[第4記]銃はきらい
「うわ…政府軍じゃん…昼もいるのかよ。迂回しよーっと…ん?」
「おい!早く来い!追いつかれるぞ!」
「まって…!」
走る2人の獣人。呪いを持っているようだ。
その背後からは政府の軍が迫る。
「止まれ!撃つぞこの野郎!」
「あいつらを捕まえろ!」
「いたぞ!あそこだ!」
彼らを追う政府軍4人のようだ。
「なんでぼくたちが捕まらなきゃいけないんだよ…!何も悪いことはしていないのに…!」
「お前らはなぁ…生まれてきただけで罪なんだよ。お前らを捕まえれば金が貰えるのはありがたいがな」
「うるせぇ!さっさと強制労働にぶち込まれやがれ!」
「この世界…腐ってるよ…!」
「まったく同感だね!」
サディが着地し、少ししてから話す。
「…さて、アタシが着いたからには終わりだ、政府軍!…君たち大丈夫?アタシがあらかじめ安全な道を見つけといたからね、向こうに真っすぐ走りな」
「…ありがとうございます!」
少年2人が走っていく。
「なんだぁ?お前…1人だけで俺らに勝てると思ってんのか?こっちは4人だぞ?ヒーロー気取りか?」
「いや、油断しないほうがいいぞ。戦いに特化した呪いを持っている可能性もある。」
「あぁ。そこのアホの言う通りだ。」
会話する政府軍にサディが口を挟む。
「はっ!調子に乗るなよ!死ねぇ!」
バシッ
政府軍が銃を取り出そうとする。しかし
取り出す前にサディのしっぽに弾かれてしまう。
瞬く間に1人がダウンしてしまった。
「…銃は嫌いなんだ、何も考えず殺せちまう。でも…」
スッ…
サディが構えを取る。
「格闘なら相手するぜ?」
「う、うらぁぁぁ!」
政府軍の1人がパンチを打ち出す。しかしパンチやキックをサディは全て躱す。まるで"どこから来るか分かっている"かのように。
「お!いいねえ!」
サディが柔道のようなかけ技をした後にシメ技で首を圧迫し始める。そこを政府軍の1人が銃で狙う。
「い、いまなら…!」
「だから銃は嫌いだって…」
「きっ、消え…!?」
「言ってるだろがぁ!!」
ゴキャッ
また1人気絶してしまった。残りは1人だ。
「…俺は格闘でいかしてもらうぜ」
政府軍の残り1人は好戦的だ。
サディがニヤつく。
「…やろうか」
シュッ
政府軍のパンチがサディの頬をかする。
サディが反撃するが、止められてしまった。
「うぅむ…君、なんか格闘技かじってるな?」
「…?それは降参か?」…と政府軍。
「いいや?アタシのほうが…少しだけ…強い!」
ゴンッ!
頭が地面に打ち付けられ、残り1人である政府軍は
動けなくなってしまった。
「クソッ…」
「…おぉ、君、丈夫だネェ!なんか話すー?…いや、でもオペが怒りそうだな、ほどほどにするか」
後ろの方を向いたサディ、ジャケットの左胸には紫色のアルファベットが組み合わさったようなロゴが見える。
「そのマーク…まさか…お前ら…保呪者を匿ってる…SIMのメンバーか…!?」
「ぴんぽーん♪」とサディが言う。
「SIM…!全員捕まえて強制労働所にぶち込んでやる…!まっとけ…!」
「おーこわ、楽しみにしとくよ」
ガンッ
サディがナイフの柄で頭を一突きし、気絶させた。
再び住宅地から外れ、しばらく歩くと少し廃れた洋館が佇んでいる。これがSIMのアジトのようだ。サディがアジトの扉の前に立つと、少しして鍵が開いた。
「おかえり〜サディ〜!」
アジトに入った瞬間、数人からのお迎えの言葉が
サディに投げかけられるお迎えの中にはオペもいた。
「戻ったかサディ。無事でよかったよ。」
「ただいま。政府軍と戦闘になったよ、奴らどんどんアジトに近づいてる…そろそろ危ないかもね」
「でも、なんかあったら我らがSIMのリーダーと副リーダーが守ってくれるさ、この後会議か?」
事務班の班員がサディに質問する。
「ああ。」
そしてSIMの会議が始まった。偵察班からの情報をもとに危険な場所を共有し、翌日の予定を立てる。
「……という感じで、ベレケンヤードとナイガロン地区は政府軍が大量にいる。しばらく近づかないほうがいいだろう…どう思う?」
「そうだな、ではそのようにメンバーに通達を」
オペが答える。
オペが続けて
「サディはどう思う」と問う。
「…ベレケンヤードにはSIMのアジト支部がある。政府軍を片付けるのが良いんじゃないか?」
オペは待ち望んだ様に笑みを浮かべ言う。
「賛成だ。そうしよう。では戦闘班を…」
「あっ、オペ司令、サディ副司令。さきほど入ってきた情報なのですが…」
「なんだ。」
「ベレケンヤードにてSIM未所属の保呪者が政府軍基地を単独で破壊したと支部から情報が入りました。」
「ほう…」
「SIMに入ってくれればかなりの戦力になるかと…」
「確かに…SIMの最高戦力が2人だけというのも考えものだしな。俺とサディで行こう。」
「そうですね。こちら、その保呪者のデータです。」
「どれどれ…アタシにも見せなよ」
サディが椅子から立ち、オペの手の紙を覗きこむ。
「名前だけか…まぁこれだけでも奇跡だな」
「こいつがアタシとオペで取っ捕まえる奴の名前ね」
「えーと…」
「「シズリィロ…マホガニー…」」
2人は同時に名前を読み上げた。