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「てか、黒香に頼めばよくね?」


今は昼休み。いつも、同じ場所、屋上の階段で昼ご飯を食べている。


「んー、俺は別にそれでもいいけど、チョコパフェは無くなるぞ」


「いや、やっぱり俺が行かさせていただきます」


詩呂が「ハハハ、相変わらずだな」とサンドイッチを食べながら言う。


「でもさー本当は最初に九絽瀬に頼んだんだよ」


「え、そうなの?」


「けどなんか、めっちゃ嫌がられたって言うか、断られたんだよな」


「へぇー、女子とか好きそうだけどな」


「だよなー」


女子とかファッション雑誌?みたいなやつで、結構キャーキャー騒いでたけどな。あ、それは着てるモデルさんじゃなくて、服を見てたのかな?うーん、よく分からん。


「まぁ、とにかくサイン頼んだぞ!それと手の感触教えてくれよな」


「いや、俺握手する気ないぞ」


別に興味ある訳でもないし。それに、俺より前に人が握手してる手に触りたくないし。あ、でもこれ言っちゃうとアイドルの人に失礼か。


「はぁ!?嘘だろ?」


「いや、まじ」


「もったいなさすぎだろ。まぁ俺は行けないからサイン貰えれるだけ有難いけどな」


「そう言ってもらえて助かるわ」


「おう」













「おい、黒香」


いつものメンバーと楽しく喋っている黒香に話しかける。

最初は中々周りの視線が気になって話かけにくかったけど、今はもう慣れた。


「ん?なに?」


「今日部活やってくのか?」


あー、と言ってた顔の前で手を合わせる。


「ごめん!もう少し話したら帰るつもり」


「最近ずっとそうだな」


「ちょっと忙しくて。ごめん!」


「そうか……まぁ、疲れて倒れる前にちゃんと休めよ」


「うん!ありがと!」


じゃあ今日もあいつと二人か。あいつめっちゃバスケ上手いから1on1勝てないんだよな。女子なのに。

女子だからやりにくいってこともあると思う。うん、実力だけの差じゃないよな。


「はぁー、明後日……」


俺が自分の席に戻ろうとした時に、また黒香が何か言った気がする。俺もしかして難聴?耳鼻科行ってこようかな。



とりあえず部活行こ。女子トイレから女とは思えないほどのデカブツが出てくる。これはあいつだな。



「あ、柊やっほ!」


「おう」


こいつは碧山(あおやま)青奈(せいな)

身長180センチの化け物。これが勝てない一つの理由。シュートを打ってもブロックされる。2点取るだけでも一苦労だ。

顔は街中を歩くとしょっちゅう、スカウトやナンパをされるくらい可愛い。

前、部活の用品を一緒に買いに行ったとき、ナンパと勧誘合わせて15回されていた。でも、貧乳。


それと、学校ではドジっ娘すぎて、裏でドジ山って男子に言われてた。もうただの悪口にしか聞こえない。


「柊、今貧乳とか言わなかった?」


「さすが貧乳だな。心の中の声も聞こえるのか」


「しね!この、ポンコツなすび!」


すると、彼女がたまたま?持っていた雑誌のような本を投げられる。


「危な!当たったらどうするんだよ!……って、ん?」


「あ!」


「なになに?これで安心!貧乳を解決するマッサージ方法?あー、そのうん頑張れよ」


「っっ!!死ねー!!!」


こちらに、猛ダッシュで突進してくる。あ、揺れてない。

これ黒香だったら、結構揺れてるんだよな。

って、そんなこと考えてる暇じゃない。俺の命の危機だ。

あいつ足速いからもう目の前にいるんだよな。でもドジだからなぁ。


「あ、」


ほら、つまずいた。でも、その勢いが殺されることはなく、突進の形は変わらず飛びついてくる。



「うお!」


「ご、ごめん!」


「い、いや大丈夫」


背中に背負っていた、リュックのおかけで頭を打つことはなかった。

これ、他人から見たら自分より大きい女子に襲われてるって思われるな。でも、貧乳だから興奮もくそも無いけどね。とにかく早くどいてもらおう。


「ほら、早くどいてくれよ」


「むぅー、そこは少しくらいはドキドキするところじゃないの?」


「だって、ひん」


そこで、青奈の拳が振り上げられる。


「わかった!やめろ流石に死ぬ」


「わかったならよろしい」


何か満足気に立ち上がり俺を見下ろす。うぜぇー。この貧乳が!


「そんなに死にたいの?」


「遠慮させていただきます」


「私も黒香みたいに大きければなー」


「無い物ねだりしてもな」


「はいはい分かりましたー」


小さいものは大きいものに負けるんだよ。やっと分かったか。この……ゴホン。やめとこ。


「あ、そういえば俺日曜日俺部活これないから」


「え?なんで?」


「いや、頼まれごとがあってさ」


「ふーんそか」


「おう」


青奈は「なら、仕方ないか」と言って体育館の方に歩き出して言った。後ろから見たらすげースタイルがいい美人に見えるんだけど、とか思っていると「ほら、柊はやくしなよー」と言って手をブンブン振る。俺は「はいよー」と言って青奈のところに駆け寄る。これ姉と弟みたいに見られるやつじゃん。








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