千年後の空
「必ずここに戻ってくる。だから……俺を待っていてくれるか……」
彼は、そう僕に告げた。
「うん……待つよ。いつまでも、君が帰ってくるのを……」
僕は、そう彼に告げた。
「そうか……そう言ってくれて……嬉しいよ」
彼は、そう言ってこの場を去っていく。
あぁ……背中が遠のいていく。
言いたい……彼に行かないで……僕を置いていかないで……と
それは、彼の覚悟を揺るがすことだと理解していても……
でも、僕は止めない。彼の事が好きだから……
だから、こう叫ぶのだ。
「行ってらっしゃい!」
彼は右手を上げて答えてくれた。
「行ってくる!」
……と
僕は待った……彼が帰ってくるのを……
一週間が経った。僕はここで待っている。
半月が経った。僕はここで待っている。
一月が経った。僕はここで待っている。
半年が経った。僕はここで待っている。
魔王が討たれたと国王が御触れを出した。彼が帰ってくるのだろうか。
一年が経った。僕はここで待っている。
十年が経った。僕はここで待っている。
五十年が経った。僕は……ここで待っている
百年が経った。僕はまだ……ここで待っている。
五百年が経った。僕はいつまでも……待ち続ける。
千年が経った。僕は泣いていた。
最初から分かっていた。彼は魔王と共に消えたのだと……もう、彼に会えないことを。信じたくなかった。彼が死んでしまったことを。
僕は泣いていた。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁ……ひっく……ぐす……うぅぅぅぅぅぅ……いやだよぉ……」
千年分の涙を流していた。
「……やくそく!したじゃないかぁ……ぜったい!かえってくるってぇ……」
何日も……
「うそつきぃ!うそつき!うそつき!うそつきぃぃぃ!」
何週間も……
「かえってきてよぉ……」
「ただいま……」
僕は、声の方向に振り向き、笑顔で言った。
「おかえり!」