お久しぶりです依頼です!腹黒いのは仕方ないの!
遅くなりましたがメリークルシミマス( ゜∀゜)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \
クリスマス、特に予定のない作者はこたつでミカンを食べてました!
今回はかなり長めです!
あと、王都かな?とか意味深なこと言ってすみませんでしたあああぁぁぁぁぁぁぁ!
「で、なんのようですか?わざわざ顔を見に来たわけでもないでしょう?」
「え?顔を見に来たんだよ?」
なに言ってるの?当たり前でしょ?と言わんばかりの顔で問い返してくるミアさんに本気で殺意が沸いてくる。
「そうですか。じゃあ目的は達成されましたね?さっさと帰ってください」
さっさと帰ってもらうべく、ドアを閉める
「待って!冗談!冗談だから!ドア閉めないでぇぇぇぇぇぇ!」
涙目になりながら、今まさに閉じられようとしているドアの隙間に体をねじ込んでくるミアさん。その姿には大人の威厳など微塵もなく、締め出されそうになった号泣寸前の子供の様である。
流石にかわいそう、にはならないが家の前でわんわん泣かれると忍びないのでドアを開けミアさんを解放する。
「もう一度聞きます、なんの用ですか?」
「えっと………………そう!お手伝い!引っ越しのお手伝いとちょっとしたお話をしに来たの!」
わたわたと焦りながら、明らかに取ってつけたような建前を並べるミアさんは確かに可愛い。10人中10人に可愛いと言わせるほどに整った顔立ち、それに加え男なら悩殺できるであろう抜群のプロポーション、もはや兵器と言っても過言ではないミアさんとの会話だ。ほとんどの男の意識はミアさんの体にいくだろう。
それでも俺は聞き逃さなかった。ミアさんが言った『お話』という厄介なことに巻き込まれる可能性のある言葉を。
「引っ越しのお手伝いは必要ありません、さっき全部終わったので。あとお話はしたくありません」
「酷くない!?久しぶりの再会なのよ!お話くらいいいじゃない!この後特に予定もないんでしょ?」
確かに予定はない、だがここで押し切られると厄介なことに巻き込まれるのは目に見えていた。ミアさんのお話を回避すべく考える、今この瞬間最も効果があり、そしていつ思い出してもおかしくないそんな理由を。
考えることわずか2秒、最善であろう選択肢の内の一つを思いつく。人間、逃げること(不倫や現実)が多いため、逃げるための策はすぐに思いつく。流石である。
「いえ、今日の夕食と明日の朝食の材料の確保に狩りに行くので、この後の予定はぎっしりです」
「あら?奇遇ね、イサ君と晩御飯一緒に食べようと思っていろいろ買い込んできたのよ?……さてこれで予定は無くなったわね?」
「……………………俺が狩りの話で逃げることを見越して買ってきましたね?」
「当り前じゃない。純粋な『殺し合い』ならイサ君には到底及ばないけど、話合いによる腹の探り合いは私の専売特許よ?まだイサ君には負けないわ!」
「………」
「ふふん♪とりあえず上がらせて貰っていい?」
「…………どうせダメって言っても勝手に上がるんでしょ」
「さっすがイサ君わかってる~~♪」
スキップしながら男には毒、あるいは理性を崩壊させる兵器でしかないたわわに育った果実を、これでもかと揺らし家の中に入っていくミアさんの後を、呆れ半分諦め半分で眺めながらドアを閉めた。
この世界の食文化は地球の食文化に似ているところがある。
ミアさんが今日の晩御飯としてストレージから取り出したのは、王都の屋台などで売られてる焼き鳥に近い食べ物だ。見た目は塩焼き鳥のような白い焼き鳥なのだが、甘辛いたれの味がしっかり効いていておいしい。本来であれば多少なりとも笑顔で食べているであろう。
となりの席に………いやこの家に居なければ、だ
「はいイサ君、ア~ン♪」
「子供じゃないので一人で食べられます。あといい加減にしないと怒りますよ?」
「これくらいいいじゃない!ケチッ!」
「今すぐその口閉じないと追い出しますよ」
「………………」
「……そこは素直なんですね」
黙ったまま串を差し出してくるので、それを受け取りかぶりつく。何者にも邪魔されない、静かな食事は至高である。
食事が終わりキッチンから二人分の飲み物を持ってミアさんの対面の席に座る。なんでそっち!?みたいな顔でこっちを見るミアさんは放置だ。
「で、話ってなんですか?」
「………さっきまで隣の席に座ってたのになんでそっち行ったの?」
「ミアさんの隣が嫌だからですが?」
「そんなはっきり言わなくても…………」
「ミアさんの場合、はっきり言わないとどこまでも暴走しますからね」
ジト目を向けられ、苦い顔になるミアさんに構わず話を続ける。
「で、話とは?」
「えっと、いい知らせ一つ、悪い知らせ一つ、依頼が一つ。どれから聞きたい?」
「そうですね………悪い知らせだけ教えてください」
「え、ええ!?普通は聞く順番はいいとしてもいい知らせも聞くんじゃないの!?」
「だって、そのいい知らせって主に『ミアさんにとって』でしょう?十五歳になったこのタイミング、だいたい予想できるのでいいです」
「あら?わかってるなら話が早いわ、さあ!早く私とk…「嫌です」即答!?せめて最後まで言わせて!!」
最後まで言わせてなるものか。ん?なんでかって?俺が過労死するからだよ!!
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もうお気づきだろう。王都では十五歳から結婚が認められている、というか推奨されている。ではなぜ、美人+巨乳+一途な男からしたら最高の女性をであるミアさんの求婚を断っているかというと、理由は今から五年前、十歳の時である。
ミアとイサが初めて会ったのは、イサがじいちゃんに連れられ王都にやってきた時である。もちろん実践を主とした訓練のためである。
ミアは、イサと出会うまで自分より強い男というものをあまり知らなかった。知っていても数人、じいちゃんのように世界に名が知れた者ばかりだった。しかし恋に落ちることはなかった。この世界の女性はどの種族であっても、基本的には自分より強く優しい男と一緒になりたいという願望がある。当然、ミアも例外ではない。
ミアはイサを初めて見たとき、イサが持つ内に秘められた圧倒的な強さを直観的に感じ、それに今までにないくらい惹かれた。
次の日からミアの猛アピールが始まった。
イサが行くところ全てに付いていき、ほとんどの時間をイサと共にしていた。最初は美人なミアさんと一緒にいれることが嬉しかったイサも、だんだん鬱陶しくなっていった。当事者のイサとしては、四六時中一緒にいるのはかなりつらいあった。極め付けは、風呂への乱入と添い寝ならぬ夜這いである。毎日の訓練でへとへとになり、一日にある数少ない休息の内二つがミアのせいで死んだのである。風呂への乱入なんておいしすぎる!夜這いならさっさとヤっちまえ!なんて思う人もいるだろう。
考えても見てほしい、この世界の常人ならニ日と持たない訓練を毎日のように繰り返し、夜は無駄に研ぎ澄まされた索敵能力で、ミアが来るたびに起きてしまい寝不足。
イサからすればただの拷問である。
その拷問を境に、イサの中でミアは美人なお姉さんではなく色欲に忠実な魔女になったのだ。
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「まさかミアさんが俺にした嫌がらせもとい、拷問を忘れたとでも?」
「あれは………その……仕方なかったの!今もそうだけど恋する乙女だったの!っていうか男ならあれくらいの愛受け止めなさいよ!」
「あそこまでしておいてまさかの逆ギレですか、まあもともと結婚なんてするつもりないので。さ、もう夜も遅いですし俺は明日のために寝ます。あ、ミアさんはとっとと帰ってください、どうせ簡易型転移魔法陣で帰るんですし」
そういい、明日に備えるため自室に戻るべく椅子から立ち上がる。
「待って!わかった!わかったから!結婚の件は保留にするからちょっと待って!それに後の二つはイサ君も無視できない重要なことよ!」
「………俺に関係ないことだったらすぐに切り上げますからね。あと保留じゃなくて破棄です」
真剣な顔のミアさんは珍しい。おそらくなにかしらの厄介ごとに巻き込まれたか、厄介な奴に。
「そろそろ私の気持ちを受け入れてくれてもいいじゃない」(ボソッ)
「なにか言いましたか?」
「なんでもないわよ!」
もちろんばっちり聞こえている。だが嫌なものは嫌なのだ。
「ごほん、じゃあまずは悪い知らせね。最近、王都で十五歳から十八歳の子供が攫われる事件が多発しているの」
「………俺も攫われる可能性があると?」
「まさか、イサ君を単独で捕獲できる人なんてこの世界にはいないわよ。相手は複数、それでも身体強化すらしてないイサ君の捕獲ですら無理でしょうね」
それはさすがに買いかぶりすぎである。いくら厳しい訓練をしようと人間の肉体である以上、肉体の限界値は存在する。それを突破するのが身体強化魔法なのだから。
「それは流石に無理ですよ。相手が使うなら自分も使わないと、抵抗どころかなにもできず蹂躙されるのがオチです」
「これが謙遜とかじゃなくて、ただ周りと自分の“格”の違いを知らないだけなんだからなにも言えないのよね」
「まあ、その違いを知るために王都に引っ越すんですけどね」
俺が王都に引っ越す理由は、なにも不便の解消だけではない。周りの冒険者との力量差を正確に把握するためでもある。
「そこで依頼よ!」
待ってましたと言わんばかりに人差し指をこちらに向けてくるミアさん。人に向かって指をさすとは、常識をしらないのだろうか?ツッコムのもめんどうなのでスルーするが。
「………はあ、で、いったい何の依頼ですか?」
「誘拐犯の捕縛よ。期間は三年、報酬は三年後の依頼達成率に応じて支払われるわ」
「…………」
「なにか質問ある?」
「じゃあ三つほど」
「いいわよ、私が答えられる範囲で答えるわ」
「じゃあ一つ目、この依頼を受けるための必須条件ってなんですか?」
「えっと、年齢が十五歳から十七歳であること、敵を複数相手にできる実力者であること。確かそれだけだったはずよ」
「………二つ目、調査はどこでやるんですか?」
「知ってると思うけど世界で五指にはいる魔法学園、王立ヴィクタート魔法学園よ」
なるほどなるほど。つまり…………
「…………学園に入学して、卒業までに犯人を捕まえろと?」
「そういうことよ。あ、入学金とか制服代とかも学園側が出してくれるみたいだし心配しなくても大丈夫よ」
「いえ、金銭的には余裕があるので心配していませんが……それより三つ目、その依頼の“捕縛対象は何人”ですか?」
「…………ねえイサ君、どこまでこの話の“裏”読んだの?」
「どこまでと言われても………そうですね、“都合よく利用される”ところまででしょうか」
俺の言葉を聞くと、ミアさんが降参と言わんばかりに両手を上げる。
「…………はあぁ、もう無理ね。どこまで読んだか教えてもらえる?」
「別にいいですけど………えっとまず、この捕縛対象が複数人ってところですけど、なんで複数いるってわかってるのかってところですね。誘拐犯を複数目撃したならそれもわかりますが、それなら警備を増強するだけでいいはずですよね。俺のような子供を雇うより、大人の冒険者に護衛として依頼したほうがよっぽど成功確率が高いはずです」
「…………」
なにも言わずこっちを見ているミアさんを横目に、乾いた喉を潤すため紅茶を口に含む。ミアさんがなにも言わず黙ってるところをみると正解のようだ。
「そこで依頼期限三年です。入学するってことはどんな立場であろうと“生徒”として扱われる。もちろんその中には“生徒である以上、学園に貢献するのは当たり前”っていうのが付いてくる。仮に俺が誘拐犯を一人捕まえても、複数いるかもってだけでそのまま依頼続行です。この依頼が出るってことは少なくとも一人は誘拐犯がいるんでしょう。でも“二人目”がいる確証すらないのに“依頼は終わってない”しかも学園は有力な生徒を無条件で使え、かつ“一人しか捕まえられなかった”ってことで報酬をほぼなしにすることもできてしまう。なにに駆り出されるか分かったものじゃないですね」
いってしまえば、学園は無償で強い者を確保でき、尚且つその者は学園に利用されるだけの存在になる。それではただのモルモットである。そんな学園などごめんである
「って感じですけど、どうですか」
「流石ね~、ほとんど正解よ。でも学園側はそこまでしようとは思ってないわ」
「そうなんですか?まあ、他の人が利用されようと、その人が裏の理由を見破る力がなかっただけなので俺の知ったことではないですが………でも俺は利用されるだけの生徒にはなりたくないのでこの依頼はパスですね」
当り前だ。わざわざ三年間を学園で潰すのは勿体なさすぎる。せっかくこの世界で自由に生きていけるだけの力を付けたのだ。元の世界みたいな生活を繰り返すつもりは今はない。
「大丈夫よ、そんなことになるような依頼を私がイサ君に持ってくると思う?」
「………………否定できない」
「えええ!?」
それも仕方ない。じいちゃんの死んだ理由でもあるドラゴン討伐の依頼も、何を隠そうミアさんが持ってきた依頼だ。
「まあ、じいちゃんの前科がありますし…」
「あいつは寿命だったでしょ!?ってそんなことはどうでもいいの!他に聞きたいことは?」
「そんなことって………じゃあ依頼主って誰ですか」
あー言ってなかったわね、とおでこに拳を軽く当て舌を少しだけだした。いわゆるてへぺろ♡である。ミアさんがやるとあざとく見えるのはなぜだろうか。
「聞いて驚きなさい!依頼主はなんと学園の学園長兼私の“姉”よ!」
俺、自由に暮らすために頑張ったんだけど………。どっかで間違えたかなぁぁ………。
次回は王都です!
今年中には厳しいかもです(´;ω;`)