表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界 x(クロス)  作者: 快速
13/21

第十二章 作戦開始


 十数人の警察官が、教会へやってきた。剣や盾で武装した警察官が、教会の前で物々しく見張りをし、中ではホワイトとヒゲが、石にされた被害者たちに魔法をかけていた。ヒゲは、魔法の説明書を見ながら魔法をかけている。

 魔法をかけられた被害者たちは、頭上に、記憶解析の時に出たような、霧状の球体ができ、それがぐるぐると渦巻いていた。


 全員に魔法をかけ終わると、ホワイトとヒゲは入り口付近に置いておいた椅子に座った。カイルとアーノルドは後ろで手を組み、壁際に突っ立っている。トニーは教会の椅子に、居心地悪そうに座っていた。


「よし、これで被害者たちが何かに取り付いたら、思考が映像として、上の球体に映ります。カイル、アーノルド、トニー、映像が映ったらすぐに対応できるように、気を抜かないで下さい」ホワイトがそう言うと、三人はうなづいた。


 ホワイトがフロードに連絡を取る為、スマホを取り出し電話をかけ始めた。任務を開始してもいいと言う連絡だ。


 トニーはカイルとアーノルドの2人に、座る事を進めたが、2人は「立っている方が落ち着くんで」と座らなかった。

 電話をかけながら、ホワイトは横目でそれを見ていた。正直言って、2人は長身でごついので、立っていられると目立って、ホワイトが落ち着かなかった。


 アーノルドは筋骨隆々で、制服の腕や胸がパンパンに張っていた。そして雰囲気も、マシーンのようで、どんな対応をしたらいいかわからない。

 カイルはアーノルドほど筋肉はないが、引き締まった体をしていて、目が鷹のように鋭く、こちらも機械のような雰囲気をしていて、警察署では問題ないが、ずっと一緒にいるとなると、どう扱っていいか分からないタイプだった。2人とも不機嫌では無いが、そう見える表情をしている。

 2人が選ばれた理由は、軍隊出身で戦争の経験がある事だ。殺しに慣れていて、必要以上に罪悪感を抱かず、精神を壊しにくい。


 ホワイトは落ち着かず、立ち上がり、トニーへ近づいた。


「トニー、あなたをここに呼んだ理由は、被害者たちの心の映像から、どんな機体に乗っているかを推測してほしいからです。私たちよりかは、地球の兵器に詳しいですよね?」

「ああ、多分。地球で結構、映画とか本とか読んでたんで……」


 2人はカイルとアーノルドの圧力で、少し気まずかった。そのせいか、似たような会話をさっきもしたと言うのに、今もしてしまった。ホワイトはカイルとアーノルドに、趣味の話でもしようかと考えた。いつシャイニングが、被害者の心を操作するか分からず、それまでずっとこの空気はきついと思ったからだ。

 しかし、カイルとアーノルドは圧力をかけていると言う自覚はない。普段通り仕事をしているだけだ。

 2人がそんな気まずさを感じていると、ヒゲが紙袋をとりだし、フライドポテトを食い出した。ヒゲはポテトをつまみながら、「飲み物が欲しくなるな」と言い、カイルとアーノルドに近づき、紙袋をアーノルドに向けた。


「食うかい?」

「え? いえ……」アーノルドは不意を突かれた。

「カイルは?」

「俺も大丈夫です」カイルも断った。

「2人とも、ポテトは嫌いか?」


 カイルとアーノルドは目を丸くた。


「いえ、任務中は必要以上の飲食をしないようにしてるので……」カイルが答えた。


 ヒゲは「軍隊ではそうなのかもな、でもここは警察だ。みんな何かしら食いながら仕事をしてる」と笑った。


 ホワイトは「え? そうなんですか?」と呟いた。


「忙しくなる前に何か買ってきてやるよ。おごりだ。何がいい? 近くにこの店がある」ヒゲはそう言って、紙袋の印刷を2人に見せた。


 カイルとアーノルドは顔を見合わせ、姿勢を崩さず答えた。


「では……そのポテトと、コーラをお願いします」カイルが答えた。

「私はぁ……トマトサンドと……アイスティーでお願いします」アーノルドは、上司に買い物を頼む事を、悪いと思っているようで、歯切れが悪かった。

「なんだ? アーノルドは見た目に寄らず、可愛いメニューを注文するんだな」


 ヒゲがそう言うとアーノルドは「いやぁ、家内が食事にうるさくて……」と少しだけ微笑んだ。


「なるほど、じゃあ内緒でハンバーガーを買ってきてやるよ」ヒゲはそう言い、アーノルドの肩を叩いた。アーノルドは「ありがとうございます」と笑顔で礼を言った。

 それを見ていたカイルは、「すいません、俺にもハンバーガーをお願いします」と頭を下げた。


「なんだ、カイルの家内は食にうるさくないのか?」とヒゲは冗談まじりに言った。


 カイルは笑いながら首を振り、「うちの家内は、食べることにはうるさいですが、食べるものにはこだわりません。手の届く範囲にあるものは全て食べてしまいます」と言い、声を出して笑った。釣られて、その場にいる全員が微笑んだ。


 ヒゲが買い出しに出た後、和んだ空気を途切れさせないよう、ホワイトはアーノルドに話しかけた。食にうるさい妻は、どのような食事をアーノルドに求めているのかを聞いたのだ。

 加工肉は食わないとか、砂糖はとらないとか、野菜を必ず取れとか、そんな感じだった。ホワイトはその食事が、どのように体に影響を及ぼすかも聞き、自分の食事にも取り入れると宣言した。

 カイルもそれを聞き、妻に半分でもいいから、そのような食事制限をしてほしいと、冗談半分、本気半分に言った。その話が終わる頃には、ホワイトの、カイルとアーノルドへの苦手意識は無くなっていた。


 買い出しから帰ってきたヒゲは、たっぷりジャンクフードの入った買い物袋を両手に持っていた。その袋をテーブルに置き、中身を

取り出し、外にいる見張りの警官達に、ハンバーガーと飲み物を一つずつ配った。それでも、かなり残っていた。

 ヒゲはカイルとアーノルドだけでなく、ホワイトとトニーの分も買ったようで、教会にいる全員にハンバーガーを配った。しかしそれでも、ハンバーガーは4つほど残っている。


「あの、ヒゲそれ全部食べるんですか?」ホワイトが聞くと、ヒゲはハンバーガーをかじりながら答えた。

「いま食っているのはおやつだろ? 後、夕食分かな?」


 ホワイトは信じられないと言う顔をして、ハンバーガーを食べるヒゲを凝視した。ハンバーガーは、日本のマ○クのような子供用のものではなく、ホワイトの顔を半分隠せるほど大きいものだ。それをおやつだなんて。しかも残りの三つを夕食で一度に食べるなんて……。

 ホワイトはハンバーガーを3分の1ほど食べて、あとは紙で包みなおし、テーブルの上に置いた。


「ホワイト、それ食わないのか?」とヒゲがハンバーガーを指差した。

「あ、いえ、後で食べようかと思いまして」

「そうか、ならいいか……」とヒゲはそっぽを向いた。


 まさか、自分が食べないと答えたら、食べる気だったのかと思い、ホワイトはヒゲの食欲におののいた。



 サンフランシスコ、国道101号線を行くフロード達に連絡が入った。任務を開始していいと言う連絡だ。


「了解、もう向かってますよ。ティムにも伝えます。はい、横にいます」フロードはそう言い、電話を切り、スマホを真ん中のドリンクホルダーに入れた。

「任務開始か? まあ……まだ到着まで30分はかかると思うけどな」


 ティムとフロードは朝日から目を守る為、サングラスをかけていた。太陽は進行方向の左側にあり、ちょうど、ビル郡の上あたりまで上がっていた。相変わらず快晴だ。「仕事じゃなかったら、海に泳ぎに行きたい天気だ」とティムは海のほうを見た。フロードは、自分なら木陰で昼寝だな、と思った。


 しばらくして、突如、ドリンクホルダーに置いたあったスマホの画面に、ホワイトの顔が映った。


「フロード、ティム! あなた達の近くに取り憑かれた車がいます。気をつけて下さい」


 フロードは周りを走る車を見渡した。


 教会では、石になった人間の頭上に、映像が映し出されていた。ホワイトとトニーは、その映像がよく見える場所まで近寄った。

 数十メートル先の車から立ち上がり、周りを見回すフロードが見えた。間に車は無い。


「兄貴! 真後ろの車だ!」


 ドリンクホルダーのスマホからトニーの声がひびいた。

 それが合図だったかのように、フロード達の後ろの車が加速し、迫ってきた。運転手は操作ができずに慌てている。フロードは上半身をひねり、その車に光弾を打った。車はボンネットが弾け飛び、破壊されたエンジンが露出し、急激に速度を落とした。

 

「フロード! 石にされた人がもどりましたよ!」


 車を破壊した直後、ホワイトの喜ぶ声が聞こえた。フロードがそれを聞き「よし」と呟き、正面を向き直した瞬間、


 キキー!と音がし、前の車が急ブレーキをかけた。「くそ!」ティムは怒号をあげ、ハンドルを切った(魔法で)。その反動でフロードは倒れそうになったが、フロントガラスにつかまり、なんとか耐えた。


「周りの車全部!」体制を立て直す暇もなくホワイトの警告が聞こえた。


 フロード側の車が体当たりをかまし、反対側からも挟むように体当たりが来た。ティムは急ブレーキで、挟み撃ちから逃れ、前に出た二台に光弾を打った。二台とも光弾を受け、フロード達に道を開けるようにひっくり返り、ティムはその間を加速して通り抜けた。


「反対車線から!」トニーの声だ。フロードは反対車線を見た。


 反対車線の車が、次々と中央分離帯を飛び越え、あるいはぶち破り、ティムの車めがけ突進して来た。フロードとティムは立ち上がり、向かって来る車を光弾で撃ちまくった。光弾が当たった車は、鉄球を食らったように吹っ飛び、道を開けた。横転した車の間から突っ込んできた車は避け切れそうになく、光弾をその車の真下に打ち込んで、宙に浮かせ、その下を猛スピードで突っ切った。操られた車を全て破壊は出来ず、撃ち漏らした車もあった。しかし、進行に邪魔になる車は全て破壊した。


「はは、オープンカーでよかっただろ? 撃ちやすい」ティムがニヤリとフロードを見た。

「確かに」フロードは無表情で答えた。


 2人が軽口を言い合っている間。トニーは心の映像を見上げた。運転席からの映像が映っている。かなり大きな車両、そして、その隣の人は空を飛ぶ映像。フロード達を捉えて離さない。


「兄貴、民間ヘリが空にいる! それと反対車線にトラック!」


 ティムは空を見回し、ヘリを確認した。小型のヘリだ。まっすぐこちらに向かってくる。フロードは反対車線を見た。大型の車両が急ハンドルを切り、中央分離帯を突き破った。


「あれはトラックじゃ無い……タンクローリーだ!」フロードが叫ぶ。


 タンクローリーは急ハンドルを切った勢いで横転し、フロード達の車線を塞いだ。避けることも出来ず、とまれる距離でもなかった。フロードは瞬時にティムの腕を掴んだ。車はタンクローリーに突っ込み、大爆発した。


 トニーとホワイトはティムの車がタンクローリーに突っ込み、爆発したところを、ヘリの視点から見ていた。ホワイトは口をあんぐりと開け、呆然とした。トニーはティムとフロードが直前で脱出した事を願い、燃え盛る火炎の周辺を凝視した。


 2人の周りでは、石から戻った人たちが、ヒゲの誘導を受け、教会の外に歩き出していた。石化が治った人たちはほとんどが女性で、一体なにがあったのかと、教会を見回している。ヒゲは石の状態の人をなるべく見せないように誘導していた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ