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イベント物短編

プロポーズ

作者: 麻沙綺

大晦日。

今日は、彼が久し振りに帰ってくる。

私は、精一杯のお洒落をして、駅の改札口で彼を待っていた。

時刻は午後六時。

カウントダウンを二人で過ごそうと約束していた。


「もう、そろそろかな」

って、口をついて出てきた。

あっ。

来た。

私は、嬉しくて笑顔がこぼれた。

…が、彼の横には見知らぬ女性。

まさか…。

そういえば、この間話してた時に“会ってほしい人が居る“って言ってた。

もしかして、彼女が…。

彼女が、彼が言ってた会わせたい人だとしたら、私用なしだよね。

やだ。

今、会いたくない。

私は、その場から逃げ出し、カウントダウン会場に一人赴いた。



会場内は、カップルばかりだ。

ハァー。

本当は、私も彼と二人で楽しむはずだったのになぁ…。

当てもなく、ブラブラ歩く。

可愛い小物を見つけて。

「薫、これ…」

って言いかけて、留まる。

そうだ、今は、一人だったんだ。

何だか虚しくなる。

「彼女。一人なら、一緒に…」

「間に合ってます」

声かけられても直ぐに断った。



ハァー。

どうしようかなぁ…。

そうこうしているうちに。

『今年も残すところ、後わずかになりました』

と、ステージから声が聞こえてきた。

そっか、もうそんな時間か…。

『皆さん、一緒にカウントダウンしましょう』

電光掲示板に秒数が示される。

『10,9,8,……3,2,1。ハッピーニューイヤー!』

ステージ上からマイクを通して聞こえてくる。

周りは、楽しそうに笑ってる。

私は、一人落ち込んでいた。

場違いに思いその場を後にした。



ハァー。

自分のアパートの階段を昇っていく。

部屋の前に人影があった。

その人と目が合うと、私は踵を返し、逃げた。



今、会いたくない。

「由美ー!」

彼が追いかけてくる。

「由美、待てって!」

「嫌だ!!」

「由美!」

彼に追い付かれて、腕を掴まれた。

「離して!」

「離すわけないだろ。また逃げるに決まってる」

「だって、薫。私以外の人と結婚するんでしょ?」

私は思ってた事を口にする。

その言葉に薫は、驚いた顔をする。

「誰が?」

「薫が…」

「何それ。俺そんな事、由美に話したか?」

「だって…、さっき、綺麗な人と一緒に居たじゃんか。だから、私と別れて彼女と…」

私の言葉に薫が呆れてる。

「由美は、なんでそんな早とちりなんだよ。彼女は、兄貴の嫁さん。偶然会っただけ」

薫が、苦笑してる。

「だって、楽しそうに話してたし…。私、てっきり彼女と結婚するから、別れてくれって言われるんだと…」

私は、恥ずかしくて俯くと。

「…っとに。俺は、由美以外に結婚したいとは思ってないよ」

薫が、真剣みのある声で言う。

エッ…。

今、何て言ったの?

私は、顔をあげて薫を見上げる。

「由美、俺と結婚してください」

薫が、私の目を見つめて言う。

私は、嬉しさが込み上げてきて、何も言えなくなる。

「由美、返事は?」

「…はい…」

消え入りそうな声でそう答える。

嬉しくて、涙がポロポロこぼれ落ちる。

そんな私を薫が抱き締めてくれた。


私が落ち着きを取り戻した頃。

「由美、これ」

思い出したようにポケットから小さな小箱を取り出した。

「開けてみな」

私は言われた通りに蓋を開ける。

中には、私が前から言っていた婚約指輪が…。

「うそ…」

「嘘じゃないよ。前から言ってただろ。婚約指輪はこれがいいって…」

「覚えて…てくれたんだ」

「当たり前だろ。由美が欲しいって言ってたのちゃんと覚えてる」

って、笑顔で言う。

「…薫、ありがとう」

私は、薫に抱きついた。

「ちょ…由美。指輪これつけさせて」

薫に言われて、左手を彼に差し出す。

彼は、指輪を手にして、薬指に嵌める。

感極まって、また涙が…。

「由美、絶対幸せにするから…」

「うん」

その言葉を信じて、笑顔を見せたのだった。


婚約指輪うぬんは、ご自分が欲しい指輪を想像してください。

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