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「ここはどこだろう?」
目が覚めて最初に視界に入ってきたのは、見覚えの無い天井だった。状況が把握できないでいるうちにドアの開く音が聞こえて誰かが部屋に入って来て、近づいて来る。
顔を向けると、
「お目覚めになられたのですか、お嬢様!」
と叫び大慌てで誰かを大声で呼びながらどこかへ走って行ってしまった。さらに困惑してうちにまた誰かが部屋に入って来た。
メイド服を着た年配の女性と、中世ヨーロッパの貴族みたいなキラキラした服を着た男女だった。3人はボクの寝ているベッドの近くにきた。
「目が覚めたのね、本当によかった…。」
と目に涙を溜めながらドレスを着た女性が言った。
「だれ?」
とボクが尋ねると、
「私は貴女の母親よ。彼は貴女のお父様。それと、メイドのカルラよ。貴女は3歳の時に病気で倒れてから5年間ずっと眠っていたのよ。サラティナ。」
説明する女性と頷く男性とメイドは皆優しい微笑みを浮かべながらボクを見ている。
「え?」
ボクが驚いていると、男性が
「サラティナは目覚めたばかりで混乱しているようだね。少し1人にしてあげよう。医者を呼びにいかせたから、その準備をしなくては。」
と言って他の2人を促して出て行った。
1人になって少し冷静になり、状況を整理してみた。ボクは『サラティナ』という名で、5年間意識がなかったらしい。でも、ボクは『田山弥生』という名で現在16歳だったはずだ。『サラティナ』ではない。整理したら、ますます訳が分からなくなってしまった。あり得ない。きっと夢なんだ。早く目を覚ましてしまおう。目をつぶって夢の中なのに眠ろうとする。
暗闇の中、突然目の前に人影が現れた。暗闇なのにどうして顔がはっきりとわかるのだろう?凄くきれいな顔をしていて、男なのか女なのかわからない。
「私は神の使いです。始めまして、田山弥生さん。」
とにこやかに挨拶された。
「は?」
反射的にそう返してしまった。すると、
「田山弥生さんですよね?説明が遅れてしまい申し訳ありません。貴女は『田山弥生』としての生活に不服があった。違いますか?」と聞かれた。
「は、はい。確かにありました…。でも、どうして貴方がそんな事を知っているんですか?ボクは一度も不平を誰かに言った覚えない。」
眉をひそめながら言った。
「貴女先程願いましたよね。『こんな生活から抜け出したい。誰か違う人間になってもっと自由に生きたい。』と。その願いを我が主である神が聞き入れたのです。なので、貴女にはこれから『サラティナ』として生きていただきます。」
「え?どういう事?」
「言葉の通りです。もう時間です。よい人生を!」
と笑顔で神の使いと名乗る人物は言い暗闇に消えた。
初投稿です。
今、受験生で息抜きに書いてみたので、更新は凄く不定期になります。
誤字脱字あったら、教えて頂けると嬉しいです。