第7話 とりあえずの目的
しばらくして女の子は泣き止み、こちらに話しかけてくる。
「…はしたない姿をお見せしてしまい申し訳ございません、召喚師さん」
「いや、大丈夫だよ。それよりその…ゴリディアとは知り合いなの?」
「はい。自己紹介が遅れましたね、私はニナと申します。ゴリディアとは同じ森で育ちました」
まじかよ、偶然ってあるもんだな。でもなんでゴリディアを見た瞬間泣き始めたんだ?もしかしてゴリディアってリア充改め、リア獣だったりするのか?
「なるほど、同じ森で育ったと。それでお二人はどういう関係で…?」
するとニナが神妙な顔つきで話始める。
「ゴリディアは命の恩人なんです。でも…ゴリディアは森の皆を…古代の森を守って、侵略者に殺されてしまって…」
「え…」
「その亡骸はひどいものでした。ずっと戦い続けていたことがわかるほどには…だから、もう二度と会えないと思っていたのですが…」
そう言った後、またニナの目から滴がこぼれる。しかし、まさかゴリディアにそんな壮絶な過去があったなんて…仲良くなったら情報が更新されて、ニナの言ったようなことが書かれているのだろうか。
「えっとその、大丈夫ですか?」
「…はい、ご心配をおかけしてすみません。それで召喚師さん。私はどうしてここに呼ばれたのでしょうか?それにこの姿は…」
どうしよう、やっぱり聞かれたか。なんとなくうやむやにできると思ったのに。ここは正直に話す…は絶対だめだ。かといって、他に目的なんてなぁ。…いや、これでいくか?
なるべく顔をキリッとさせて、ニナに説明する。
「実は俺、女神様から頼まれてこの世界の平和を取り戻す旅に出ているんです。まだ旅を始めたばかりですけどね。それでまずは仲間が必要だと思い、この仲間を呼び出すことができる女神からの贈り物を使用したところ、あなたが呼び出されたというわけなんです」
「世界に…平和を取り戻す…?」
…どうだ?我ながら良いと思うんだけども。
「…す…」
「す?」
「…素晴らしいです、召喚師さん!」
そう言ってこちらに身を乗り出してくる。
「平和のために行動するなんて、素敵だと思います!それならば、ぜひ私の力を使ってください!」
案外グイグイくるな、この娘!どうやら想像以上に響いてしまったみたいだ…というか俺の心がもたない!
美少女がこの距離にいるだけで心臓がやべぇ!あと尻尾ふりふりかわいいなおい。
「あ、ありがとうございますニナさん」
「いえ、私でお役にたてるなら。それに敬語じゃなくて大丈夫ですよ。私のこともニナで結構です」
「あ、うん。わかり…わかったよニナ」
なんとか不審に思われることは回避できた。それに第一印象もバッチリ、やったぜ!
「それと、あなたのことはどうお呼びすればよろしいですか?召喚師さん?それともシューへーさん?カチヤさん?」
あ、確かに決めてなかったな。シューへーさんはなんか違うな。なら召喚師さんかカチヤさんだけども、好きな方で呼んでもらおう。
「俺のことはカチヤか召喚師の好きな方で呼んでくれてかまわないよ」
「わかりました、では召喚師さんとお呼びしますね!」
召喚師さん…良い響きだ。美少女だからなおのことよし。しかし、今日は疲れたから続きは明日にするか。
「それじゃあ今日はもう遅いから、召喚を解除して休んでもらいたいんだけどいいかな?ゴリディアもどうだ?」
「了解です、召喚師さん。良い夢を」
ゴリディアも小さく頷く。
「それじゃあ、おやすみ二人とも」
寝る挨拶をすませた後、二人をスマホに戻す。次は明日のために強化もやっておかないとな。
「ええっとポイントは3100か。結構貯まってるじゃないか」
50000にはほど遠いが、これ以上美少女が増えたら心臓がもちそうにないからしばらくは強化に使おう。その前に、ニナの能力を確認しておくか。
(ステータスは魔力よりか。地形適正は草原S、森:森林S。ゴリディアとほとんど同じだな。スキルはヒール…回復だな。スキルツリーの初めは治癒の心得…回復の効果量アップか。)
序盤でヒーラーは大切だから、これは嬉しいな。とはいっても、人数が少ないからどんな能力でもだいたい嬉しいか。キャラ情報にも目を通しておこう。
『古代の森に住んでいた少女ニナ。動物と心を通わせることができ、傷を癒す術が得意である。性格は明るく、優しい心の持ち主。』
いい娘だ…これで猫を被っておりとか書かれていたらどうしようかと思っていたけど、いらない心配だったらしいな。とりあえずレベルを600ポイントで12まで上げておくか。SRは少し安いんだな。
そして、二人のステータスを見比べてみる。
(おお…ゴリディアやばいな、全部勝ってるじゃん)
さすがはSSRといったところか、はたまたこいつが別格なのか。すると、ふとゴリディアの好感度に目が留まる。
(好感度16か…結構あがってるな)
なんか好感度ってゲームだと便利だなぁって感じだったけど、実際に見ることができると恥ずかしいな…それにこれって、信頼の数値なのだろうか?それとも…
(男性は信頼度、女性は好感度。これで脳内補完しておこう)
あまり深く考えないようにして、ついでにゴリディアのレベルも上げておこう。17くらいで良いかな。
(残りポイントは1500か。まあこんな感じでいいだろう)
ホームに戻って机の上に置こうとしたときに、あることに気がつく。
(ん、召喚タイマー?なんだこれ。えっと、時間を決めておけばその時間に自動で召喚を行う機能…だと…!?)
め、目覚まし美少女3Dィィィィ!
嘘だろ、神機能じゃねえか!早速ニナを7時にセットしておこう!
興奮して少し目が覚めてしまったが、それで眠れない俺ではない。明日の幸福のためには自らの意識すらコントロールしてみせる。そう決意しながら、スマホを机の上に置く。
(…そういえば充電要らずなんだな、これ)
改めて便利な物をくれた女神様に感謝をしながら、目を閉じる。俺が眠りに落ちるまでは、そう時間はかからなかった。