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世界 x(クロス)  作者: 快速
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第五章 攻撃ヘリ


 フロードとトニーは、団地から洋館までテレポートで帰ってきた。


 トニーの格好はセカイトメントの格好ではなく、ジーパンにパーカーという、地球人らしい格好だった。この格好についてはフロードは何も言わなかった。地球の服の方が着やすいことは分かるし、ティムもたまに地球の格好でセカイトメントに帰る事があるからだ。


 ダイニングルームでは、椅子に座ったメリが、薄皮チョコパンを頬張っていた。


「おふぁえひー(おかえりー)」メリは口にパンを入れたままフロードに挨拶をした。しかし、トニーを見た途端、パンを射出し、立ち上がった。パンはテーブルの上をコロコロと転がっている。


「あれ? トニーじゃん! フロード何やってるの? ドラゴンは誰がやったの⁉︎」

「俺に決まってるだろ? トニーは偶然会ったんだ」ドラゴンの正体はトニーだったとは言わない。

「そ、そうなんだ……。トニー、帰って来てくれたんだ」メリは目を丸くしながら、トニーとフロードを交互に見ている。


 トニーはフロードが自分を庇ってくれている事に、嬉しさを感じながらも、居心地の悪さを感じていた。罪悪感からだろう。


「メリ、トニーをセカイトメントに送りたい。あと、俺も行く。頼めるか?」

「え? じゃあ私も行くよ。ジンマ(人名)も、明日帰ってくるって言ってたし、私もマナを補充したいし」メリは射出したパンを拾い、口にいれた。「1日2回もセカイトメントへの扉を開くのは疲れるんだからね?」

「すまんな。じゃあ、ジンマが帰ってきたら行こう。それまで待機だな」フロードは、トニーの背中を優しく叩き、椅子に座るよう促した。トニーは椅子に座り、メリが食べていた薄皮チョコパンの入れ物を、なんとなしに眺めた。


「食っていいよ。安売りしてたやつだし」


 トニーは、食べたくて眺めてた訳ではないが、そう言われた事で、空腹に気付いた。「ありがとう」トニーは遠慮がちにチョコパンを一つ取り半分かじった。

 

「お腹空いてるなら何か食べる? 冷凍食品、沢山あるよ?」


 昔からメリは、トニーには優しかった。傷つきやすい性格を理解しているのかもしれない。


「いや、いいよ」

「遠慮しなくていいよ。どうせ経費だし、食べなよ!」


 トニーは一度断ったが、メリの押しの強さに負け、空腹だった事もあり、食事を頼んだ。メリのように押しが強くないと、トニーに食事を作ることは難しいだろう。トニーは、自分に食事を作ってもらうほどの価値があるとは思ってないからだ。『飯をつくらせろ!』と押されることにより、トニーは相手の願いを聞く、という形で食事を作ってもらうことを受け入れられるのだ。 

 それをわかっているのか、直感なのか、自分が飯を食わせたいだけなのかわからないが、メリはトニーに食事を食わせることに成功し、「おっけー、パスタ作るよー」と、キッチンに向かった。


「パスタ作るって、レンジのスイッチ押すだけだろう」フロードは言いながらトニーの隣に座った。


 トニーはスマホを取り出し、テレビを見始めた。

 フロードは「それ、テレビ見れるんだな」とトニーのスマホを覗き込んだ。トニーは、フロードにも見れるようにスマホを傾けた。


「自動運転のヘリが暴走してさ、それが結構ニュースになってて……あぁ、やってる」


 スマホにヘリが映し出された。攻撃ヘリと呼ばれる種類のもので、東京の郊外を飛んでいる。ヘリの映像は上から撮影してるものだ。マスコミのヘリが、攻撃ヘリのさらに上を飛んでいるものと推測出来る。

 ヘリは東京の郊外を飛んでいるようで、フロードはこの風景に見覚えがあるように思えた。


「どこのチャンネルもこればっかりだ。大変なのは分かるけどね……。自衛隊のヘリが暴走したら、そりゃ大事件だし……」


 トニーはニュースを見つめながら言った。キッチンからメリの鼻歌と、レンジの稼働音が聞こえる。

 フロードは何かに気づき、画面に顔を近づけた。トニーは驚き、顔を引いた。フロードは画面を凝視し、


「ここに映ってるの……。この洋館じゃないか?」と言った。


 それを聞いて、トニーも画面に顔を近づけた。「確かにそうだ」


 二人が凝視している画面からキャスターの声が聞こえる。


「ヘリが止まりました! 今まで高速移動を続けていたヘリが空中で静止しています。何があったのでしょうか⁉︎」キャスターがマスコミのヘリから実況する。


 攻撃ヘリは、フロード達のいる洋館を向き、空中に静止している。フロードは振り返り、そこにある窓の外を見た。小さくヘリが見える。トニーもつられてそれを見た。


 フロードはヘリから突き刺さる殺気を感じた。


「メリ! セカイトメントへの扉を開け! 急げ!」フロードはキッチンに向かって叫ぶと同時に、トニーに体当たりをかまして床に倒した。その瞬間、弾丸の雨が降り注いだ。機関砲だ。


 窓ガラスは壁とともに吹き飛び、テーブルは細切れに弾け飛んだ。二人が床に伏せる横で、床が轟音とともに消えていった。機関砲の着弾の衝撃が、フロードの顔を連続で殴る。驚いたメリが「うそ! うそ? 何⁈」と慌ててキッチンから駆けてきた。


「ゲートキーパーの魔法だ! 逃げるぞ!」フロードが叫ぶ。メリは悲鳴をあげながら、廊下の奥にある姿見へ走っていった。

 フロードはトニーを立たせ、メリの悲鳴の方へ押した。二人はメリに続き、廊下に出る。攻撃ヘリはロケットランチャーを発射した。

 フロード達の背後で爆発が起き、ダイニングルームが消し飛んだ。爆風は廊下の二人を吹き飛ばし、その場に叩き伏せた。廊下の奥で、メリは姿見に魔法をかけ、セカイトメントへの扉を開いていた。


「いけ! 早く!」フロードは手で合図する。


 メリは姿見に飛び込んだ。フロードはトニーの腕を引き、立たせ、姿見の方へ押した。トニーも姿見に飛び込み、次はフロードだ。

 その瞬間、フロードの真後ろにロケットランチャーが着弾した。爆風に体が飛ばされ、壁に打ち付けられた。フロードはすぐに顔を上げ、姿見を見た。


 姿見の鏡の上半分が割れて、床に落ち、バラバラに砕かれていた。残っている部分は機関砲の衝撃にグラグラ揺れ、今にも落ちて砕けそうだった。

 鏡が傾いた。フロードは走り出し、倒れゆく鏡にヘッドスライディングをかました。フロードの体は鏡にギリギリ入り、つま先が入ったところで鏡は落ち、割れた。


 攻撃ヘリはその後も打ち続け、洋館を跡形もなく破壊した。


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