魔法が使えるようになりました(雷魔法じゃないよ)
本文考えるよりサブタイトル考えるほうが難しいことに気が付きました。
家にある本の大半を読み終えたある日、リビングに呼ばれて唐突に言われた言葉をずっと待っていた気がする。
「イサ、今日から魔法を教えてやろう」
どうも皆さん、3歳になった転生者改め、イサ・オラージュです!あれからもう3年ですか~いや~早いですねー。
この3年で文字の読み書きはほぼマスターし、魔力の増強も着々と進んでこの世界の常識もある程度知った。その中でも一番驚いたのはこのじいちゃんのことだった。
【雷帝】ファルト・オラージュ
世界に8人しかいない最強の魔導士に与えられる称号持ち、その一人がじいちゃんだった。
その日からじいちゃんとの特訓もとい『しごき』が始まった。
魔力量はもともとの才能が大きく、1歳から鍛え始めていたおかげで2歳になるころには普通の人の10倍くらいあるのを、じいちゃんが持ってた魔力測定器で確認済みだ。じいちゃんはそれをいいことに気絶寸前まで魔力を消費させるという拷問に近い特訓を始めた。
「ほれ、また魔力が散って行っとるぞ!そんなことでは生きていけんぞ!」
なんて言うもんだから死にものぐるいでじいちゃんの特訓についていった。
最初はすべての人が使える無属性魔法の特訓だった。身体強化魔法から始まって遠距離でも戦えるように小さい無属性魔法弾なんかの作り方を教わった。
そうここまでの訓練ならちょっと厳しい先生ですますことができたであろう。
だが、じいちゃんは違った。
その練習もすべて『実践』で教えられたのだ。
その特訓も今日で2年目になる。俺は5歳になった。
今でもその特訓は続いており、最近ではやっとじいちゃんに身体強化魔法を使わせるくらいにはなった。
え?俺は使わないのかって?ハハハ、使ってるのに2年間負け続けてんだよ!(泣)
朝、自室からリビングのある一階に降りると、いきなり食事ように使われるナイフが眉間にかなりのスピードで飛んできた。だがこの家ではそれを3歳のころから経験済みの俺は、突き刺さる寸前で右手の人差し指と中指で止める。
「じいちゃん、もの投げるのはだめだよ。しかもこれ倉庫にあった新品のやつ」
「ほっほっほっ、細かいことを気にする出ない。………うむ、5歳でこれだけできれば十分じゃな
イサもそろそろわし以外…そうじゃのぉ、魔物なんかとも実践練習してみてもいいかもしれんのぉ」
「魔物!?ってことは森の奥に行けるの!?やったーー!ってそうじゃなくてナイフ!この前はお皿割ったんだからもの投げるの禁止!どうせ掃除するの僕だし!」
「む、むう……」
なにも言い返せず押し黙るじいちゃんから視線を外し、窓から見える森を眺めながら初めてじいちゃん以外の相手とやれることにわくわくしつつ、今の自分が魔物相手にどこまでできるのか楽しみだった。
午前中は身体強化訓練&対人訓練でへとへとになり昼食を取った後、少し休憩してじいちゃんと一緒に森に入った。
どんどん森を進んでいくと開けた場所に3メートルくらいある一匹の熊が鹿らしきのもを食べていた。
「お、あそこにレッドグリズリーがおるじゃろ」
「あれがレッドグリズリー……」
本で見たことのある魔物。その凶暴性ゆえ討伐ランクはソロの場合B、パーティの場合はCの魔物のはずだ。そんな相手に勝てるのか、と心配していると
「そうじゃ、今日はあの熊を身体強化のみで倒すのじゃ。じゃが相手も生きておる、本気で殺す覚悟がなければ勝てんぞい」
「え!魔法弾もダメなの?」
「駄目じゃ。心配せんでもよい。これはあくまで訓練じゃ。魔物を殺すことに慣れるのが目標じゃ。危なくなったらわしが助けてやるから全力でやってみなさい」
「わかった。でも動物を殺すことにためらいはないよ、慣れてるしね」
あぶないあぶない。禁止されてる動物を魔法弾の練習がてら狩ってたなんて知られたらお説教だ。
怒られている自分を想像してしまい背中に冷や汗を流しながらレッドグリズリーの近くまで歩く。
「グルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥウ」
レッドグリズリーは殺気を乗せたうなり声を上げながらこちらを見ている。
そのまま両者動かず何秒か経ったときいきなりこっちに向かって突進してきた。レッドグリズリーの突進に違和感がある。
(あれ?遅くない?いや慣れたのかな?)
戦闘態勢に入り身体強化したイサの目にはレッドグリズリーの突進がスロー再生されてるように見えていた。
レッドグリズリーが目の前まで迫り、大きく鋭い爪を振り下ろそうとしているのが見えた。腕が上がったのを見てレッドグリズリーの懐に入り半分くらいの力で……気合と共に一発。
「セイッ!!」
腹に正拳突きをくらい10メートル以上飛んで木にぶつかり息絶えてる魔物。腹はべっこりと沈んでおり内臓がどうなってるか想像したくもない有様だった。
「あれ?弱くない?」
こいつってBランクの魔物だよね?とかそんな疑問を浮かべつつ倒した魔物を引きずってじいちゃんのところに戻ってみると、目を見開いて口をあんぐりと開けてるじいちゃんがいた。
「じいちゃん?」
「…………………「じいちゃん!」はッ!いかんいかん呆けておったわい……いやそうじゃのうてあのパンチはなんなのじゃ!?」
「いやなにって言われても、ただの身体強化した正拳突きだけど…」
「あれが身体強化しただけの一撃じゃと………」
「別にあれくらいじいちゃんでもできるよ。日も落ちかけてるし、いつもより疲れたから家に帰らない?」
「あ、ああ」
なにか気になるのか、じいちゃんは家に着くまでの間ずっとぶつぶつ呟いていた。最近の調子はどうだとか、しんどくないかとか聞かれたから、午前の訓練が厳しかったと言っておいた。もちろん皮肉っぽく。実際帰り道で身体に変化はなかった。
はずなのに……………その日の夕食後、俺はいきなり熱を出し倒れた。
次回は新しい登場人物がでてきますよ~