2 一石二鳥政策
次は国民の統治法だ。
国民は衆愚に限る。扇動しやすく愛国心も持たせ安い。
だが全ての国民を幸せにするなんてのは帝王のやることじゃない。そんな馬鹿をやったら民主主義なんて悪魔が頭をもたげてくる。愚の骨頂。冗談じゃない。
まずボクは兵隊の上層部を幸せにした。ボクのお馬鹿な側近にしてやったことと同じように、大特権を与え、裕福、贅沢な暮らしをさせる。
それから軍の中層部から、時々上層部に入れるラッキーな奴を選ぶんだ。特に下層民出で痩せた兵士が良い。何でも良いから理由をくっつけて、ボクちゃん自身が賞状を手渡し声を掛けてやる。
ボクは満面の笑みを湛えてそいつと握手し、嘘かも知れない功労(側近達が一生懸命見つけてくれるのは分かるが、時々明らかにおかしいのもある)を労い、握手してその後誇らしげに拍手をしてやる。
まわりの奴らはそれを見て、ボクちゃんに忠誠を誓えば幸せになると信じるんだ。
ボクちゃんの周りは贅沢三昧をしすぎて腹が出てる連中ばかりだけど、僻地の農民は貧困し餓死する者もいる。でもそれは、別に国にとって重要な問題じゃない。
重要なのは反乱が起きない様に監視し、何も情報を与えないことだ。
救いがないということを条件付けしてやるのさ。
ちょっとでも逆らえば警備兵に発砲させて処刑させる。警備兵も同じ様な村の出身だが、人民の反乱に対する恐怖と、反乱が起きた場合の体制からの罰の重さを教育して、脳髄が麻痺させてある。
そういう兵士は無意識に引き金を引く様になる。自分に逆らう生身の人間の返り血を浴びると、今度はそれが快楽になる。感情のないロボットの誕生だ。
そして彼は下層民の憎悪の対象となる。
後戻りは出来ない。
ボクはその警備兵を褒め称える。一石二鳥だ。
飢え死にした子供の写真を撮って、飢饉を理由にすると諸外国の福祉機関が食料を集めてくれる。軍の中層部にそれを横流しする権限を与えてやる。またまたボクちゃんへの忠誠が集まる。
あったまいい!ボク。