ひとりぼっちのココロ
夜空にまたたく、いくつもの星たち。
そのなかでも、とびきり小さな星に
ひとりぼっちの、さみしい森のココロがいました。
森のココロは、はじめからさみしかった
わけではありません。
まわりに誰もいなくなって、気がつくと
さみしい森のココロになっていたのです。
さみしい森のココロは、いつも
昔のいろんなできごとを想い出して
笑ったり、泣いたりしていました。
でも、それにもあきてしまった
さみしい森のココロは、
最近ではずっと下をむいて暮らしていました。
ある日、さみしい森のココロは、
なにげなく見上げた空に、流れ星を見つけました。
しかも、その流れ星は
どんどん、こちらのほうに落ちてきます。
よくみると、流れ星から
なにか煙のようなものが見えます。
驚いて、さみしい森のココロは
その場を逃げだしました。
流れ星は煙をたなびかせながら
さみしい森のココロの近くに落ちました。
さみしい森のココロが、恐るおそる近づくと
そこには、さみしい火のココロが倒れていました。
さみしい森のココロが声をかけると、
「イタタタタ」といいながら、
さみしい火のココロがおきあがりました。
さみしい森のココロは「どうしたの?」と、たずねました。
すると、さみしい火のココロは
「さみしかったので、流れ星にのって仲間を探しにでかけたら、
急に流れ星が故障して、不時着してしまった」と、言いました。
さみしい森のココロとさみしい火のココロは
おたがいに、昔のいろんなできごとを話して、
笑ったり、泣いたりしていました。
そして、さみしかったふたりのココロは、
少しさみしくなくなりました。
でも、それからしばらくすると、
ふたりとも、話すことも尽きてしまい
しだいに口数は減り
ついには、ふたりがおしゃべりすることも無くなって
気づくと、ずっと下をむいてくらしている
さみしい森のココロとさみしい火のココロになっていました。
ふたりともあまりにさみしかったので、
離れないよう、寄りそって下を向いてくらしていました。
すると、さみしい森のココロと
さみしい火のココロは、ひとつになって
ひとりぼっちの、森と火のココロになりました。
それから、何年も月日がながれ……
ひとりぼっちの森と火のココロのところに、
さみしい水のココロがやってきました。
そして、さみしい風のココロや、
さみしい土のココロも、やってきました。
しばらくは、みんなと楽しく過ごした
ひとりぼっちの森と火のココロでしたが、
しばらくすると、やはり話のネタが無くなってしまいます。
そして、みんなと寄りそって
下を向いてくらしているうちに、ひとつになって、
ひとりぼっちのココロになっていました。
それからまた、何年もの月日がながれました。
ある日、ひとりぼっちのココロは頭の上で
小鳥の歌声をききました。
飛びはねるウサギをみました。
楽しそうに笑う、女の子の声を聞きました。
女の子のむこうがわに
やさしそうなおとうさんとおかあさんの顔も見えます。
ひとりぼっちのココロは
自然にあふれた、美しい星になっていました。
そして……
もう、ひとりぼっちじゃないんだ
と、思いました。