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目を閉じてしばらくすると、手の中の水晶玉が温かくなってきた。水晶玉に自分の中にある力を流し込むイメージとローレンス先生は言っていたけど、それは水晶玉に力を吸い取られるみたいな感じだった。
「サラ様、もう大丈夫です。水晶玉から手を離してください。」
ローレンス先生の声が聞こえてボクは目を開けた。
「どうでしたか?」
ボクは少し早口になって聞いた。先生はにっこりと笑って
「サラ様には、魔法を問題なく使える魔力がございましたよ。今はこれ以上のことは魔法の制約でお伝えすることが、できないのですが…。」
それを聞いてボクはほっとした。せっかく魔法がある世界にいるのに、魔法が使えないなんて耐えられない。
「いえ。ありがとうございます。あれ?母様、どうかされたのですか?カルラも。」
先生にお礼を伝えた後、母様とカルラが少し驚いたような顔をして、固まっているのに気づいた。
「え、ええ。大丈夫よ。サラにもちゃんと魔力があって安心したら、気が抜けちゃって少しぼーっとしてしまったわ。」
母様がそういうとカルラもそれに同意した。
「それでは、私はそろそろ失礼します。帰る前にテイナー様とマラ様にお話があるのですが、大丈夫ですか?」
ローレンス先生が言った。
「もちろんよ。今、テイナーは執務室にいるわ。行きましょう。サラ、また後でね。カルラ頼んだわよ。」
「サラ様では、また。失礼します。」
母様とローレンス先生は部屋を出て行った。
私はマラ様とテイナー様の執務室を訪れた。マラ様がドアをノックをして開けた。
「ああ。マラとローレンス君か。どうかしたのかい?今ちょうど、午前の分の仕事が終わったところなんだ。」
テイナー様がイスから立ち上がりながら、言った。
「ローレンス君が私たちに話があるらしいわ。」
「そうか。じゃあ、ここでもいいかい?」
そう言ってテイナー様はソファーを指差した。
「もちろんです。サラ様のことでお話があります。」
私は座りながら話を始めた。
「わかった。」
テイナー様は少し緊張した顔でうなずいた。
「サラ様は少し筋力が落ちている意外今、特に状態に問題はありません。」
そういうと、テイナー様はほっとした顔をされた。
「先ほど、サラ様に頼まれてサラ様の魔力の測定をしました。その測定結果なのですが、とても驚きました。サラ様は魔力自体はティトス様より少し少ないくらいです。しかし、サラ様の第一適正属性は光でした。」
テイナー様は驚きながらも口を開いた。
「光?光属性は存在は確認されているが、誰も使えない属性だろう?それに、伝承が…。」
「本当よ。あなた。私もカルラも見たわ。」
マラ様も肯定された。
「なんてこった。あの伝承がサラかもしれないなんて…。」
「私も水晶玉に現れた属性にとても驚きました。光属性は適正を持っていても、適正が弱すぎて使えない人しかいない属性。それが、サラ様は第一適正。伝承が有名であり、最近はただのおとぎ話のような扱いになっています。が、この国では伝承にあるような異変がおき始めています。そんな中現れた光属性を持つサラ様の存在は混乱を起こすかもしれません。」
私がそういうと、テイナー様とマラ様はそろってうなずき心配そうな顔をされた。
「そうだな。今のこの国におき始めている異変はそのうち世界に広まるだろう。その伝承の中に出てくるサラの力は今は知られるわけにはいかないだろう。このことを知っているのはあとカルラだけかい?」
「ええ。カルラだけよ。」
「そうか。なら、このことは今知っている者たちだけの秘密にしておこう。時がくるまでは。ティトスにもだな。」
「かしこまりました。私は命に代えてもこの秘密を守ります。」
私は、魔法による誓約の動作をしながら誓う。
「私も誓おう。」
「私も誓うわ。」
テイナー様とマラ様も誓約の動作をしながら誓う。
「あとで、カルラには私から話しておくわ。」
「わかった。ローレンス君、今日はありがとう。これからも、サラのことを頼んだよ。」
「はい。もちろんです。それでは、今日はこれで失礼いたします。」