始まりの1話!
-キーンコーンカーンコーン-
学校のチャイムが鳴り、今まで生徒達の賑わいで音が止まなかったのに、その瞬間だけ机と椅子が当たる音や椅子が引きずられる音などで五月蝿くなる。
だが、先生がまだ来ないということもあり生徒達はまた賑わい始める。
「勇者っていいよなぁ、俺もなりてぇよ」
「あんたも将来決まってるんだからいいじゃない」
「勇者と戦士は違うだろぉ!?それにお前は賢者なんだからそれもずりぃよ!」
「もう何回目よそれ」
「ははは」
はたから見たら、1件危ない人達なんだが・・・この世界には一つシステムが存在するのである。
実はこれ、生まれた瞬間からの事なんだが。
この世界の人間は10億人に1人の確率で将来が決められる事があるんだ。
それが赤ちゃんが産まれた時のそのデータが政府に集まるシステムになってて、そのデータを管理する機械「SM」というのがある。決してサディズムとマゾヒストというわけではない。
これは全世界に設置されている
SMと言うのは、聖なる母からとったやらなんやらという説が一番でかい。
それで集められたデータをSMが管理するのだが、そのデータをSMが見て、勇者やらなんやらの職業にピッタシの人がいたら決められるというシステムなんだ。
それで世界で10億人に1人の確率なのに、クラスに3人もいると言うことは非常に珍しく、黄金の年代とも言われるほどだ。
まあ、同じクラスってのは集められたからってのもあるんだが・・・
それで、決められてない人達はサラリーマンなり、病院の先生なり、この世界の職業にしかつけないんだ。
そしてなんでこの世界に、勇者やらがあるのかと言うと、実はもう一つ!この世界じゃなく別世界が存在する。
勇者や戦士を決めるシステムも、その別世界が見つかって10年後くらいに決まったシステムらしい。
別世界の名前はペルラドパウラ、略してペウラと言われてるらしく、発見されたのは約1750年代と言われている。SMはペウラの住民と一緒になって作ったらしい。
俺ら一般人の憧れの的、それがその職業が決められている人達。
ペウラとこっちの世界を一応自由に行き来できるらしいが・・・こっちの世界では能力が発揮できず、一応ただの一般人になるわけだ。
それでも、政府の管理下に置かれて自由にこっちの世界に来れるらしい。
どれくらい人気あるかと言われると、ジャニーズやアイドルなどモデルや芸能人よりも憧れの存在となっている。
高校を卒業したら、すぐペウラに連行されるらしいが・・・。
それでも羨ましいことはない
だが、人生に1度だけペウラに行けることがある。
それは修学旅行!!!職業を決められてない俺らの夢!なのである!!
それが1週間後なんだ、楽しみで仕方がない!
そうこう修学旅行について想像を膨らましているうちに、先生が扉を開けてやってきた。
「すまんすまん!授業ってこと忘れてたわ!」
笑いながら言う先生に対し、生徒達は
「ちょっと先生しっかりしてよー!」
「またー?ボケ始まったんじゃない?」
などと笑いながらツッコム。
こうして授業が始まる。
修学旅行まであと、1週間だ。
-キーンコーンカーンコーン-
学校が終わりのチャイムが鳴る。
現在は午後4時、今は放課後だ。
「ちょっち待てよ希里」
「ん?あー、なんだ。真樹か」
今呼びかけてきたのは隣のクラスで小学からの付き合いの青道 真樹。
ちなみに俺は戸田 希里、二人とも職業が決められていない極普通の一般人だ。
「高校2年生になったからって一緒に帰らないなんてないだろう?」
「すまんすまん、素で忘れてたわ」
今は高校2年生に上がり、二人とも歳は16歳。
桜吹雪が綺麗に空を彩り、校門は桜の木々からの木漏れ日が幻想的に映えている。
家が近いというのもあって、普段は一緒に帰っているのだが久々の登校と、修学旅行が近いというのもあってすっかり頭から消えていた。
「にしても、始業式から1週間で修学旅行なんてはやいよなぁ」
帰宅途中、真樹が話しかけてきた。
「まあ、日本の首都だし・・・それに職業決まってる人たち集めるくらいだからな」
「金かけてんだろうな」
俺らの学校に政府が絡んでるらしく、どうも毎年日本に職業決まった人がいると収集かけるらしい。
「まあ、クラス替えはないし4月始めか中頃でもいいんじゃない?」
「テストは修学旅行終わってからだっけか」
「テストの話はやめろおおお・・・俺はペウラで暮らすんだぁぁ!」
「無理無理、俺ら一般人」
真樹は沢山友達がいるが、俺は全くいないのでこの時が結構楽しかったりする。
たわいもない話をしていたらいつの間にかもう家の前だ。
「んじゃ、また明日な」
「おう」
真樹の家はあと100mあるので、先に俺が家に帰るという形になる。
「ただいまー」
「あら、おかえり」
家に帰ると母親が迎の言葉を告げた。
歩きながら居間へと向かう。
するとそこに母親がテレビを見ている姿があった。
「あんたなーににやけてるのさ」
「うっせ」
母親がニヤけながら、母親特有のウザいノリで話しかけてきた。
どうやら修学旅行の事が顔に出てたらしい。
「あんたなら修学旅行から帰って来なさそうで不安だわぁ〜」
「俺ら一般人だから、出来るなら残りたいけど・・・」
「こわいわぁ〜」
「やかましい」
母親との会話は基本こんな感じだ。
適当な物言いになるのは、家族だからだ。
なんだかんだで、信頼してるということなのだろうか。
すると玄関の方から
「ただいまー」
「たっだいまー!」
という声が聴こえてきた。
俺には兄弟がいて、弟と妹がいる。
弟の名前は瑠可で、妹の名前は聖である。
どっちが男でどっちが女かわからん名前だな。
「お、おかえりー」
「あ、お兄ちゃん帰ってきてたんだ」
「お兄ちゃん!おかえり!」
「ただいまな」
現在中学2年生で、去年までは着せられている感があった制服が、今はきちんと着こなしている。
弟は冷静沈着なイメージがあるが、妹は活発なアホという真逆な性格である。
さっきの会話でもわかるとは思うのだが・・・。
にしても双子というのはこんなに仲いいものなのだろうか・・・いつも一緒にいるのだが。
「お兄ちゃん何ニヤけてんの?キモイよ」
「お兄ちゃんキモイの!?ねえねえ!」
「あのなぁ、お前ら」
「こら、気持ち悪いのは元からよ。やめなさい」
「真剣な顔で言わないでくれる!?あんたの子なんだけど!?」
発言的に弟達の将来が不安になる今日この頃だが、親の発言とは思えない発言に不安になる。
「仕方ないだろ、修学旅行だぞ?楽しみに決まってる」
「あー、お兄ちゃんペウラオタクだもんね」
「いいなーいいなー!聖も行きたい!」
「オタクじゃねえよ、聖はもう少しの我慢な」
「うん!」
弟は何でこんな感じに育ったかなぁ、一体誰に似たんだ。
妹よ、お前は少し大人っぽさと言うものをだな。
家族と一通り話したり飯を食ったりなんやかんやして、部屋に戻る。
「はぁー、疲れたぁー!」
ドサッとベットに飛び込む。
「楽しみだなぁ・・・」
気づけばそう呟いていた。
「よし、今からでも一応準備するか」
希里はそういいながら、準備へと取り掛かった。
ジリリリリジリリリリと騒々しい音を鳴らしてるのは、朝7時にセットしてある目覚まし時計だ。
「ほぁ〜、朝かぁ・・・」
大きなあくびと共に希里は目を覚ます。
修学旅行がまたひとつ近づいたと思えば、対して悪くは無い朝だ。
何か夢を見ていたような気がするが・・・。
自分の部屋は二階なので、1階の居間へ朝食を食べに行く。
「あ、お兄ちゃんおはよう」
「おはよ〜お兄ちゃん〜。ほぁ〜」
「あら、起きたのね」
父は今出稼ぎで家から離れているためいないが、居間へたどり着くと家族全員が迎えてくれた。
現在の時刻は8時、そろそろ真樹が迎えに来る時間だ。
瑠可と聖は、今さっき
「いってきます」
「いってくるー!」
と出ていった。
全く仲がよろしいことで。
2分が経過すると、ピンポーンという音が聴こえてきた。
「はいはいはーい」
そういいながら玄関のドアを開ける。
「わり、ちょっち遅れた」
「気にすんな、20分あればつくだろうに」
「助かる」
そう、ここから学校まで20分で着くのだが、真樹はきちんと謝った。
地味にイイヤツだよなぁとか思いながら学校へと向かう。
「んじゃ、放課後なー」
「おう」
俺らはそういいながらクラスが別なので別れた。
現在の時刻は8時24分、ちょうどいい時間についたなとひとりでほっとしながら席に着く。
「なぁ、昨日のテレビみた?」
「あれやばいよねー!」
「あとチョイで修学旅行だよねー」
など、学生らしい様々な会話がちらほらと聞こえてくる。
まあ、俺は話す人がいないんだが。
ちょっと羨ましいなぁなんて思いつつ、周囲の会話に耳を傾けてると憧れの存在である人たちの会話が聴こえてきた。
「てかさぁ、知ってる?ペウラの世界にいくと、職業の力を発動できるらしいぜ?」
「ほんとかい?」
「え、なにそれ本当?」
「あぁ」
そういえば紹介してなかったな・・・。
ちょっとチャラっぽい感じの口調なのが、職業が戦士の博側 力翔。
髪の毛はオレンジ色に染められており、ピアスも一つずつつけている。
そんで、ちょっと優男系な口調なのが神沢 勇人。
職業は勇者で、見た目と職業が比例するくらい高スペックな人種だ。女子からも人気が非常に高く、学校で1位2位を争うレベルだ。
そして最後は、ちょっとだけ無愛想な口調の仁田 乃亜。職業は賢者である。
髪の毛は黒髪で、ポニーテールが特徴だ。
それにしてもペウラにいくと、もう能力を発揮できるという情報はしっているが、やはり聞いていて胸が膨らむというものだ。
本当の所は赤ちゃんの頃から使えると言われてるらしい。
こうして心を弾ませていると聴きなれている声だが、あまりにも意外な人物から話しかけられる。
「なぁ、希里・・・だっけか?」
「・・・ん?・・・・・・んっ!?」
そう、博側力翔だ。
余りにも以外過ぎていて、俺に話しかけているとは気づかず、ちょっとスルー気味になったくらいだ。
「あ、ああ、あぁ。そ、そうだけど」
やばい!ちょっとテンパっちゃった・・・!
と焦るのもつかの間、すぐに博側から問いかけられる。
「俺らさ、よくペウラの事わからないんだよね。そんで聞きたいことがあるんだけどさ、ちょっといいかな?」
「・・・?な、なんで俺がペウラのこと詳しいの知ってるんですか?」
「敬語なんていいわよ、あとまだ私達一般人なんだからテンパらなくてもいいわ」
「驚かせちゃったかな?ごめんよ」
ん!?なんだなんだ!?憧れの存在の人達が一気に話しかけてきたぞ!?俺、死ぬのかな?
なんて緊張に緊張を重ねていたら、とある人物の名前が出てきた。
「んでんで、確か教えてくれたのは真樹だぜ?」
あんの、真樹めぇ・・・。
今回は許してやろう。
「そうですね、ある程度はペウラの事については知ってるほうだと」
「敬語」
「あ、すいません!」
「はぁ・・・」
これが一般人と職業決められた人の差なんだろうか?
敬語を使うつもりがないのに、勝手に敬語を使ってしまう・・・。
カリスマ性というやつなのだろうか
「こほん、わかった。なら、敬語はなしにしよう」
ちょっと心拍数があがる。
この話し方は、やけに緊張するなぁと思いながら話を続ける。
「おっけーおっけー!んで、その聞きたい事ってのは修学旅行に行ったらの話なんだが」
「能力使えるか?の話だよね?実はさっき聞こえたんだ。」
「話が早くて助かるわ」
「ありがとうと言えばいいのかな?それで、能力の話なんだけど、この件についてはペウラに行った時点で能力は発揮できるかな。正しくは、そのペウラに行くゲートを渡った瞬間からだ」
博側や仁田は「へー」や「ふーん」など返事をしてくれるものの、勇者こと神沢は全く反応がなく、気に食わないのかなと思ったがきちんと所々頷いてくれていた。
「実は赤ちゃんがをそのゲートにつれて行ったときの実験例があって・・・」
「皆ー、席につけー」
話してる途中に先生がガラガラと扉を開けてやってきた。
どうやら8時半になったらしい。
「あ、時間・・・きちゃったね」
「わり、後で頼むわ」
「また後で」
等と3人はそれぞれの言葉を残し、先生の声と共に自分のあるべき席へと戻った。
「起立、礼」
「「おはようございます」」
「着席」
ここまでがテンプレと言わんばかりの一連の動作を、クラス全体できっちりとこなす。
そして朝の会、SHRをし、5分間の休憩タイムを得る。
1時間目の道具を準備するためだ。
「あぁ、だりい」
「眠いよぉ〜」
などと、授業を受けたくない生徒の心の声がこの時間にはどっと出る。
そして5分が過ぎると、ガラガラガラと扉を開けて担任の先生がやってくる。
1時間目は修学旅行の班決めをするため、LHRといった時間になった。
実際は1時間目から三時間目までなのだが。
「んじゃ、班は最低4人最高で6人だ。このクラスは36人いるため、最低班数は8班までだ。」
その言葉に生徒からの批判が生じる
「えぇ!6人までぇ?少なくない?」
「そうだそうだー!」
それに対し先生は冷静に
「決まりは決まりだ」
と告げる。
修学旅行の班を決めるのは相当難しいことである。
クラス内で勿論グループは複数あるし、全員が仲良しって訳では無い。
常に3人グループな人達もいれば、常に7人グループの人達だっている。
そこで起きるのが喧嘩や仲間割れなどといった、後にイジメに発展するであろう行動や言動だ。
ほとんどの人と仲が良ければいいのだが、女子等は特にそういうのはきついだろう。
実際、中学の時にそれで泣いた女子がいた。
仲間はずれってこわい。
さて、俺はどうしようかなーなんて思ってると、元々1人行動をするソロプレイヤーだったと言うのを思い出した。
特別仲がいいと言うのはこのクラスにいないし、まず会話を交えない。
こういう時に使う必殺技などきちんと用意してある。
名付けて゛先生に声をかけられるまで待つ゛だっ!
先生に気づかれるのを待ちながら、机の上で伏せ寝をしていると思いもよらない声がかけられた。
「なぁ、俺ら3人で1人足りないんだけど、一緒の班になんね?」
突如予想外の人から声をかけられびっくりする希里。
声の主は博側だ。
一体今日はなんなんだ?などと思いつつ、5分の恐怖と5分の好奇心で返事を返す。
「え、あぁ。お、俺でよければ。でもどうして?」
ついつい気になってたことを言ってしまう。
一瞬めんどくさがられて嫌われるかなと言う思考がよぎるが、言ってしまったためもう遅い。
「なんでって、さっき話したしぺウラのこといろいろ良く知ってるし、そもそも友達になったろ?」
「・・・え?」
人間友好関係ってそういうものなのか?
これって所謂、コミュニケーション能力の差ってやつか?
意外すぎる、だけども少し嬉しいその言葉に困惑していると、女性の声が自然と耳に入ってきた。
「ごめんね、力翔って結構軽いのよ、ノリが。だけどね、気に入った人しか友達と認めないから仲良くしてやって欲しいなぁ。勿論私や神沢とね?」
「軽いって酷いなぁ」
「ふふっ」
ふたりの笑みを見て、ついつい俺自身も頬を緩ませてしまう。
「そっかぁ、友達かぁ」
そう心の中で呟いた時、まるでその声が聞こえたかのようにまた違う声が聞こえてきた。
「そう、今日から君・・・希里は俺達の友達だ。よろしくたのむ」
その声の方を見上げると、声の正体は神沢だった。
そして右手を希里に差し出し微笑んでいる。
握手を求めているということなのだろうか?
そう思い、とっさにズボンで手汗を吹いてから握手を交わす。
「手汗なんて別にいいのに」
「ははっ・・・。始まりは手汗から、なんて嫌だろう?」
「むっ、それは確かにだな。」
その言葉にふたりは笑みを零す。
そうしてると、まるで駄々をこねた子供のような口調で、少し羨ましそうな言葉を放つ者がいた。
「ちょっと何そこで仲良くなってんのぉー、俺だってまだなんですけどぉ!」
博側の地団駄で、また決まった班全体に笑みが零れた。
「あぁ、いいもんだな」
と思いながらも神沢と俺とで、拗ねた博側に許してもらおうとひたすら誤ったのであった。
現在は三時間目の始まってすぐである。
この時間で今日の修学旅行の班決めやらなんやらは終わるため、どこの班もリーダーは誰かとか出席とる人は誰がやるとかで話し合っている。
俺達はもう決め終わっているため、実習というか休憩時間に近い形になっていた。
リーダーは勿論神沢、副リーダーは仁田、出席とる係は博側で、俺は書記の様な形になった。
「そういえばさ、希里まだ話の途中だったよな」
と博側が告げる。
俺は思い出せないため
「ん?なんだっけ」
と言ったが、それに反応して神沢と仁田も話に加わる
「あー、赤ちゃんがなんちゃらかんちゃらのやつだったか?」
「そうそう、私続き気になるのよね」
あー、そういえば朝そんなこと話してたな。
あれで終わりだと思ってたから、今まで素で忘れてたよ。
「そういえば途中だったね。実はそのゲートに連れ行った赤ちゃんは、ゲートを通ってぺウラについた瞬間、本能的って言った方がいいのかな?自然的にかもしれないが能力を発動したって話しさ」
「へぇ、んじゃ俺らもぺウラに行ったらなにか急に発動するかもしれないのか」
「発動させるって意思がない限りは大丈夫だと思うよ。今までの修学旅行で、僕らの年代が勝手に能力が発動した例は未だにないんだ」
「ただ、むやみにに発動させようとするなって事だな」
「そうだね、赤ちゃんの場合は無意識でそうなったと言われているからね」
「職業決定者・・・私達もそうだけど、赤ちゃんってすごいのね・・・」
こういう話やら昨日の出来事の話、面白エピソードなどで三時間目の残りの時間はまるで時計を誰が弄ったのではないかと思うくらい早く終わってしまった。
4時間目が終わり、昼休みを挟んで5~6時間目も終わらせ、今日は彼ら職業決定者と共に過ごした。
彼等は彼等なりの悩みがあったり、俺が羨ましがったりなど、話を沢山してみてわかったことなども多かった。
とても楽しく、時間の進むスピードがまるで5倍位なんじゃないか?と疑問を持つくらいあっという間に今日の学校は終了した。
いつものように校門へ向かい、真樹が来るのを待つ。
今の気温は春らしくぽかぽかするような天気で、時々散る桜が春だなぁと強く思わせる。
春の若草の香りが東から吹くそよ風に乗って来て、鼻が少しばかりこそばゆい。
この感覚もまた春の楽しみだと、少しばかり気分が高揚する。
生徒達の足音や声にまぎれ、一際聞きなれた声が耳に入ってくる。
「お、ちょっち気分よさげだな。何かあったのか?」
「まあ、ちょっといろいろあってね。てかお前なんで俺がぺウラオタって事教えたんだよ、焦ったわ」
「まあ、いいじゃねえか。気分いいって事はそれが幸に転がったって事だろ?いいじゃねえか」
「まあ、いいけどさ」
2人は学校を後にし、のんびりと校門から歩き始める。
「んじゃ」
「おう」
その言葉を合図に、お互いがまたいつものように別れる。
「ただいまー」
そしてこれもいつものように帰ってきた挨拶を言う。
新しい友達もできて充実した日々が過ぎていき、とうとう今日は修学旅行当日の日となった。
「おっくれるうううう!」
「おい、早く走れ早く!!」
何があったか、それは少し遡ること20分前の事である。
チリリリーン、チリリリーン
騒々しい音が耳に入り、気持ちよかった睡眠がその音で途切れてしまう。
「ったくうるせぇな・・・何時だと思って・・・っ!?!?」
時計を見てここで焦ってはいけないと、おおきく一息吸い目を瞑る
「寝坊したぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」