赤ちゃんは何処からくるの?
太郎君は気になるお年頃。今日もお母さんに疑問を投げかけます。
「ねぇねぇお母さん?」
「なあに?」
「赤ちゃんはどこからくるの?」
お母さんの持つ包丁の動きが止まります。タマネギがコロリと床に落ち、お母さんは固まってしまいました。
「ねぇねぇ、どこからくるの?」
「えっと……コウノトリが……」
「コウノトリが?」
「……こ、交尾して…………」
「こうび?」
──お母さんは失敗しました。
次の日も太郎君はお母さんに疑問を投げつけます。
「ねぇねぇお母さん?」
「なあに?」
「コウノトリがこうびすると赤ちゃんはどこからくるの?」
昨日の失敗で質問がややこしくなってしまいました。
「…………えっと……」
お母さんは包丁を持つ手を止めて必死に頭を悩ませました。
「神様がコウノトリに赤ちゃんを渡すんだよ?」
お母さんは神様に全てを押し付けました。バチ当たりも甚だしいですね。
「かみさまはどこから赤ちゃんをつれてくるのー?」
勿論大人に都合の良い神様の存在がが子どもに通用するわけがありません。太郎君の疑問は更に深まるばかりです。お母さんは固まってしまいました。
「ねぇねぇ、どこからくるの?」
「えっと……神様が……」
「かみさまが?」
「……こ、交尾して…………」
「こうび?」
──お母さんはまた失敗しました。
また次の日も太郎君はお母さんに疑問を投げつけていきます。
「ねぇねぇお母さん?」
「なあに?」
「コウノトリがこうびするとコウノトリの赤ちゃんはどこからくるの?」
「──!?」
昨日の失敗で更に質問がややこしくなってしまいました。
「…………えっと……」
お母さんは包丁を持つ手を止めて必死に頭を悩ませました。もうこれ以上の失敗は許されません。教育的にも宜しくありませんし、何より一刻も早くこの話題を終わらせたいからです。
「神様がコウノトリに赤ちゃんを渡す。ココまではいい?」
「うん」
「コウノトリはお母さんに赤ちゃんを渡す。ココまではいい?」
「うん」
「で、神様はお母さんにもよく分からないテクノロジーで赤ちゃんを作り出す。オーケー?」
「う、うん……」
お母さんは全てを投げ出しました。バチ当たりも甚だしいですが、とりあえず太郎君の疑問はそれで終わりました。これで安心して料理の続きが出来そうです。
「ねぇねぇお父さん」
「なんだい?」
その夜、太郎君は仕事から帰ってきてお酒を飲んでいるお父さんに話し掛けました。
「ぼくね、赤ちゃんがどこからくるのかしってるんだよ!?」
「そ、そうか……」
お父さんは何事かと思い太郎君の話に耳を傾けました。
「よく分からないてくのろじーでかみさまとコウノトリがこうびして作りだした赤ちゃんをお母さんに渡すんだよー」
「──!?」
お父さんは台所でしれっと包丁を握るお母さんを見ました。その無言の背中が太郎君への失敗を物語っていました…………。
読んで頂きましてありがとうございました! (*´д`*)