[第7記]ずっと前から
「オペ…!オペ…!お願いだ…起きてくれよ…!」
「出血が酷い…一度ボクの呪いで魂を奪う…!」
「いやだ…!死ぬなよぉ…!」
「クソッ…!こんなところでアイツが来るなんてボクも予測がつかなかった…!」
「オペも歯が立たなかった!アタシも…」
「シズさん…!サディさん…!ごめんなさい…!」
「うるさい…!気が散る…!」
「死ぬなオペ…!頼む…!」
炎に包まれ荒れた場所で、オペの頬にシズの汗とサディの涙がポタリと落ちた。するとそこへ何かが現れる。その「何か」はナイフを飛ば
ー1日前
「なぁ、オレらでサディさんたちにプレゼントをあげようと思うんだ。何がいいと思う?」
本部の中庭でしゃがんだ数人の班員が小声で話す。
「あぁ…明日サディさんの誕生日か。」
「『休み』なんてどうだ?」
「休み?物じゃなくてか…」
「薄々気づいてるやつもいるけど、サディさん司令のこと好きだろ?だから俺たちでオペさんとの時間をプレゼントしてやるんだよ」
「いいなそれ。でもデートの場所はどうするんだ?外は政府軍もカメラもある。楽しめないだろ」
「この本部を貸し切り状態にするのはどうだ?」
「いいけど…オレらか危険だって心配すんじゃねぇか?オペとサディは最強だからいいけどよ」
「ふふ…なんと、強力な助っ人を用意したんだ。それがこの方ですっ!じゃーん!シズさん!」
「…サディが喜ぶって聞いたから来たけど、ボク何すればいいの?」
他の班員に合わせてしゃがんだまま話に入る。
「俺たちが他のアジトに移動するときとかの最高戦力係ですよ!『シズが付いてるなら安心だ…サディ、これで何も考えず2人でいられるな…』ってこと!」
オペの声を真似ながら作戦を話す。
「…なるほど。やろう。保護者的な役ね」
「うぉー!シズさんノリ良いー!」
「サディのためなら当然だよ。」
「よし決まりだな。後はメンバー全員にこの事を伝えてまわるだけだ。」
「……………」
オペが向かいの窓からシズを見つける。
「オペ、どうしたんだ?」
「いや…シズが珍しく班員と仲良くしてるなと」
「あ…ほんとだ。なんだろ…」
「っよし…手紙も書いた。」
シズがペンを置き紙を封筒にいれた。
「みんな快諾してくれましたよ。シズさん。」
「あとは明日を迎えるだけだね。楽しみだ」
シズはニコッと笑い、サディの部屋の方を見た。
―サディの誕生日当日
「…なぁ、起きてるか?」
ハンモックを揺らしながら問いかける。
「ん…オペか…なんだ…?」
「朝…下に降りたら手紙があったんだ。サディに」
「見せてみな。えっと…『サディ以外開けるな?』」
サディが封筒を開け、心のなかで読み始める。
「サディ様、誕生日おめでとう。何をあげればいいか考えたんだ。そして『オペとの時間』をプレゼントすることにした。みんな喜んで協力してくれたよ。みんなはボクが責任持って守るから、安心してオペとの親睦を深めてね。シズより」
「…なんて書いてあった?」
「…白紙だった。」
サディは手紙をゆっくりジャケットのポケットにしまった。
「白紙…?」
「シズたちは…別のアジトにいるらしい。」
「なるほど。では迎えにいこう。」
「まっ…待って」
玄関に向かうオペの腕をつかむ。
「今日は……2人で……過ごさねぇ?」
「…………サディ」
「…あっ…いや、やっぱ迎えに行った方がいいな」
「いや…2人で過ごそう」
「ほんと?やったぜ…はは」
サディとオペは少し散歩をし、中庭のベンチに座る。
「見慣れた場所でも散歩すると楽しいもんだな」
「誰もいない本部…最初を思い出すよ」
「オペとアタシだけだったときか?」
「違う…サディもいなかった頃さ。あの時は孤独だったんだ。でもサディがSIMに来てくれてから、俺は何も怖くなくなった。」
「オペ…」
「なんか…恥ずかしいな」
「じゃアタシも話すけどさ…最初にオペが助けてくれたのは…アタシがオペぐらいの歳の時だったじゃん。」
「ああ…俺が16のときだったかな」
「アタシは…産まれた時から保呪者でさ。小さい頃は呪いの制御が出来なかったからずっと心の声が聞こえてたんだけど、そのせいでアタシは人を信じられなくなったんだ。」
「だから成長してからは心を読むのをやめてたんだけど、その結果金に目が眩んだ保呪者狩りに捕まって…売り飛ばされた。で、そこに来て助けてくれたのがオペだったんだよ。」
「政府軍でもないし…簡単だったよ」
「颯爽と現れて次々に賞金稼ぎをノしていく姿が鮮やかでかっこよくて…あの時からずっとアタシはオペのことが…す……す……」
「す?」
「素晴らしい身体能力だなーって思ってよ!!」
「そうか…それは嬉しいな」
「へ…へへ…」
「サディ…前から伝えようと思ったんだが」
「なんだ…?」
「俺はサディと…」
ドカンッ!凄まじい破裂音が鳴る。
バゴン!ドォォォン!
「なんだ…!?」
「「侵入者を検出。侵入者を検出。」」
警報を聞きオペとサディは急いで爆発箇所へ向かう。
「政府軍に見つかったのか…?」
「わからない…」
「…なんだ、2人だけか。反乱軍という情報が入っていたんだがな。」
知らない声が土煙の向こうから聞こえる。