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父の操る機動兵装に抱えられ、炎に飾られた街頭を進む。父を挟むように、二人の機動兵装が守ってくれていた。彼らの機動兵装もまた紫色だった。
隣を走る母の顔には、大きな青痣が浮かんでいる。先程、あの機動兵装達から受けた怪我だ。心配して声をかけるが、母は笑顔を見せて、自分が元気であると言った。
街の中心から離れるにつれ、炎に包まれた建物は少なくなった。どこからか聞こえて来る轟音も小さくなる。
こんな状況でも、周囲を冷静に見渡せる自分が恐ろしくもあった。頭の中で、何かが狂い始めている…
段々と、逃げてきた人々の姿が増えて来た。彼らは助けてくれと、囲むようにして群がる。助けを求める人々の視線に混じって、睨まれているのを感じた。最近、学校で感じたものと
同じ…
どうしてそんな外国人を助けるんだ…
誰の口から発せられた言葉かは、分からなかった。しかし、言葉はナイフのように胸を突き刺し、抉るようにして心に穴を開けた。言葉にならない感情が、喉に込み上げ、呼吸を乱す。視界が溜まる涙で、大きく歪んだ。
今、誰が言った!
怒鳴り声が響き渡る。それが父の声だと気が付くのに、しばらく時間を要した。
騒がしかった人々の間に静けさが訪れる。皆が足を止めた。
仲間が肩に手を置いたことで、父は我に返った。済まない、と一言だけ呟くと、止まっていた足を再び動かす。
再び歩き出してから、いくつかの直線と曲がり角を越えると、そこには十台近いバスが停まっていた。
バスが見えた瞬間、周りに付いて来た人々は我先にと走り始めた。誰かが転んでも気にすることなく、他の人を突き飛ばして、バスの入り口へと群がる。行列など出来なかった。
地面に下ろしてもらうと、バスに群がる集団から少し離れた場所で混乱を避ける。父は私の頭に手を乗せると、優しく髪を撫でた。
バスに乗って、安全な場所まで逃げるんだぞ…
その声はいつもの優しい父の声だった。
お父さんも一緒に逃げようよ、と言うが、父は首を横に振る。
バスの入り口が空いたところで、母と一緒に乗車する。乗車してから席に座るまで、父はずっと見守っていてくれた。
大丈夫だからね…
母の言葉に頷く。
直後、前に停まっていたバスに何かが突き刺さり、爆発した。
押し寄せた爆煙に、ガラス越しに立っていた父の姿が隠れる。
何が起こったのか分からず、立ち上がる。
ひび割れたバスのフロントガラスの向こうで、爆発したバスが炎上しているのが見えた。次いで、もう一度爆発が起こる。破片がフロントガラスを突き刺さり、バスの中はパニック状態になった。
晴れた煙の中、炎よりも紅く、物語に出てくるような騎士の鎧を目にした。




