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[第52記]別れ

灰色の霧が全能統治軍本部を凄まじい速度で包んでいく。

「なんだ?この霧は…ロダー、お前がやったのか?」


「いや…これは…恐らく鐚蟒瀲だ…でも、実験段階では黒い霧のはずだったのだが。神に近づいたのかな」

ロダーは手で霧をさわりながら話した。



遠くから本部を見つめる2つの影がいた。電波塔に腰掛けているその影は、足をプラプラと動かしている。

「…保呪者最後の6人だというのに、本当に突入してしまうとは…彼らをつまらないと言ったのは撤回しなければいけない。彼らこそが狂気の翼を持つ者だよ」


「…ハハ…お前も保呪者だろ…ホーネット。」

トグルは本部の様子を伺ったまま笑う。



ロダーが銃を取り出してオペの肩へ向ける。

「…俺が不具合を起こせるのは俺が触れたものだ…ただ、敵意を持った状態のやつは触れなくても不具合が起こる。そして今回、俺はお前に触れていない。」

オペは指を差して嘲笑した。ロダーは引き金を引く。

バァン!ドシュッ…


「クッ…!?なんで…触れてないのに…!」


「…君のスキルパルスは誰から教わったのか分からないが、私は君のようにいちいち隙だらけの構えをとる必要はないんだ。というよりは、常に細かくパルスを出している…という言い方の方が正しいかな?」

目を見開いてオペは驚く。その気づきはロダーとの練度の差に対してでなく、自分の内へ向けられていた。


「呪いの実感が…無くなった…」

ロダーは不敵な笑みを浮かべ両手を広げ、上機嫌に語る。

「鐚蟒瀲は…抽象的に説明するなら『世界から呪いを消し去る』ためのものなんだ。唯一かつ1番のリスクケースである君の『不具合』も完全に消えたし、もうこの計画を妨げる障害はない…」

軽く呼吸を整え、ロダーは両手を下ろして話す。


「取り乱してしまって申し訳ない。あれは脅威としてまずこの本部にいる保呪者たちを襲うだろう。彼らも呪いで必死に抵抗し、最後はお互いに対消滅する…」

2人は少し見つめあうと、オペは振り向き走り出した。ロダーは彼を追いかけもせずに高らかに笑った。


オペが入り組んだ通路を走るところに、横からサディが合流し並走する。サディは頬に付いた血を拭い話す。

「この霧、なんだ!?ロダーには勝てたのか?!」


「いや。どうやらアイツが手を下すまでもなく俺たちはだいぶマズい状況に置かれているらしい…」

サディに鐚蟒瀲のこと、ロダーの計画のことを説明する。

「…なるほどな。確かにそれはピンチだ。てか、オペはもう保呪者じゃなくなったんだな。良いのか悪いのか…」


通路の横からルドとナヴィが合流する。

「ルド!無事だったか!怪我してるようだが…」


「こんなんタトゥーみたいなもんさ。俺たちもさっきそこで会ったばっかだが…ロダーはどこだ?」

自分の傷を軽く叩き笑うと、ルドはオペに問う。

「…反対側だ。俺たちで鐚蟒瀲は片付ける。」

ルドが素早く方向転換する。靴が床を擦る音が鳴った。


「行かなくていいのか?」

サディがオペに問う。オペが少し悩んだような表情を見せると、サディは突然走る足を止めて彼の手を強く握りしめ、優しく…同時に決意を固めたように呟いた。

「…アタシ達だけでやれる。行ってやれ…!」


オペの姿が見えなくなると、サディはナヴィに話す。

「こっちにあるんだな?鐚蟒瀲の本体が…」

ナヴィは頷いて彼女を案内した。外に出て渡り廊下を介し、隣接した研究室に入る。しかし、突如研究施設の床が抜けて2人は落下した。そこは暗く、灰色の霧に包まれた広い空間。無機質なコンクリートの壁が延々と続いているようで、空気は重く不気味だ。


「ゲホッ…ごめんなさい…大丈夫ですか…?」

ナヴィは心配そうにサディを見つめた。

「大丈夫だ…無事か?良かった…」

どこからも見られているような気色の悪い感覚を感じながら2人が歩き続けると、何かを引きずるような音が響いたかと思うと、暗闇の中から歪な人型の肉塊がぎこちなく歩行してきた。顔はなく、全てが筋繊維で出来たような…。


「…気味悪いな。アタシの眼でも弱点が掴めない…どこを攻撃すればいいのか…まるで見当がつかねぇ…」

サディはナイフで首と胸をひと突きした。人形は数秒ほどバタバタと荒れ狂うと、停止した。


「なんなんですか…あれ…!」

ナヴィはビクビクと怯えながら、震えた声で言った。サディがナイフを引き抜いてナヴィを見る。彼の目線は、自分の始末した肉塊ではなく、別の方へ向けられていた。それをみたサディは、ゴクリと唾を飲み込んだ。


「ははっ…マジか…神様は質より量なのかよ…?」

暗闇から先ほどと同じような肉塊が無数に歩いてくる。

「ナヴィ、壁の方に寄ってくれるか…アタシがお前を守れる、見れる方向には…限界があるからよ…。」

頷いてナヴィは、背中を壁につけるように立った。




サディは帽子を被り直し、軽くフッと息を吸った。

「ここで弱音吐いて助けなんか求めてたら…オペの隣に堂々と立てねぇからな……。よし…来い…!」

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