シェン教国
テスト勉強やらの間に書いたので遅れました
日本ごと異世界へ転移したという事実は、一時的だったにせよ日本を混乱に陥れたが、その後のメーケル王国との国交開設による食糧問題の解決や、日本が大陸東方の有力国家たるメーケル王国と国交を結んだことにより連鎖的に行われた多数の国家との国交による各種物資の補給の目処がたったなど一応の落ち着きを見せていた。
だがその裏で、今日本に戦後七十年として振りかかることのなかった火の粉が振りかかろうとしていた。
3月下旬。
某中立国
中立国のある会議室には、日本国派遣の外交官ならびに護衛の“自衛官”と、反対の席にシェン教国派遣の外交官ならびに恐喝するいずしか見えない完全装備の多数の騎士がいた。
「日本国外務省の直江と申します」
「ふん、シェン教国枢機卿のザーサだ」
会談は、教国側が日本を見下した言葉から始まった。
「して、聞くが。その貴官は日本の位としてはどこに位置するのだ?」
「明確な順はありませんが、もしあれば下から数えた方が早いとおもいますよ」
「はっ、日本は教国との交渉にこんな小物を寄越したのか?」
「これでも外交官として、総理から全権をあたえられています」
「そう言うことではないわい。
日本とかいう東方の小国であり魔の海域などという野蛮な場所に国のある蛮国が我ら教国のような、選ばれた民族の住まう大国と交渉するのだ、国王やそれに類する者が来るのが礼儀であろう。
これだから、蛮族を相手にするのは嫌いなのだ」
直江は会談開始から変わることのない笑顔を浮かべたまま「これは、手厳しいですね」とザーサの言葉を軽く受け流していた。
「だが、我らの心は壮大であるゆえに貴様のような下働きの者が来ようが許す」
「それはどうもありがとうございます。
それと話が進まないので、本題に戻りましょう」
途中で話を切られたあげく、先を促されたザーサの顔が歪み直江を睨み付けるが直江はどこ吹く風であり、さぁさぁとばかりに話を進めるように目でザーサを促した。
「蛮族が……
言いかよく聞け……、これは教国教皇の命でありこの大地を創られし神の命である~」
あまりに不機嫌になったザーサに対して直江の護衛の自衛官の一人が「壮大な心は何処いったよ」とボソリとつぶやいた。
勿論、ザーサに聞こえるはずはないが。
一・日本国は大陸における全ての利権を放棄し全面撤退すること
二・日本国は大陸における全ての影響力を放棄しシェン教国に引き渡すこと
三・日本国はシェン教国の軍門にくだること
四・日本国は保有する戦力の約半分まで戦力を縮小し以後シェン教国軍配下に組み入れること
五・日本国は今後シェン教国の許可無しには国交の開設、他国との通商、宣戦布告をしてはならない
六・日本国の国教にシェン教国の信仰する宗教をおくこと
七・日本国は現在の行政機関以下を解体しシェン教国の派遣する内政顧問の指示する機関を置くこと
八・日本国はシェン教国に服従の証として、労働力をていきょうすること
十・日本国はシェン教国に服従の証として、毎月税収とは別に穀物等を献上すること
以下三十項
「~以上を日本国がひとつでも拒否する場合、教国は神に抗う反逆者の住まう国として日本を征伐する」
「ならば、日本の回答は一択になります」
「ふむ、で回答は?」
「拒否です」
直江が即答する。
ぱくりぱくりと口を開けたり閉めたりを繰り返し、暫く直江が何を言ったかりか理解ができていなかったが直江が「拒否だ」と繰り返したことでザーサの顔が、湯気が立つのではないかという程顔が赤くなっていた。
「神の創られた大地に住まいながら、神のご意志を阻……」
「そこが、日本と貴国が違うところだ。
日本という国は、八百万の神が住まう国です。
古来よりの日本の神から、他国から入ってきた神がいく万といる。
つまり、日本に一神だけを信じさせるのは不可能ですね。
ちなみに、言いますと私は無信教です」
「なっ」
「日本には、どの神を信じようが信じまいがそれを保護する法律もありますよ。
あと他に言えば、日本の象徴たる天皇陛下はそちらの教皇のような立場で、神道の権威でもあらされますよ
一番の理由は日本は独立国であり、いかなる国にも属さず屈しない。
それもまた、古来より変わらないですよ。
よって、貴国の属国になる気も植民地になる気もありません」
彼らにとっては、自分たちが信仰する一体の神こそが唯一絶対であり直江の言う日本の八百万とも言える大量の神など自分たちの信仰する神が侮辱させたようなものだった。
ザーサが右手を上げると、ザーサの回りを囲んでいた騎士たちが手を剣にかけた。
「即刻今の言葉を撤回せよ」
「撤回しなければ?」
「異教徒として、処刑する。
貴様らを処刑したあとに、日本に貴様らのように死にたくなければ服従するように貴様らの首を手見上げに使者をだす」
直江はこれはもうどうしようもないと諦めた。
「ザーサ殿でしたっけ?
表向きとは言え、正式な会談だと言うことをおわすれですかな?
もしそうなら国のだめです、身を退くことをおすすめしますよ。
それに、一方的に条件ばかりを突き付けていますが拒否権と言うのもあるんですよ」
「あいにく、蛮族たる貴様らに拒否権などない。
貴様らのような蛮族は我ら教国の人民に支配されてこそ生きる価値があるのだ」
「その時点で日本とあなた方の教国が交えることは、もはやないでしょう。
これ以上の話し合いはお互いに実りある、話しにはなりません。
これにて終了ですね」
ザーサは直江らを再度睨み付けると言葉をはっした。
「そうか、ならば貴様らの国の運命はけっしたな。
や、殺れ」
一人の隊長格の騎士が、机を直江らに投げつけ剣を抜き横凪ぎに振り払った。
だが、その凪ぎ払った剣は数秒前に自らが投げつけた机を切り裂いただけに終わった。
投げつけられた机を逆に、騎士に蹴り返した自衛官が直江に正当防衛になりませんかねと耳打ちした。
直江は会談の場所で殺生があってはならないと思いながらも、どうにかしなければ帰れないだろうと何度目か知れない諦めをすると「報告書は偽造するので構いませんよ」と許可を出した。
了解と一歩前に出た、自衛官は拳銃を抜き放つと躊躇いなく引き金を引いた。
「何故殺さなかったのですか?」
帰路についた、直江はあの時引き金を引いた一人の自衛官に尋ねた。
大方今の日本人のように、人を殺すのを躊躇ったのだろうと予想していたが、予想とは違う答えが帰って来た。
「射殺してもよかったのですが、あの場で殺せば逆上してさらに襲ってくる可能性がありました。
逆に殺さず、あの隊長格の男のように痛い痛いとわめき散らしてもらえば好き好んで前に出ようとはしないでしょう。
それに負傷者一名は無事なものの手を塞ぐので、一人の負傷者を出せば二人から三人を動けなくさせることができますからね」
それと、貴方もよかったのですか?と自衛官が逆に直江に質問を投げ返した。
「なにがですか?」
「会談の事です。
戦争になりますよ、あれ」
「その事ですか、ああいう国とは会談中も言いましたが日本と共に歩くことはできないでしょう。
あそこで向こう側が妥協して、今は共に歩めても遅かれ早かれぶつかる事は確実でしょうね。
なら、あなた方や海保等には悪いですが取り返しのつかなくなる前に事をおこさせ日本の内側から変えます」
「此方からすると、いい迷惑ですな」
直江と話していた自衛官は少しでも事が起こった時、被害を少なくするために頭を回転させていた。
そして直江もまた日本をこれを気に日本の内側の地盤を固める方法を考えていた。
「ええ、取り返しのつかなくなる前にやらなくてはそれこそあなた方にとっては不利益でしょう。
私もそうなることは望んでいませんから」
ここに日本と教国の会談は終了した。
それは、日本を再び戦乱の世の表舞台に立たせることになるがまだ先の話である。
教皇との会談後 約半月後
尖閣諸島周辺
巡視船 艦橋
海上保安庁所属の巡視船は普段どうりの海域を巡航し警備に当たっていたが、転移前まで領海侵犯等を繰り返した中国がこの世界になく隣国となったメーケル王国等の軍艦や民間船などがこの海域に侵入することはないためもはや形ばかりの警備になっていたが、そこは日本であり多少の緩みはあれど警備を怠るような事はしなかった。
艦橋につめる船長以下が双眼鏡で辺りを見渡すが、今日は際立って天気がよく風もたいしてない。
そのために双眼鏡を通して見える景色はなにもなく、ただ青い海と空だけであった。
そう、何もなくなにもいないのだ。
船長の脳内に「嵐の前の静けさ」という言葉が浮かんだ。
普段なら見える、鳥や魚の類いもいないためにそう思っても仕方がないのかも知れないがそれとは別に船長はぴりぴりとした空気を感じていた。
「レーダーに反応はないな」
船長がレーダーを担当している船員に振り返り言葉を投げ掛けたが、レーダー員は以上はありませんと答えるだけであった。
(近くに他の巡視船が一隻いるはずだが、二隻ではカバーできる範囲が狭すぎる)
調査の為に打ち上げた人工衛星から送られてきた写真から、中世の世界並みの技術力しかないことはわかっているが問題なのは戦国時代さながらの戦が至るところで起きていることだった。
その戦禍は日本に降りかかってもおかしくはないのだが、上の上では大半の意見が平和を掲げ戦後七十年にのぼって戦禍が降りかかることのなかった日本にそれが及ぶことはないと言い張り海上保安庁や防衛省の警戒の巡視船の増強や防衛力の強化、それがダメならばせめて本部経由ではなく近くを航行しているはずの海上自衛隊の護衛艦や対潜警戒に当たってる哨戒機、航空自衛隊の哨戒機や戦闘機等と直接連絡しあえるようにと上と掛け合ったがついに首が縦に振られる事はなかった。
「船長!!本部より通信です。
航空自衛隊所属の哨戒機が尖閣諸島周辺に接近する所属不明船団を確認。
確認に向かえとの事です」
「了解したと伝えてくれ。
本艦はこれより所属不明船団との接触を試みる。
万が一を考え、周辺の巡視船にも救援を頼んでみてくれ」
「はっ!!」
「艦影見えました」
暫く航行を続けていた巡視船の見張り員が突如、艦橋内に響くほどの声をあげた。
船長以下が双眼鏡を覗きこむと遥か先に黒い点が浮かび上がる、だがいくら晴れていたとしても距離的にどのような船なのかはわからないままであった。
「レーダー、何隻いるかわかるか!?」
船長がレーダー員に確認を求め声をあげた。
「はい、今度はしっかり写っています。
三、いや六……十……十六……」
「何隻かわからんのかっ!!」
なかなか答えが返ってこない、レーダー員に向かって船長が怒鳴った。
「はい、申し訳ありません!?
ですが、現在もレーダーにうつる船の数が増えていて正確な数がわかりません!!」
船長はそんな馬鹿なと、レーダー員をどかしレーダーを覗きこむがそこに表示されていたのは数百はいるだろう船団の姿であった。
(仮にも日本の領海にこれ程の数の船団が近づいていたのに誰も気がつかなかったのか)
小型船ならまだいいと船長は、毒づいた。
なぜならレーダーに表示されている船の大きさは、巡視船の半分程の大きさのものがほとんどであったが中には巡視船の中では小型だといえこの巡視船に匹敵する大きさのものも多数混じっている。
船長はふとそれに気づいた。
あまりに足が遅いのだ。
船団ともなれば、足が遅くなるのは当たり前だろう。
だが、それを引いても足が遅すぎる。
「本部に通報しておいてくれ」
「はっ!!」
「船速を上げろ。
続いて進路変更、相手の頭を押さえる位置にでる。
だが、近づきすぎるなよ」
船長は通信員に本部に通報しておくように命令すると、続けざまに指示を飛ばしていく。
指示を一通り出し終わった船長は再び双眼鏡を覗き、見えた艦影をみて半分の驚愕と半分自分の予想が当たっていたことを確信した。
前者の驚愕は、船団が明らかに民間の船団ではないことに対してである。
後者は、巡視船を相手の頭を押さえる位置に置いた事と関係する。
船長は万が一相手が軍艦だったことを想定してである。
現代なら船長の行動は何をしたいのかわからないような行動であろう。
だがそれが中世なら、違う。
中世の軍艦と言えば戦列艦等が当たるはずである。
戦列艦等は両舷に大量の砲をつけているため、横につくのは危険と判断したのだ。
それに対して、正面を向いている砲は無いかあったとしても、ごくわずかなはずだ、仮に体当たりで船を横ずけ等をし乗り込もうとしてもぶつけられる前にこの巡視船なら振りきれる自信があったのも頭を押さえる位置に置いた理由の一つだろう。
「木造の船だがよりによって戦列艦か」
「戦列艦って……
相手は軍艦ですか」
「そうなるな」
「……」
船長の歯に衣着せない物言いに、副長が悲痛な顔で押し黙る。
だが、仮にも軍艦である百隻を越える規模にはさすがに他船員たちは浮き足立っていた。
「本部に再度連絡しろ。
現在領海に侵入した所属不明船団は軍艦、手におえない可能性大」
現場では非常時でありながら、向こうでは非常時でないため現場の人間が指示を下せないことに船長は歯噛みする。
「本部より通信。
貴船は所属不明“船団”に接触を試み、領海退去を勧告するようにと言うことです」
頭の硬い上は、此方が軍艦であると言ってもあくまで船であり船団であるとしたいらしい。
「はぁ、警報を鳴らせ
機銃員は銃座につけ」
「了解、警報ならせ」
「警報鳴らします」
副長が指示を復唱し、担当員に叫ぶと船内に警報が鳴り響き日頃の訓練のように着々と配置についていく。
また、担当員が駆けつけ銃座についた機関砲が回転し戦列艦へと向いた。
「よし、警告しろ」
「はっ」
『此方は日本国海上保安庁所属の巡視船である。
貴船団は現在日本国領海に侵入し、これを侵している。
直ちに進路を変更し領海外に退去せよ。
繰り返す、此方は日本国海上保安庁所属……』
様々な言葉で呼びかけるが、以前として進路を変更する様子はなくそればかりか速力をあげたのをレーダーがとらえていた。
「威嚇射撃を実施する。
威嚇射撃用意」
「了解しました。
艦橋より機関座、威嚇射撃用意。
間違っても当てるなよ」
『当てませんよ。
威嚇射撃準備完了しました、指示願います』
「船長」と副長が船長に指示を求めた。
船長は一回頷く事でそれに答えた。
「射撃始め」
『了解』
ダンダンダンダン
と規則的な機関砲の発射音と僅な振動が艦橋に届いた、そして船長らが見守るなか数発ごとに入れられた曵光弾が昼間だというのに空中に光の線を残し戦列艦の手前に着弾し水柱を上げた。
だが、当然と言えるのか進路を変更を素振りを以前として見せない。
「せ、船長!!」
その時、レーダー員から悲鳴にもにた声が上がった。
「所属不明船から飛行体が……」
レーダーには数隻の船から離れる、飛行体を捉えていた。
戦列艦の奥に隠れる一際大きな艦を船長が視認したとき、その大型艦から飛び立つ航空機ににた飛翔体が視界にうつった。
「空母……」
正確には空母ではないのだが、前衛の戦列艦が影になり全体が見えず飛翔体が飛び立っている所だけをみればそう勘違いしてもおかしくはないのだろう。
そして船長の戦列艦の知識と此方の世界の戦列艦では違うところがあるのを身をもって知ることになる。
「所属不明船発砲!?」
レーダー員の次は見張り員が悲鳴にもにた声を響かせた。
地球での戦列艦と此方の戦列艦にたいした違いはないのだが、大きな違いは此方の世界では魔術や魔法と言ったものがあることだろう。
それこそ高位の魔術師や魔法師となれば、(初期の)大砲より射程が長く威力の高い魔術や魔法を放てる。
回転する砲は教国には無いが、数こそ限られているものの自由に移動できどの方角でも狙える移動砲台があるのだ。
そして、それは戦列艦の前を走る巡視船へと目標にし魔術を打ち上げた。
その魔術は太平洋戦争時の対空砲弾のように空中で炸裂し無数の火の粉を撒き散らした。
火の粉は重力に引かれ、巡視船にふりかかり至るところで小規模ながら火災を発生させた。
「被弾(?)しました。被弾です。
各所で小規模ながら火災が発生中」
「被害状況は!!」
「被害状況不明」
「くそっ」
船長はどなり散らしながらも、混乱する全員に指示を与えていく。
そして、船長は通信員から無線を引ったくると早口にどなりこむ。
『メーデー、メーデー。
此方は海上保安庁所属の巡視船である。
尖閣諸島周辺にて所属不明船団を発見、領海退去勧告したところ攻撃を受け本船に被弾。本船は攻撃を受けている。
負傷者はでていないものの、本船での対処は不可能!!
至急救援を!!』
ビシビシと窓ガラスから嫌な音が聞こえ、ヒビが走っていた。
見ればまだ距離があるものの、空母らしきものから飛び立った飛翔体から矢らしきものがふり巡視船を叩いていた。
「くそっ、本部攻撃を受けている応戦の許可を!!」
『応戦は許可できない、お……』
船長は無線を叩きつけた。
「反転、現海域を離脱する!!」
「船長!!
指示がでないうちは」
「私の独断で構わん。
このまま留まれば、いいまとになるだけだ。
応戦もできないのであれば、なおさらだ。
本船は、現海域を離脱し火災の消火作業や被害状況を確認する」
「了解しました。
聞いたな。いそげっ!!」
船長の指示の下、巡視船は警戒任務を放棄しその海域を離脱した。
巡視船の被害はほぼないものの、負傷者が数名出ていた。
もし、あの場に留まっていれば負傷者だけではすまなかったかもしれないが、それがわかるときは訪れないだろう。
国会議事堂
「はぁ、哨戒機から送られてきた画像をみる限り海上保安庁の巡視船ではどうしようもないですな」
上杉統合幕僚長が哨戒機から送られてきた画像を一別し、呆気からんと言いはなった。
「何がどうどうしようもないのだ?」と毛利防衛大臣が上杉に言葉をかけた。
「そうですね。
所属不明船団の大半は戦列艦と言うのがわかっています。
まあ、一隻や二隻……いや、木造船ならある程度の数なら海上保安庁の巡視船でも十分相手ができるでしょうが数が数ですし、竜とかいう航空戦力をあちらは有しています。
画像を解析したところ、三個のグループにわかれた船団。
すべて合わせて約五百から六百隻が確認されています。
さらに問題なのが、二十隻から三十隻程ですが空母……、先日領空侵犯を置かした仮称竜を積んでいるので竜母とでも言いましょうか。それが確認されています。
潜水艦がないのは予想どうりですが、海上保安庁の巡視船では海・空を同時に相手にできる船はないでしょう」
議事堂に集まった主要人物たちは、千隻という数や空母擬きを相手が保有していることに驚きを隠せていなかった。
「上杉統合幕僚長。
それは、日本の領海にとどまっているのか?」
「それは今から説明させていただきます。
以後は教国艦隊と言います、所属不明船団の一グループが現在尖閣諸島を始め一部の島に上陸し占拠しています。
本隊らしき教国艦隊は補給艦等と合流し補給作業をしているため、現在はうごきはありません。
残る一グループはメーケル王国に向かい直進中です。
一気に首都を落とす算段かと」
源 総理大臣が上杉に現状報告を求めると、上杉は黙ってうなずきディスプレイに衛星写真をもとに作成された新たな世界地図を表示させ、教国艦隊の位置や巡視船や護衛艦と言った日本側の位置が表示させた。
「仮にも日本の領土だ。
自衛隊はそれを奪還できるのか?」
「ええ、十分可能です。
相手は戦列艦ですから長距離からの誘導弾による攻撃や、数キロまで近づいて相手の射程外から砲撃すれば一方的に海上戦力を撃滅できるはずです。
また、戦闘機等による攻撃でもこちらもまた一方的に相手を叩けるはずです。
海上戦力を叩いたあとは、海上や空から攻撃を加え弱ったところに陸自を投入します。
これで、奪還できます」
「大雑把すぎやしないか」
「これはすみません。
やるかわからないなら、真面目に説明するのは馬鹿らしいかと」
源の突っ込みにあくびれた様子はなく逆に源を挑発するように言いはなった。
だが、反応したのは他の者達であったりするのだが。
逆に源は神妙な顔つきになる。
「やるかわからないとは、どういうことだ?」
「そこは防衛省ではなく、外務省にお願いします」
上杉の変わりに、毛利が外務省に訪ねるように源に言った。
「外務省」
「はい、先日教国との会談の内容をお伝えしたと思いますがそこから察せられるように、教国は地球の過去の宗教のように多神を認めず教国の信仰する神以外を信仰する国を攻め立てて属国か植民地としています。
それに、教国は率直な感想面子を何より大事にします」
「つまり」
「防衛省が言ったように、教国艦隊を駆逐できたとしましょう。
そうなれば、日本は教国の面子を踏みにじったと同じです。
つまり、日本から教国を追い出しただけでは終わらなくなります」
「ふむ、雪辱をはらすために幾度となく日本に押し寄せると?」
源は沈黙し考え込む。
「戦争になる……か。
だが、日本には憲法が」
「そこです。
上杉統合幕僚長が言いたかったのはまさにそこでしょう」
「……」
「戦争をやる覚悟は……引き金を引く覚悟はあるかと言うことでしょう」
外務省の者が上杉をちらりと見ると、そのとうりだとばかりに小さく頷くのが見えた。
「防衛大臣…… 」
重苦しい沈黙のあと、源が声を発した。
「自衛隊は既に作戦を練っているのだろ。
教国との戦争までを考え」
「ええ、一応は」
「なら、それに自衛隊は全力を尽くしてくれ」
「それではっ」
どこかの省が異議を唱えようとしたのを源は、片手をあげそれを制した。
「これは、この世界に置ける日本の位置ずけるためのものにもなる。
ここで国土を占領されたままでいれば、なにもできない弱小国と位置づけられるだろう。
だが、教国をはね除け教国に圧制される小国や民族を一気に立ち上がられた手を結べば日本のこの大陸に置ける立場は確立する。
私たちは今を見るのではない、先を見越した世界規模の戦略をたてるのだ」
「大東亜共栄圏でもつくるのですかい」
「それも、視野に入れる」
第二次世界大戦時の日本の構想を再びやるのかという、上杉の言葉に源は頷いた。
「いざとなれば私が、責任をとる。
今回はこれで解散とする。準備を始めてくれ」
「「「はい」」」
自衛隊の防衛出動は、野党の一部が反対を示したが過半数が賛成をしめし可決された。
海上自衛隊 艦隊編成
派遣艦隊司令長官 『夜坂 榛峰』 海将
派遣艦隊副長官 『長尾 直鶴』海将補
艦隊 本隊
【旗艦】巡洋護衛艦『たかお』(架空艦の一隻 以後増える)
ヘリ搭載護衛艦『かが』
イージス護衛艦『あたご』
汎用護衛艦『あきづき』
汎用護衛艦『たかなみ』『おおなみ』
艦隊 前衛
【旗艦】ヘリ搭載護衛艦『いずも』
イージス護衛艦『こんごう』
汎用護衛艦『てるづき』『ふゆづき』
汎用護衛艦『はるさめ』『あけぼの』
潜水隊
潜水艦『そうりゅう』『うんりゅう』『はくりゅう』
潜水艦『おやしお』『みちしお』
読み返したあと最後の方投げやり感が……
次回は「尖閣諸島海戦(仮)」になると思います。