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[最終記]日の出のなかで

オペはジャケットから2つの銃を取り出し、片方をロダーの足元へ投げた。ロダーはそれをそっと拾った。

「…そのリボルバー、マルディエの使っていたものか」

ロダーが呟く。オペの顔が驚きに満ちる。


「そうだ。」

オペが銃を下げる。ロダーも同じく銃を下げる。曇った空が少しづつ晴れ、夜と朝の狭間のような均衡した時間は、昇ってくる太陽の光によって傾き始めていた。世界を包む温かい、光が庭を囲む塀の上から少し漏れる。その瞬間、2人はほぼ同時に手が動き、銃を相手に向けた。

バァン!!!!


オペが持った銃の発射口からは硝煙が立ちのぼる。ロダーはニヤリと笑みを浮かべ、膝を立てて崩れ落ちた。オペは銃をしまうと、ロダーに近寄っていく。足音だけが鳴る庭の静寂を、サディの叫び声がきり裂いた。

「オペ!!まだロダーは銃を撃ってない!!!!」

ロダーが銃をサディのほうへ向け発砲する。サディは動くことが出来なかった。オペも振り向き、ただ目で銃弾を追いかけることしかできなかった。


バジュンッッッ!!

銃弾は見事に頭に命中した。しかしそれはサディでもナヴィでもなければ、オペでもない。サディのすぐ後ろでナイフを構えていたカメレオンのような獣人。

ドサッ……


ロダーは座りこみゆっくりと呼吸を整え話しだした。

「彼は…ダズル・ホーマン…。私が強制労働の免除と引き換えに雇った隠密に適した天稟を持った者だ。元々はナヴィ、君が落ちる予定だった場所に配置していた……ゲホッ…」


「…なんで最後に助けてくれたんだ?」


「君たちに気づかされた…。私は…私の我儘で全員を振り回していただけなんだ、とね。忠義を誓ってくれていたイオとエウロパすらも殺し、利用した…指導者失格だよ。」


ロダーはオペを見て、懐かしむように言った。

「…だから、最期くらい良い事をしたかったのだ。我が弟なら…きっと…きっとそうすると思う。」


咳き込みながらロダーは懐からカードのようなものを取り出すと、オペの手のほうへ差し出した。

「…マスターキーだ。この世界を…頼んだ。」

オペが受け取ったカードは陽光が反射し、輝いている。ロダーはもう何も言葉を語らなくなった。



ピピッ…ガチャン…

真っ白な天井と壁に、タイルのような床。そこで1人の獣人がベッドに横たわり寝ていると、扉が開いた。ライトの眩しさに目を擦りながら欠伸をして言う。

「んん…まだ就寝時間のはずじゃ…え?オペ?」


「姉さん、遅くなってごめんね。」

オペは張り詰めたものが解けたように、少し涙声で言った。彼の姉も、目の前の強く成長した弟を見て同じく涙を流すと、2人は強く抱き合った。


その後にオペ達はまず、姉を含めた、天稟をもった一般の者を整備した道から日常へとかえした。そして次にSIMのメンバーを集めると、戦いで敗れていった者を埋葬していった。


それが終わると、サディはメンバーの前に立ち、話す。

「これで全員だな…みんな!聞いてくれ!これでこの長い戦いは終わった。ティザヤッティ…マルディエ………シズリィロ…。もちろん犠牲はそれだけじゃない。お互いの陣営でたくさんの死者が出た。だからこそ、ここから、アタシたちはノンストップで…世界を変えていかないとなんだ。」


皆が神妙な顔つきで彼女の話を聞く。悲しげな表情の者もいれば、プレッシャーで顔が引きつる者もいる。サディは少し息を吸って、パッと明るく笑い言った。

「…でも、今日だけは止まろう!まずは成し得たことを祝わないと、天にいるあいつらも成仏出来ねぇだろ!?」

歓声があがった。オペは心地よさそうに微笑んでサディを見た。サディは皆の顔を見て笑顔を振りまく。



「…あっ、そうだ。思いだした。」

翌日、オペはサディの手を取り家を出た。菓子を持って来てくれていた姉のソメルハックも連れて。飛行機を手配しオペが向かったのは緋鶴にある、何の変哲もない居酒屋。

「大将!!俺だ…!」


繁盛しているカウンターの向こうで酒瓶を拭いていた男は、オペの顔を見るや否や嬉しそうに身を乗り出した。

「おぉー!お前か!ギリギリ3席だけ空いてる!座れ!」

店主は他の客と少し話すと、オペの前に来た。


「ニュースでやってたよ、呪いの取り締まりを辞めて平和維持の組織への加入を促すってヨォ!ほんとに世界さ変えちまったんだなァ…!よくやった兄ちゃん!」

店主がオペの頭をワシワシと撫でる。


「オペ、あんたが変えたの!?はぁ〜凄いじゃん!よく捕まらなかったねぇ…姉として誇らしいよ!」

ソメルハックはオペの肩を叩いた。店主は続けて言う。

「…で、右にいるキツネの姉ちゃんが…サディ?」


「えっ?アタシの名前知ってるの?なんで?」

サディが困惑する。店主はニヤニヤと笑いながら言った。

「いやぁ…お兄ちゃんから話したほうがいいんじゃねぇかぁ〜?な、『俺はサディさんがす』…?」

オペが店主の腕を軽く殴り、お茶を一口飲む。


「…お互い気持ち伝えたから…もう終わってる」

そう言い放ったオペの耳は赤く染まっている。ソメルハックは席を立つとサディに肩を組んで話しかけた。

「なんだー、貴方オペの彼女だったのねぇ〜!サディ、私のことは『ソメルさん』でいいわよ!仲良くしましょ!」



…その後、俺は機械への興味から工業関係の職に就いた。今までは不具合で触れなかった分、たくさん使ってみたい。サディは警察官になった。身体を動かしたいのだとか。

メンバーの奴らも色々な道へ進んでいった。天稟を活かす仕事に就く奴も多かった。ホーネットとトグルの2人は、まだ世界中で殺人以外の犯罪を片っ端からやりまくってるらしい。お尋ね者としてサディの職場の上司も頭を抱えているのだとか。リオネは引き続き郵便配達員。存在を公に出来るようになってから客が増えすぎて大変らしい。ティズの事は伝えられなかった。あまりに残酷だと思ってしまったから…。

そして…ナヴィは旅に出た。連絡もつかないし会ったという話も聞かない。良くない噂が回っているけど、俺はきっと、シズが見たものを見る為に世界を旅しているんだと思う。

…そう思いたい。


世の中はまだ不条理が残っているし、天稟を使って悪さをする者への対策も考えなければいけない。全能統治軍の時代を終わらせて良かったのかと問われると、"はい"とは言えないと思う。それでも俺は生きていかなければ。




俺の選んだ世界を、愛する人は…仲間達は…そしてあいつらは、笑顔で"はい"と言ってくれたのだから。

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