ロリ姉と先生兼秘書さん
遅くなって申し訳ありません(´;ω;`)
年末年始は忙しくて投稿できませんでした
目の前には、地球にあった学校を白で塗りつぶしたような校舎と、立派さは校舎にも負けない学園の門。その門をくぐり、体育館を二回りくらい大きくしたドームに続く道を、大勢の人が歩いている。
門の横には、『王立ヴィクタート魔法学園・入学試験会場』と書かれた看板が立てかけられていた。
「なんか異世界のものってなんでもスケールが違うな。学校くらいは同じくらいの規模だと思ってたのに………」
見た感じ、校舎の大きさは地球にある一般的な高校のおよそ五倍、敷地の広さは……広すぎてよくわからないことになっていた。
そんなバカみたいに広い敷地のなかにある建物を、案内板なしで探すのは自殺行為(?)である。
「学園に着いたら学園長室に来いって言われたけど、どこにあるんだよ……」
この後、迷いに迷ったのは言うまでもない……。
三十分歩き回った結果、やっと本校舎に着いたと思ったら学園長室は別校舎にあると言われ、またあの道を戻って更に歩くことを考えるとストレスマックスな状態になった。今ならあの時のドラゴンも瞬殺できそうである。
「確か学園長ってミアさんの姉だよな……大雑把は性格は姉妹揃って同じってか?……これは許すまじ」
なんの説明もしなかったミアさんのかわり、もとい八つ当たり先を、見たこともない学園長にしてやろうと考えていると、学園長室があると思われる、ちょっと豪華な三階建ての建物が見えてきた。
そして、なぜかはわからないが、その中から出てきた一人の女の子に目を奪われ、立ち止まってしまった。
背丈は俺より少し小さいくらいで、ローブをようなものを着ている。体の線がわからないのが非常に残念なところだ。綺麗な目の色は、この世界では珍しくもないがそこまで多くない黒、髪も同じ黒で腰あたりまで伸ばしていた。
(あれ?なんで俺立ち止まってんだ?)
顔は申し分ないくらいの美少女だが、ミアさんで美女にはある程度耐性があるのにも関わらず立ち止まってしまったことに、プチパニックを起こしながら脳を再起動させる。
再起動させることに成功すると、まず最初に確認できたのはこちらを凝視する美少女だった。当り前だが、男が自分のことを見つめていたら、当然警戒する。流石にこれ以上はマズイと思い、視線を別校舎に向け、なにも知りませんよオーラ全開の顔にし、美少女の横を通り過ぎようとする。
ポーカーフェイスには自信があるのだ。
「あ、あのっ!」
「は、はいっ!?」
美少女の横を通り過ぎ、三歩目を踏み出した時に、美少女が振り向きざま、大声で呼び止めてきた。
当然、呼び止められた俺は冷や汗ダラダラ、しかし美少女の顔はなぜか赤かった。
突き出されるのか!?ついに俺も痴漢で犯罪者の仲間入りか!?などと本日二度目のプチパニックを起こしていると予想外の言葉が飛んできた。
「あ、あの!良ければお名前を…お、教えて頂けませんか………?」
「へっ……?な、名前……?ああ、イサ……です?平民なので家名はない……です」
かみかみだがなんとか名乗ることができた。だが頭の中ではさらにパニックだ。ここでバカ正直に名前を教えれば後々めんどうになるのは避けられない。やっちまったぁぁぁぁぁぁぁぁ、と心の中で叫びながら現状を打破すべく美少女の様子を見る。
「イサ…………イサ君ですね!ありがとうございます!あ、私そろそろ実技試験の時間なので、これで失礼しますね。イサ君もここにいるってことは入学試験受けに来たんですよね?二人とも受かれるように頑張りましょう!」
と早口にまくし立て、顔を俯かせながら美少女はドームのほうへ小走りで去っていく。
一人残された俺は、ある重要なことに気づく。
「俺の名前は知られたけど、俺あの子の名前聞いてないじゃん………まだ弁明すらしてないのに………あと逃げられたやん」
こういった態度を取られるとなんか嫌な予感がする。電車で痴漢したあとみたいな………こう、なにかに突き出される的な………?
オワッタかな………? なにがかって?もちろんこの後に控えているであろう、俺の輝かしきモブCとして生きる学園生活がだよ!
三階建ての別校舎に入り、入り口近くにあった案内板を見る。どうやら学園長室は最上階である三階にあるようだ。
螺旋状に続く階段を上り、よくわからない疲労感とともに三階に着くと、奥の部屋へと続く通路に見た目十歳くらいのの美幼女が“無い”胸を張り、腕を組んで『我、最強なり!』と言わんばかりのドヤ顔とともに仁王立ちしていた。
「え?なんでこんなところに子どm……」
その言葉を言い終える前に、見た目十歳の子供からはおおよそ考えられない圧力を感じた。
圧力を感じると、考えるよりも早く全身に身体強化魔法が発動する。
(っ!?この圧力……ミアさんレベル!?下手したらそれ以上か!?いやそれよりも、この圧力をこんな子供が?)
もはや本能の域にある全身強化だが、それとは半面、脳は冷静である。そこで気になるのは、この世界でも限られた人しか使えないほどの強力な圧力などではなく、世界の“裏”でも有名なミアさんと同じ強さの圧力を放てる子供がいることだ。そんな子供がいるだけでも国が動きかけないのに、ここにいるのはかなりの問題になるはずだ。
じゃあなんでこんなところに?と思うと、幼女は俺の心を怒りとともに教えて(?)くれた。
「き、貴様ぁーーー!!私のことをこ、ここ、子供だと!?私をこの学園の長と知ってのことかぁーーーーーーー!!?」
言葉はちゃんと喋れているのに、頬を膨らませながら両手をぶんぶん振り回し、ぴょんぴょんと飛び跳ねている姿はまさしく幼女のそれだった。
「は?学園長?君が?………ああ~そういうごっこ遊びか何かかな?じゃあ学園長『仮』ちゃん案内よろしくね~」
「だから私が学園長だーーーーー!あと遊びでもなんでもない!ミアが推薦してきた子を少し脅かしてやろうと待っていたのに……あれ?なんで驚いてないの?」
「流石にあれじゃあ脅しにはならないよ~子供にしたらすごいけど大人にはもうちょっと成長してから挑戦しような~」
「だから私は子供じゃなーーーーーい!!ルティーー!この話が通じないバカに説明してあげてー!」
ほう?流石にお兄さんもバカなんて言われたら怒っちゃうぞ?前世は結構頭いいほうだったし。
幼女の叫びが廊下に響くと一番奥にある部屋から眼鏡をかけ、片方の腕には用紙の束を抱えたい秘書のような女性がが現れた。
「はぁ、またですか学園長。いいかげんにしてください。………あなたがイサ・“オラージュ”君ですか?」
「ええ、そうです。その名前が出てくるってことはここが学園長室で間違いありませんね」
「一応目の前にいる私が学園長なんだけどぉ~……」
「学園長は少し黙っていてください。私は学園長の補佐兼講師をしてますルティ・マエストと言います。イサ君が合格したら担任になるので覚えておいてくださいね。」
「合格できるかはわかりませんが…。で、この幼女はいったい?」
「見た目は幼女ですが………ほら、ご自分で自己紹介してください」
「幼女じゃない!私はミアの姉でここの学園長であるマリナ・ルールフだ!エルフだから見た目はこんなんだけど、ちゃんと成人している!!」
どうやら本当にこの幼女は学園長のようだ。ごめんよ幼女。幼女とか言って。これからはマリナちゃんっと敬意をもって呼ばせてもらうよ。
「さて、自己紹介も済んだので行きましょうかイサ君」
どうやら場所を移動するようだ。わざわざここに呼んだ理由はなんだったのだろうか?
「?どこへ行くんですか?」
「試験会場ですよ。イサ君の試験まであまり時間がないので、向かいながらいろいろ説明します」
そこで手を上げる者が一人。
「はい!学園の案内と説明なら学園長である私が……」
学園長自ら率先して案内とは嬉しい限りだ。マリアちゃんから学園長に昇格してあげよう。
と思った時期もありました。
「学園長は溜まりにたまった書類の整理をお願いします。この前みたいに仕事放り出して、買い物とか行ったら監禁しますからね」
どうやらただサボりたかっただけのようだ。マリアちゃんから幼女に降格だな。
俺と秘書兼教師のルティさんはドーム改め練武場へと続く道を並んで歩いている。
「では時間も無いので今日の実技試験の概要を教えますね」
「お願いします」
「実技試験は簡単に言うと担当教師との模擬戦です。合格基準は担当教師によってさまざまですが、優れた才能が一つでもあれば合格できると思っていてもらえればいいですよ」
「合格基準緩くないですか?」
「優れた才能は多種多様ですが、人一倍できるでは不合格です。簡単な話、担当教師に勝ってしまえば合格です。そんな子は学園創設以来三人しかいません」
「それだと合格者が少なすぎませんか?」
「ええ、ですからある程度の基準と他の部分で加点して合格者を出すようにしてるんですよ。教師側からすれば、自分より圧倒的に弱い子ばかりですので加点するのが難しいそうです」
なるほどそれなら実戦経験の少ない学生でもチャンスがあるというわけか。
「話が逸れましたね、試験会場は練武場のほかにもう一つあります。そこは平民出身の学生専用の試験会場になっています」
「平民専用?随分優遇されているんですね」
「逆ですよ。貴族の方々が平民と同じ会場で試験を受けると実力が発揮できないとだだをこねましてね。そんなことでいちいち難癖つけられるとめんどうなので違う会場を用意したんですよ」
「なるほど……あ、続きをお願いします」
「イサ君にもそこで試験を受けてもらいます。そこでなんですが、依頼を成功できるだけの実力があるのかを見せて頂かないといけないので、本気で試験管と戦ってもらいます。」
「それはいいですけど、そういえば俺の担当って誰なんですか?」
そんなの決まってるじゃないですか、と立ち止まりこちらをみるルティ先生の目は、獲物を本気で仕留めようとする者のそれだった。
「もちろん私ですよ?」
練武場にはまだかなりの人がいた。二階の観客席から他の学生の試験を見る学生や、試験中の学生を見ながら高笑いする身なりが明らかに周りと比べて良い貴族らしき人もいる。おそらく自分の子供と比べて優越感かなにかに浸っているのだろう。少しだがこの学園の制服らしきものを着た学生もいた。
舞台が六つあり、左奥の一つを除き他の舞台では今も試験管と生徒の戦闘が行われていた。
その奥の舞台の前までルティ先生と歩く。先生と一緒に会場入りしたせいか、なにやら外野がうるさいが無視する。
舞台に上がるとルティ先生が振り返る。
「では、いまから入学試験を始めます。」
さて、人目はあるけど頑張りますか……。
自分のなかにあるスイッチを切り替える。
次回は初めての対人戦です
でも、思い出してください、この小説のタグを。
つまりそういうことです(?)