後編
――シグは、ふ、と笑った。
可愛すぎる。
いつもは、オメガと思えないくらい強気だし、元気なのに。
なにあの耳。ぺしょ、て潰れてる。おびえてんのか?
……可愛いな。抱きしめたい。
「オレ、ノヴァのこと、前から」
つい口をついて言いかけたシグに、ノヴァの耳がぴくん、と立った。
びっくりした顔をしている。
「――」
――ヒートの時に言っても駄目だよな。
そこで言葉を切って、ノヴァを見つめた。
「また今度、言うよ」
そう言って、シグはノヴァの近くに立つ。
自分の着ていた制服の上着を脱いで、ぴく、と震えるノヴァの頭に、そっと掛けて、隠した。
「――見ないから。襲わないし。ちゃんと我慢する」
「……っ」
「可愛くてたまんないけど、な?」
綺麗にウィンクされて、ノヴァは、ぽかん、と呆けた後。
「か、かわいくないっ」
噛みつくみたいに言うけれど、上着の下の耳は、ぴょこんと立ち上がってて、ぴくぴく動いてるのが見て取れる。
これは、嬉しそう。てことかな。
シグは、笑いを堪えながら、ノヴァから感じる甘い匂いに苦笑する。
――反則級に、愛おしい。
「いつもそうなるのか? 耳」
「ん……だから、学校は休んでる」
「そっか……もしまた学校で出そうになったら、オレを呼んで? その可愛いの、他の奴には見せたくない」
「え……」
しばらく無言のノヴァは。「うん――分かった」と呟くように答えた。
その時。下からも、ぴょこん。
「ノヴァ、しっぽも、出てる」
「っ……こ、これは……」
ズボンから出てしまったしっぽを隠そうと思うけれど、それもまた今さらで。――ノヴァは上着の中で、また、しゅんとしょげている。
「……ヒートの時、よくでちゃうの。やっぱり、おかしいよね、これ」
しょんぼり言うノヴァ。
シグは、「え?」と声を出して、それからすぐに続けた。
「何で? おかしくないよ。死ぬほど愛しいし、撫でたいし、触りたい」
「……は? ……っっな……なに、いって……」
上着をかぶったまま、シグを見上げるノヴァの顔が、どんどん赤くなっていく。
「――けど今日は、我慢する。そういうのはちゃんとしてから、だよな」
上着越しに、ぽふぽふ、撫でる。すると、耳も尻尾も、再びぴよぴよ元気に揺れ始めた。
「なに? 嬉しいの?」
「ち、ちがうし」
焦って否定するノヴァに、シグはそれ以上は何も言わない。
もう誰もいない校舎。校庭から、部活動の声が遠く響いている。
「ヒートの間って、ずっと出てるのか?」
「ううん。ずっとじゃなくて。ひっこんだり、出たり…………」
「そうなんだ。――つか、ほんと、可愛いな。」
「っ……だから、可愛くないし」
ノヴァはそんな風に強がって言うけれど、さっきまでぺしょっとなってた耳は、ぴょこんとして、ぴくぴく元気だ。
黒い耳は、中側がうすいピンク色。
強がってるのに、どこか甘い。――ノヴァみたいだ。
シグは、顔が綻ぶのが止まらない。
「家まで送ってやるから。耳としっぽ、ひっこんだら帰ろ」
「……うん」
「まあひっこまなかったら、車呼んで送るし。いいよ、ゆっくりひっこめてみて」
めちゃくちゃ優しくシグが言う。
ノヴァは、ドキドキしっぱなし。
まだヒートなりかけとは言っても、フェロモンは少しは感じるだろうし、辛いだろうに、ちゃんと我慢してくれて、優しくしてくれる。
しかも、抑えられなくて出ちゃうのは、みっともないって思ってたのに。……可愛いって言ってくれた。
そういえば、モテるけど、遊んでるって噂はないかも……なんて、ふと気づいたりする。
しばらく経って、耳としっぽがひっこんで、今のうちに帰ろうってことになった。頭にかけてくれていた制服を、シグに差し出す。
「これ、ありがと」
「あぁ」
くす、と笑って、制服を受け取ったシグ。
いい匂いの制服――もうすこし、持っていたかったな、なんて咄嗟に思ったノヴァは、すぐにはっと気づいて、ぷるぷる首を振る。
「いこ、ノヴァ」
そう言われて、静かな廊下を、二人で歩く。
昇降口で靴をはいたところで、シグが手を差し出した。
「ノヴァ、手、つなぐ?」
「な、なんで……や、やだし」
あわてふためきながら拒否るノヴァ。
でも校門を出たところで。
「ちょっとなら繋いでも……いいよ」
そんな言い方に、相好を崩しながらシグが手を出すと、小指を握るノヴァに。
あんまり可愛すぎると襲うぞ、と、シグは心の中で、ため息をついた。
Fin
短編、お付き合いくださり、ありがとうございました♡
長編にするなら、出会いからかな(*´艸`*)
バレそうになるのを隠してあげるシグとか。
「ありがと」てノヴァが言ったら、シグは「オレが絶対見せたくないだけ( ̄ー ̄)ニヤ」とか笑
はっ。長編にするならR18だな…( ´∀` )
ここを見てる18歳未満の方は、長編版は大人になった時に…。
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