勇者よ、味方となれば世界の半分をやろう!「よかろう。では担保として魔王城を貰おうか」「ふぁっっ!?!?」
元ネタはドラ○エ1のあの人。
「な、何を言っているのだお前は……?」
「担保は?」
「た、たんぽ……?」
なにそれ? たん……たんぽぽ? 美味しいの?
勇者は、この脳内お花畑が、と言ってため息を吐く。
「俺と契約をするのだろう? 世界の半分を譲渡する……その約束のための保証が欲しいと言っているのだ、魔王よ」
……あ、なーんだそういうことか。
魔王は着崩れたローブを整える。
「ほ、保証! ほ、ほほう。勇者よ。なかなか思い切ったことを。この魔王が信用できないと申すか?」
「できない。全くできない。完全無欠、徹頭徹尾、信用できない」
さ、三回も言う……!? 最後に至っては四字熟語二回も修飾してるし。
あれ、完全無欠の使い方ってそれで合ってる?
魔王は混乱する。
「わ、わかった……ほ、保証があれば余を信頼するのだな」
「もちろんだ。約束しよう」
「ほ、本当に味方になるのだな?」
「重ねて約束しよう」
よっしゃ!! 言質とったからな! もう引き返せないからな!
勇者お前、この魔王からの問いに「はい」って答えたんだからなぁ!
「では誓おう勇者よ、この魔王の名にかけて! 世界の半分! 闇のせか────」
「むっ、そういうのはいい」
「……はい?」
勇者はペンと書類を道具袋から取り出す。
「これにサインをしろ」
「……えっ」
「貴様の言葉など、なんの意味ももたない。必要なのは証拠。物理的な証明だ」
「だ、だが余は魔王……」
「だからどうした。早く契約書にサインをしろ」
これもうどっちが世界の半分をあげるんだっけ……?
魔王は傍若無人な勇者に戸惑いを覚えながら、段差を降りて勇者に近づく。
「はっ!? ふ、ふあっは! ははは!!」
そうか、全てわかったぞ!!
「なにがおかしい?」
「たわけめ! 考えが読めたぞ勇者!」
魔王は腰から剣を引き抜く。
「余を謀るつもりだったようだが、そうはいかん。聖剣の射程圏内に余をおびき寄せようとするとはな! ふふ、だがそうはいかん! 今すぐに余が貴様を叩き斬って────」
「あぁ、こんなものが不安なのか」
勇者は聖剣を鞘ごと魔王の方へ放り投げる。
「そら、契約料だ。受け取るがいい」
えぇぇぇぇ……?
「ちょ、おま……聖剣だぞ!? 余を唯一倒せる剣!」
「どうでもいい。世界の半分が紙一枚で手に入るなら鉄棒も同然だ」
えぇぇぇぇ!?!?!?
ちょ……っ、余、困惑しっぱなしなのだが!?
「俺にとってはペンの方が神器も同然だ。見ろ魔王。これこそ人間の産んだ至高の宝具だ」
いや、ペン凄いぞとか自慢されても!?
なんなのこいつ!? 聖剣をゴミとか言って放り投げるわ、ペンを神器扱いして崇め始めるわ! もう余、ついていけないよ!? 文化が違いすぎる!
「う、うん……わかったから余、サインするね」
ちゃっかりと聖剣を回収する魔王。
ふ、ふふふ……聖剣さえなければ勇者など。担保がどうだか知らんが、こいつを洗脳した後に世界の半分と名のついた廃墟をくれてやるわ。
「そして貴様は永遠に廃墟で狂い、世界は余と魔族のものに、ぐふふ」
「おい、何をぶつぶつ言っている?」
「い、いや、なんでも!? ……だが貴様。なぜそうまでして世界の半分を欲しがる? 余に味方をするということは人間どもを裏切るということだぞ?」
勇者は無表情の顔をこちらへと向ける。
「……人間どもに愛想が尽きた」
「ほう……そうか。勇者よ、人間どもの愚かさにようやく気がついたか」
「あぁ。お前は話がわかるな」
ふふ、今までそういう輩に対して契約を迫ったのよ。そして貴様も! 余の闇の契約の被害者の一人となる! さぁ廃人への第一歩を踏み出すがいい!
「俺はこの世の全てが憎い」
「ふふふ」
「まず世界の半分を手に入れたら復讐をする。俺を幼少の頃から運命を縛り付けてきた王国にだ」
なるほど。要するにストレスが溜まっていたというわけか。まぁ周りから期待をかけられ過ぎたというパターンかな。
「お前は魔王を倒す勇者となるのだと非論理的な考えを押しつけ、物心ついた瞬間から反吐を吐くような訓練を国から強要され」
ん……?
「息を抜くことも恋をすることも一切許されず、初恋の人とは『おまえは勇者だ。魔王討伐以外のことなど考えなくてもいい』と無理やり父と国家権力の力で無理やり別れさせられ」
んん……?
「王国は勇者をたぶらかした淫乱女と俺の初恋の人を裁判にかけ、死刑にし晒し首にした。十代になり人外の化け物と生死をかけた戦いを国に強要させられ、俺は何度も生死の境を彷徨った」
────そんな王国に温情など一切ない。そう勇者は言い切った。
「うん……」
魔王はただひたすらに頷いた。
勇者……重ぉっい……過去重いよ……!
なんか……もうこの勇者めっちゃ味方にしたくなってきたじゃん……話聞いてると、すげぇかわいそうなやつだよ。
進化の秘宝とか使って地獄の帝王とか、余を超える復讐の化け物とかになっても納得だわ。
「旅に出て、勇者となっても。すごいすごいの後に『選ばれし勇者だからこれくらい当然』と言われ、『選ばれしものとか羨ましい。どうせ姫を助けてイチャイチャするんでしょ』と嫉妬される。俺の生死を何度も彷徨うくらいの……体験した不本意な修行のことも知らずに」
「つ、辛いよね……」
「負けたら勇者クソ使えないと罵られる。いかに勇気を振り絞り、自分より強い魔物を倒しても、勇者だから当然とばかり。生き返る。また死ぬ。地獄のような日々が続いても王は労いもせず……」
『おぉどうしてしまったのだ勇者よ、お前は魔王を倒すのだろう! さぁ今一度立ち上がって旅に出るのだ!』
「────もう俺は、勇者をやめるぞ。魔王」
「す、清々しい顔で言うなお前……」
まるで憑物がとれたような顔だ……。
「逃げてもいい。お前の言う契約はまさに俺にとって救いの手だった……」
もうやめてくれぇ!! 騙そうとする気が一切なくなってしまう!! すげぇ罪悪感芽生えてくるじゃんんんっ!!
「そ、それで? 担保は何が欲しい? 前払い……に近いか。勇者よ、なにが望みだ?」
「そうだな……」
勇者は考え込んだ後、決めたと言う。
「魔王城をよこせ。これが世界の半分を譲渡する……その条件の保証だ」
──────!?
「い、いや。いやいやいや! なにを言ってくれてんのだ勇者よ!?」
「魔王……お前は世界の半分を俺にくれると言ったのだろう?」
「そ、それと、これとは別の話だ!」
「いいか、お前はこれから俺の力を使い。世界を完全に掌握できる。世界全てをだぞ? 本当に世界の半分を俺にポンとくれるのなら、こんな城の一つや二つ、くれてやってもいいだろう?」
「こんな城って、おまっ!? ここ魔王軍の最重要拠点なんだけど!? いっちばん豪華な城だよ!? 魔族の!」
し、しっかし……うん、まぁね。
世界の半分得られるんだし、城なんてまた後でも建てられるけどさ。
「交渉は決裂か……」
勇者はため息をついて俯く。
「くっ、この勇者め。バカにしおって! ほんと、話最後まで聞いちゃってマジでバカらしいわ、余! こうなれば貴様を倒し、世界を全て我がものにしてくれるわ!」
魔王は剣を構えると勇者は盲点だったと目を丸くする。
「────それはいい案だ」
「な、なにがだ!?」
「貴様を倒し、俺が魔王となる。そして世界を支配することだ」
──────!?!?!?!?
この勇者、もう闇に堕ちてやがる!!
「ふ、はは! バカめ! 貴様にもう聖剣はない! どうやって余を倒すつもりだ! はははっはは!!」
「……」
「愚かな勇者め! 少しかわいそうだが死んでもら────」
死んだらせめて奴隷にしてあげよう。
そんな僅かな温情と共に、剣を振り下ろそうとした瞬間、勇者の姿が消え、
「なっ、なにぃ!?」
「──────」
気づいた瞬間には余の懐に入りこまれていた。
「だ、だが、忘れたか、聖剣がなくては余を」
「新たなる魔王に聖剣は要らぬ」
「……へっ? ────かっ」
勇者の拳に黒い光が集まり、凝縮。
それを拳に乗せ、魔王のみぞおちに。
「ぁ、ぁぁぁぁっ────」
身体を拳に貫かれた魔王は黒い光と共にけたたましい音を立てて爆散。
「愚かな。交渉が決裂した場合、聖剣なしでも貴様を倒す方法は研究済みだった。聖剣でしか倒せないという思い込み────それが貴様を殺したのだ」
勇者の今まで無表情だった顔は邪悪に歪んでいたのであった……。
****
「新魔王様、バンザーイ!」
「魔王軍の勝利に、バンザーイ!」
「……気分はどうだ? 元魔王。世界の半分を得た感想は?」
新たな玉座へと座す新魔王……もとい元勇者は『せかいのはんぶん』と書かれた犬小屋に入った旧魔王に話しかける。
「……は、はい……新魔王さま……生き返らせてもらっただけでなく魔王軍に雇用してくださり、ありがとうございます……」
「……人を騙そうとするもんじゃないぞ」
「はい……」
ここまで読んでくださりありがとうございます!
いやぁー詐欺はあかんよね! 純粋な人騙すとか一番やっちゃダメなやつ!
よかったら感想やこれから出す作品などお気に入りして読んでやってください。では!