と女ゴーストが言ったとたんオリントラが気絶させたゴーストたちが地面から立ち上がり始めたのだ。


「ゴーストってもんはあんたが思うよりずっとタフなんでね。地にはいつくばっている間にだいぶ体力も回復したはずだよ。」


驚くオリントラの顔を見て女ゴーストがさらにゆかいそうな表情になった。


「気絶した真似か。でも俺が本気出せばまだお前らくらいなら問題ないと思うぜ?」


状況が悪化しても強気に攻めるオリントラ。これははったりではない。事実部下のゴースト4人の腕前程度なら圧倒的にオリントラの方が何枚も上手だ。


しかし女ゴーストはそれを聞いても平然とした顔で

「じゃあ、さらに私たちが上をとれるとしたら?」

といった。


その途端ボスと部下たちが一斉に宙に浮かびだす。もちろんマルクも連れられて。

奴らはゴーストだ。もちろん自由自在に空も飛べるはずだろう。

空を飛ぶということにくわえて人質も空に連れていかれるというなんとも卑怯な手だった。


「は?それはずるくないか。見ての通り人間は空を飛べないんだぜ?」


空に上昇するゴーストたちを見ながらオリントラは腕を広げはばたく真似をする。それを見たゴーストたちはよっぽど愉快だったのかゲラゲラとわらいだした。


「ははは!この世界では強いものが生き残るんだってねぇ?あれれ、どうした?そうやってお前はいつまでも地を這って生きていけばいいさ!冒険者のくせになさけないね!」



「ああ、そうだ。人間ってものは無様だよな。小さくて力も弱くて、空も飛べなくて…。かわいそうな生き物だな!でも俺は違う。」


オリントラもにやりと笑った。その途端オリントラからたくさんの魔力が吹き荒れる嵐のようにあふれ出た。ゴーストたちはその魔力に思わず顔を伏せる。


「強いものが生き残るってことを教えてやるよ!?」


突如オリントラの足が地から離れる。そしてまっすぐ爆速で上へ上へとゴーストたちのもとへと加速した。


「ば、ばかな!なぜ空を飛べる!?お前は人間だぞ!?」


5人のゴーストたちは驚き慌てふためいた。みんな顔色が真っ青だった。


オリントラはあっという間に5人のゴーストたちの前まで来る。


「そうだ、俺はただの人間だ。覚えて置け。でも、空を飛べない人間がいないとは誰も言ってねえよな!?」


そういうとオリントラはいつの間にか鉤づめに変化した両腕で周りの部下のゴーストたちを一瞬で薙ぎ払う。ゴーストたちはなすすべがない。その体に一撃が加わった瞬間「ぎゃあ!」という断末魔を残していって4人全員そこから消滅した。


そして放たれるマルクをキャッチし、オリントラは肩で抱えた。


「な、なんなんだ貴様は!?よくも私たちの部下を!許さない!死ね!」


女ゴーストは恐ろしい形相をしてどこからか出したのか片手に刃渡り30cmほどのナイフを持ち、ものすごいスピードでオリントラに向かってきた。


「ウォー―――!!」


もうがむしゃらに向かってくる女ゴースト。


オリントラ後ろにまっすぐ腕を引いた。殴り返す準備だ。にやりとほほ笑んだ。



にやりとしたオリントラを見て女ゴーストが隙を見せる。

それを見たオリントラは内心もらったと思っていた。

そしてその鍵爪を女ゴーストに向かって振り出す。


しかしオリントラの鍵づめは女ゴーストに当たらなかった。あれ?


「シャイニズム!!」

どこからともなく声が聞こえた。


そして直後まばゆい黄色い光線がオリントラの横すれすれを通って女ゴーストに直撃していたのだ。

瞬間ものすごい衝撃波があたりに響く。


オリントラはそのまぶしさゆえに目をくらます。


光線が消え、目を開いたときにはそこには女ゴーストの姿はどこにもなかった。


その女ゴーストは有無言わずこの世界から消滅したようだった。




「なんだ?何が起こった」


オリントラはマルクを地面におろす。手には何の感触も残っていない。


と落ち着く暇もなく、そこへ


「あなたたち大丈夫!?ケガはない?」


と後ろから声がかかる。


オリントラは反射的に鉤爪を背中に隠してゆっくりと振り返った。



そこにはもさもさ耳に、もさもさのしっぽが生えた巫女服姿の妖狐が立っていたのだった。


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