初戦闘とチートと35キャノン
さて、魔獣とは出会うことなく砂漠を抜けて現在地は荒野と言えるような荒れた場所にアスファルトのようなもので整えられた道を移動中である。
先程の砂漠では道は整えられてなかったのだがこの辺りは道があるらしい。
しかし、眠いな。アイが魔獣に備えろとかいうから一睡もせずに出雲のコックピットで待機していたんだが・・・
「アイ。目的地まで後どれくらいだ?」
『目的地であるルグルム王国レドム伯爵領。シエルナの町まであと2時間です』
「・・・少し休むから30分前に起こしてくれ」
『了解』
・・・・・・この世界に来て一日がたったけどこの先、生き残る為には色々と考えないといけないな。
この世界は現代日本のような世界じゃない。武器があって戦うためのロボットがある。つまり他人の命を奪う必要があるというわけだ。
その時に俺は人を撃てるのだろうか?命を奪えるのだろうか。
そして、4年後にあるゲーム化されたこの世界に来るであろう人達。
混乱は間違いなく起きる。そして、この世界に来た人達の内何人が正気でいられるだろうか?
俺の場合は命を失って転生したがその人達はただゲームをしていただけだ。
「・・・・・・やめだ。難しいことを考えてもどうにもならないし、寝不足で考えが悪い方に流れてるしな」
俺は考えることを止めて眠気に逆らわないで身をまかせた。
ーーーー!!ーーーーー!!ーーーー!!
鳴り響くアラート音で目が覚める。
「っ!アイ」
『現在、本トレーラの前方15km先に接近してくる熱源を多数確認。こちらはまだ発見されてません』
「敵か?」
『不明』
「不明?機体にエンブレムはついてないのか?」
『肯定』
エンブレムはこの世界で所属を表すマークみたいなものらしい。それがない機体。つまり所属が不明。可能性として一番あるのは・・・盗賊か?
「アイ。接近中の熱源が盗賊の場合の対象方法は?」
『トレーラを退避させ機甲人による接触を』
なるほど・・・それがベストか・・・
「トレーラの操作はアイに任せる。俺はこのまま出撃する」
『了解』
トレーラが停止してコンテナハンガーが開いて機体を固定していたハンガーが動き、仰向けになっていた機体を立ち上がらせる。
『ハンガーの固定を解除。発進可能です』
「出雲。出撃する」
前進するイメージを思い浮かべてフットペダルと推進噴射機関に火を入れてホバー移動で熱源にむかって移動する。
時速は150kmと表示されているがGは全く感じないところを見るとやっぱりファンタジーだな。
『あと40秒で35(スリー・ファイブ)キャノンの射程圏内に入ります』
出雲の最大武装である背中に装備されている折り畳み式のライフル。180口径対城塞破壊用狙撃砲 35キャノン。格納時は全長6m。ライフルの展開時の全長は13m。最大有効射程は33333m。まさしく規格外武装だ。まあ、使用中の移動は不可能という欠陥や色々と問題があるんだがそのデメリットが霞むくらいの威力と有効射程距離がある。つまり、敵が発見できない位置からの超長距離狙撃が可能なのだ。
まあ、さすがに今は使わないけどな。
『あと20秒で対象の探知圏内並びに魔法通信可能距離になります』
さて、何がでるか・・・
『対象に反応あり、機甲人3機が部隊と分離して高速接近。接近中対象をa01a02a03に設定』
3Dマップに表示されるマーカーの下に設定された名前が表示される。そして、別のウインドには相手の機甲人が写し出されていた。たしかあの機体は出雲を選ぶときにあったな。名前はセリウムスだっけ?見た目は某アニメのド〇+ジ〇みたいな機体だった。
『a01から全包囲魔法通信を受信しました。映像を出します』
スクリーンが表示されてその中には俺の着ているスーツに似たようなものを着たおっさんが映っていた。
『こちらはルグルム王国所属第41期訓練校第三訓練兵部隊の指揮官のカルロスだ。現在、レドム伯爵領全域に戒厳令が出されている。ギルドの傭兵ならば提示ギルド発行の認識番号を提示し、こちらの指示にしたがえ』
ギルド発行の認識番号か・・・
確かにギルドっていう組織はアスルード大陸全土で復旧してる傭兵派遣組織だったけ。
ギルドに登録した傭兵に仕事を紹介する組織だったはずだ。
しかし、戒厳令か・・・オアシスの戦闘といい穏やかじゃあないな。このまま捕まったらめんどくさそうだ。
『停止せよ。我々には任意で攻撃を開始する権利があたえられている』
っと、流石にまずいかな。
「アイ。トレーラを発見されないように迂回して目的地周辺の隠れられる場合はあるか?」
『検索・・・・・・適した土地が一ヵ所あります。』
「ならそこを目的地にして移動開始。出雲は陽動をかける」
『了解。目的地を設定。以降H01として設定しました』
さてと・・・俺は操縦桿を握り直して一息つく。
戦闘開始だ。
操縦桿を操作して機体の右手メインアームのマニピュレーターを操りシールドガトリングに格納してある長刀を抜き、シールドガトリングのセーフティロックを解除する。
右アーム:5m長刀
左アーム:50口径ガトリングシールド残弾5500/5500
スクリーンの右端に機体情報が更新される。それを確認して、俺はブースターを加速させる為にペダルを踏み込む。
「ぐっ・・・」
加速のGがかかり少しきついが一気にa01に接近する。
『くそ』
通信を切られた。まあ、当たり前か。
『4101より各機。所属不明機を撃破する』
「あれ?通信聞こえてる?」
『魔法通信周波を特定しました』
優秀な相棒だな。
シールドガトリングの有効射程距離に入ったのでガトリングを撃つ。
『うわああ。う、撃ってきた!』
『バカ野郎!訓練どうりやれ!』
相手の動きが悪いな。シュミレータの時の仮想敵の方がいい動きをしていたぞ。
そういえば相手は訓練兵だったな。つまり実戦が初めてだからパニックになっているのか。
ならそれを利用させてもらうか。
ガトリングを撃ちながら機体を跳躍させて相手の機体を飛び越えて反転して着地。そして加速して後ろから一番動きの悪いa03に接近する。
『あれ消え?っう、後ろ!』
「遅い」
そのまま接近して長刀で相手の両脚部を切断する。
『うわぁぁああ!』
『02!03は02のカバーだ』
『り、了解!』
流石に隊長は反応が早いな!だけど機体のスペックはこっちの方が上だ。
敵のロックオンを受けている警報が鳴っているが気にせずにa01に接近する。
そして、相手が撃ってくると同時に跳躍して回避して相手の武器にむけてシールドガトリングを撃ち込んで破壊する。そしてそのままa01の前に着地して敵機の腰の辺りを長刀で切る。
『き、教官!』
『にげろ03!貴様のかなう相手ではない!』
残っているa02は照準がでたらめのままライフルを撃ってくるがそんなものが当たるはずがない。
『く、くるなあぁぁぁあ!』
俺は長刀を振るってa02の右肩と右足を切り飛ばしてコックピットあたりを殴る。
『敵機の排除に成功』
アイが報告してくる。それを聞いて俺はようやく一息つく。
正直、機体の性能が凄かったから勝てたみたいなものだ。
『後方の熱源に動きがあり、真っ直ぐこっちにむかってきます』
やれやれ、反省する時間すらないのか。
「距離は?」
『距離は約2569mです』
「接近する熱源の中から指揮官機を特定できる?」
『可能です。少々お待ちください・・・・・特定完了。敵指揮官機をb01に設定』
「35キャノン展開」
『了解』
長刀をシールドに戻しオートで片膝をついて背中のライフルをアームに持たせてライフルを展開して、安定させるための固定脚を広げる。
スクリーンがスコープのような画面に変わる。そして、右手の操縦桿で照準を指揮官機の両足に会わせてトリガーを引く。
放たれた弾丸は指揮官機の両足を吹き飛ばしてさらに地面にクレータを作る。
「すっごい威力だな」
とりあえずこれで指揮官機は倒せたかから他の機体は混乱しているな・・・
まあ35キャノンも試せたし後は一気に中央を突破しますか。
「あ、35キャノンで撃ったやつって死んでないよな」
『生きていますよ』
「あ、そうなの」
『全身打撲と合計38ヵ所骨折してますけど』
「そ、そうか・・・」