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母様とローレンス先生が部屋を出て行ってからも、ボクは興奮していた。
「お嬢様、よかったですね。そんなに、嬉しそうなお嬢様を見ていると、私も嬉しくなります。」
そう言われてボクは少し恥ずかしくなった。
「そんなにボクって分かりやすい?」
「はい。とても嬉しそうで、早く魔法を使ってみたくてうずうずしていらっしゃるのがとてもよく伝わってきます。」
カルラは少し笑いながら言った。そんなに、分かりやすかったのか…。ちょっとどころかだいぶ恥ずかしい。
「そっか…。恥ずかしいな。でも、魔法は学校に行かないと使えるようにはならないんだよね?」
「はい。学校以外での魔法の教育は禁止されていますので。」
「なら、早くちゃんと自分で歩けるようにならないとね!」
「そうですね。私も精一杯お手伝いさせていただきます。」
しばらくして。父様と母様が部屋にやって来た。
「サラ、ローレンス君から聞いたよ。魔力を測ったんだって?記憶をなくしてしまっても、サラの魔法好きは変わらないんだね。」
父様は嬉しそうに言った。
「そうね。病気で倒れて、目を覚まさなくなってしまった時はどうなることかと思っていたけれど。本当によかったわ。」
母様も嬉しそうだった。
「はい。ありがとうございます。早く学校に行きたいです。」
そういうと、2人は驚いた顔をして顔を見合わせて笑い始めた。
「ボクは何か変なことを言いましたか?」
不思議に思ってボクは聞いた。
「いや。何も変なことは言っていないよ。ただ、その早く学校へ行きたいという言い方が小さい頃と全く変わっていなかったから、おかしくなってしまって。」
「ええ。笑ってしまって、ごめんなさいね。」
「それに、学校へは10歳にならないと行けないよ。もう、お昼時だし、ご飯を食べながら学校の話をしてあげるよ。」
父様と母様に昼食を食べながら話を聞いた後、カルラは話があると呼ばれていった。1人になって、学校の話を思い出す。
学校はこの国では誰もが行くことを義務づけられているそうだ。魔力の制御を魔力量が多い少ないに関わらず学ばないと危険だから、だそうだ。学校に入る前に簡単な試験があるらしい。それは、魔力量と知識量に合わせて学校が分けるための試験。魔力が多い子と少ない子を一緒に教えても、意味はない。知識はやっぱり家が裕福だと家庭教師がついていたりして、魔法以外の知識を学んでいる子と、家庭教師を雇う余裕のない家の子に同じ授業を受けさせるわけにもいかない。学校によって通う年数が変わるそうだ。ちなみに兄様はもともとの魔力量も知識量も高い人たちが集まる学校に行っているらしい。ボクが学校に通えるようになるのは、2年後。それまでに、体力をつけてちゃんと自分で歩けるようにして、勉強もしておかなくちゃいけない。これから、やることはたくさんだ。頑張ろう。まずは、自分で歩けるようになることと、この国の文字を覚えることからだ。
この章はこれでおしまいです。
次からは、2年後学校に通い始めます。