一興
人間は毎日、何処に向かって歩いているのか。
此の道を行く者は皆一様に、難しい顔をしたまま、此方を一瞥もせず早足で去ってゆく。
きっと、私が此処に居ることさえ気付いていないのだろう。
人間は一体、何時休息という時間を取るのか。
此の道を帰る者は皆一様に、酷く疲れた顔のまま、此方を一見もせず遅足で去ってゆく。
きっと、私が此処に居ることなど考えてすらないのだろう。
人間は何故、時に晴れ間が出たように嬉々とするのか。
昨日までの草臥れた顔が、何故今日は違うのだろう。
不可解だ。
おや、今日は私に目を向けて寄ってくるのか。
不思議なものだ。
けれど、遣られた鰹節に、また人間を眺めてみようかと思う。
今日も私は、此の道に居る。