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再び目が覚めると、さっきの天井があった。まだ夢から覚めていないのかと思い、頬をつねってみた。痛い。すごい痛い。ゆめじゃないの?また状況がわからなくなって混乱する。さっきから混乱しっぱなしな自分にイラつく。色々と考えているうちに神の使いとか名乗っていた人が言っていたことを思い出した。あの人はたしか「貴女にはこれから『サラティナ』として生きていただきます。」とか言っていたような気がする。まさか、これは異世界転生とかいうものなんだろうか?いや、あり得ない。でも、それ以外考えられないし…。そんな事を考えているうちに誰かがドアをノックする音が聞こえ、入ってきた。
「ああ、本当だ!」
「だから、言っただろう。サラティナが目を覚ましたと。サラ、この人は医者のローレンス君だよ。」
医者らしい人と、『お父様』だった。
「サラティナ様ご気分はいかがですか?」
ローレンスが聞いてきた。
「問題ありません。」
ボクはそれだけ答えた。
「それは、よかった。」
とお父様。その後、診察をされ、色々と質問をされたけれど、ボクにはまったくわからないことだった。
「テイナー侯爵様。サラティナ様は、先程も申し上げた通り目が覚めたのが奇跡です。幸い後遺症もなさそうです。ただ…。」
途中でローレンスは言いづらそうに口ごもった。
「どうしたのだ?重要な事なのだろう?遠慮せずに言ってくれ。」
「はい…。サラティナ様は、病で倒れられる前の記憶が全くないようです。まだ小さかった頃だからかもしれませんが…。ですが、毎日テイナー様、マラ様、ティトス様、そしてお屋敷の方々かわ話しかけられていたからか、言語や精神の成長はされていらっしゃるようです。それからー」
ボクはその先を聞くことはできなかった。なぜならば、何か不思議な力のようなものに意識を引っ張られているような感じになったからだ。
再び、暗闇の中。そこには神の使いがいた。ものすごく申し訳なさそうな顔をして…。