[第6記]会いたかったよサディ様
「…………………」
オペは何も言わない。
「死神の真似事さ!どうだい!?気持ち悪いだろ!?あは…はは…!」
そう叫びかけ、少し涙を浮かべながらシズリィロは俯いた。
「……………」
まだ感情を持ったまま棒立ちしている。
「うんうん。なるほどなぁ〜」
路地裏のパイプに逆さにぶら下がったサディが、目を瞑りゆっくり頷く。
「うわぁ!?誰だい…!」
「いやぁね?なんかアタシ抜きで話し始めるからさ。上から聞いてたんだよ。あ、アタシサディ。この灰色のニャンニャンとは仲間だ。」
「…!?サディ様…!?」
「おっ。覚えててくれた?」
サディがシズリィロに微笑む。
「ん?知り合いなのか?」
オペが不思議そうに首をかしげる。
「ボクが少し昔、政府軍に追いかけられて拘束されてたときにサディ様が助けてくれたんだ…」
「忙しくてSIMには誘えなかったけどね」
「サディ様…夜だったので見えなかったですが、このようなお顔をされていたのですね…美しい…」
「照れるね…じゃあとりあえずSIMのアジト来いよ。隣町だし本部のほう来てもらおうかな」
「いや…ボクは…」
「こないのか?」
「あぁ…うん…じゃあ…」
そうしてオペ、サディは本部の中に入り案内を始めた。しかしシズリィロはあまり乗り気ではない。
「なーシズ、こんな色々あるんだぜ?楽しもうぜ」
サディがシズリィロを覗きこみながら言う。
「シズって…まぁ良いけど…ここにいる人達も可哀想だね。本部っていうことは最重要なんでしょ?そんなとこにボクみたいな気色の悪い死神が入ってさ」
「ははっ、ネガティブワンちゃんめ!じゃあ気持ち悪がられるか確かめに行こうぜ!」
「……うん」
大広間のような場所にSIMのメンバー達を集めると、サディはシズの頭に手を置きながら語り始めた。
「みんな聞いてくれ!今日からSIMに新しいメンバーが入る!魂を操り、普段は不治の病の患者を看取っている最強の保呪者、シズリィロだ!」
「ちょ…!そんな詳しく説明したら嫌われ…!」
数秒の沈黙が流れたあと、メンバー全員が大喜びしてシズの周りに一斉に集まる。
「すげぇ!魂操れるの!?」
「かっけぇ!よろしくな!」
「美人だね〜!お菓子いる?」
「仲良くしようね!シズリィロさん!」
静かに壇上から降りたサディが、壇上のシズに向かってニッと笑う。シズの顔にも笑顔がこぼれた。
サディが大声でメンバーにいう。
「お前らーー!あだ名はシズだぞー!」
「「「シーズ!シーズ!シーズ!」」」
大広間に歓声が湧き起こった。
集会が終わり、メンバーは任務に戻る。
「…シズの戦闘服も作ってもらおうな。要望書いとけよ。衣類作製役に提出するから。」
廊下を歩きながらオペがシズに説明する。
「…ここのひとたちは温かいね。さっきもボクの呪いを気持ち悪がるどころか羨んでくれてた…」
「だろ?」
「まさかサディが反乱軍所属だったなんて…」
「俺も驚いてるよ。知り合いだったなんてな。ところでなんで本人の前だと『様』付けなんだ?」
「…サディは…ボクが昔に会ったとある人に凄く似てるんだよ。その人はもう死んじゃったけどね」
「そうか。」
オペは静かに言った。
「案内ありがとう。あとはボクだけで出来るからオペは戻っていいよ。」
「分かった。おやすみ。」
―翌日
オペが目覚め食堂へ行くと、シズとサディが隣同士の席で朝食を食べていた。
「おはようオペ。戦闘服が出来たよ。」
「おはようオペ!シズのこれ似合ってるよな!」
「ありがとう。」
シズは帽子を被って立ち上がり、回りながら改めて自分の服を見下ろした。
戦闘服は全体的に赤く、軍帽のような帽子には丸い金の紋章がついており、ウィンドブレイカーのような服には右胸にSIMのロゴが付いている。黒に金の装飾が付いたブーツ、茶色いズボンの上からスカートのような布がつけられたような装いだ。腰にはポーチや短剣が見える。
「…似合ってるよ。SIMに入ってくれてありがとう」
「嬉しいよ。」
再び椅子に座り食事を食べ始める。
オペはシズの向かいに座ると、フッと笑った。
「…何」
「シズ、食べカスがついてるぞ」
手を伸ばしシズの頬から食べカスを取る。
「…あのさぁ…キザすぎない?」
「えっそうか?でも気はないから安心しろ」
「本当に…?」
「まぁ可愛いとは思ってるが…」
オペが俯く。チラッと顔を上げるとシズは心底引いたような顔をしている。サディは吹き出しそうになるのをこらえて明後日の方向を向いている。
「オペ…キミ…正気なのかい…?うぇえ…」
シズはオペをジトっとした目で見る。
「くふっ…w」
サディはプルプル震えている。
「…なんかおかしいこと言ったか?女性に可愛いと言うことの何がおかしいんだ…?」
「あー…そうゆうことかい…」
おかずをひとくち口に運ぶ。
「ボク、男だよ」
そう言い放ち、シズはスープを少しすすった。
「…ん??すまない。なんだって?」
オペが腕を組み、シズの方に顔を傾ける。
「アタシは真理の力で知ってた」
サディは笑いながら頷き、シズの背中を叩いた。
「そうか…それは…すまない」
「「あっはははははは!」」
シズとサディは顔を見合わせた後、オペを見て笑う。食堂に笑い声が響き渡った。