人さらいの誓い
王都中央広場。
朝の光が石畳を冷たく照らし、群衆が息を飲んで見守っていた。
スタンリーはリナを背後に庇い、兄王子と真正面から対峙していた。
周囲を王国軍が固く取り囲み、剣の先が朝日に光る。
兄王子が嘲るような笑みを浮かべた。
「人さらいのスタンリー。
怪物が王都へ戻るとは、愚かな。
一人の娘のために、すべてを捨てるか?」
スタンリーの目が、静かに、しかし激しく燃えていた。
記憶は完全に蘇っていた。
すべてを。
罪も、痛みも、愛も。
彼はゆっくりと前に出た。
短剣を握る手が、微かに震える。
「兄上。
俺はすべて思い出した。
俺は人さらいのスタンリーだ。
王国の闇で、何十人も娘をさらった怪物。
血と叫びと罪を背負い、生きてきた。」
広場がざわめき、群衆の視線が集中する。
スタンリーは振り返り、リナの手を強く握った。
彼女の瞳に、すべてを映す。
「だがな……
たった一人の少女だけが、俺の生きる意味だった。
お前だけを守るために、俺は怪物として生き、
怪物としてここに立っている。」
タイトル回収の瞬間。
兄王子が剣を抜き、叫んだ。
「戯言を! 捕らえろ!」
戦いが始まった。
スタンリーの剣が、記憶を失っていた間も守り続けた想いを乗せて舞う。
兵士を次々と倒し、兄王子に迫る。
兄「なぜだ! なぜ一人の娘のためにすべてを捨てる!」
スタンリーの声が、広場全体に響き渡った。
「たった一人の少女の為に。
それだけが、俺の答えだ。
人さらいのスタンリーとして、最後に——守る。」
剣が交錯し、兄王子が倒れる。
スタンリーは傷だらけで、リナを抱き寄せた。
「これで……お前は自由だ。」
リナが泣きながら、彼の胸に顔を埋めた。
「一緒に生きましょう。
怪物でも、人間でも、私はあなたと。」
群衆の視線が変わる。
罵声は消え、静かな驚きだけが残った。
人さらいのスタンリーは、最後に——人間として、立っていた。
二人は、広場を後にした。
森の村へ、静かに歩いていく。
たった一人の少女だけが、スタンリーの生きる意味だった。
そして、それは永遠に変わらない。




