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[第47記]そばにいるのに

日が落ち始めたころ、オペ達はビルが立ち並ぶエリアを抜ける。周りからは少しづつ住居の数が減っていく。すると見えてきたのは、壁で囲まれた中に塔が4つ…真ん中に小さめのビルが立ったような建物。ビルには鍵に翼が生えたような全能統治軍のエンブレムが付いている。塔ではサーチライトが光り、遠くの方を警戒するように照らしている。


「…あれが全能統治軍本部…」

オペは呟く。6人は本部から少し離れた場所にあるコンテナが集まった場所に身を隠した。

「俺たちはここで待機だ。…ティズ」


「…待ってる。ただし早く帰ってこい。」

オペがそう言うと、ティズはオペの方に手を乗せ頷き急いだ様子で海の方へ走っていった。



「(昨日の夜からリオネと連絡がつかない…ロダーがこんな意味のないことをするとは考えづらい…まさかもううちより先にリオネを特定して連絡を…?)」

ティズは思考を巡らせる。


「ハァ…はぁ…」

ティズは息切れしながら歩く。坂を下った堤防の先にリオネが見える。彼の周りには誰も居ないようだ。ティズは安堵したように息をついて笑った。

「はは…うちが…先に着いたっぽいな…良かっ…

ザシュッ!

ティズの脇腹に刃のついた円盤が刺さる。


「ううっ…!」

鎖鎌を取り出し後ろにいる2人に反撃する。しかし…

ヴヴゥゥゥゥン…鎖鎌は空中で止まってしまった。

1人は目つきの悪い煙草を吸ったヤギのような獣人。1人は糸目でタヌキのような獣人だ。2人とも軍服を着ている。

「…なっ…アンタら保呪者か…?味方ちゃうん…?」


「黙れ。俺らは選ばれた呪いだ。ある日強制労働から解放されたと思ったら急にVIP扱い…これを続けるためにはお前らを殺す必要があるんでな。」

ヤギの獣人は手をかざして円盤を呼び寄せた。刃が引き抜かれたティズの傷口からジワジワと血が滲む。


再び反撃を試みるもティズの攻撃は全て空中で静止してしまう。一方的に円盤で身体が刻まれながら、ティズはタヌキの獣人に目を向けた。

「…気づきました?攻撃が届かないのは僕ちゃんの呪いだってこと。あなたに『攻撃する意思』がある限り、僕ちゃんにもダズルさんにもその鎖鎌は届かないよん」


「…なるほど…厄介…やね…」

ティズはもう満身創痍、意識を失いかけている。畳み掛けられる円盤を弾き続けるも、体力を消耗しきった彼女は避けることが困難になってしまった。

シュイン…ガギャッ…

後ろの壁から跳ね返った円盤に鎖を伸ばし絡ませる。

「これないと…攻撃…できんやろ…」


ヤギの獣人がティズを嘲笑う。

「はっ。誰が1枚しか持ってないって言ったよ?」

ティズの顔に焦りが浮かぶ。


「とどめだ…じゃあな。ロダーさんを裏切ったクズ。」

ヤギの獣人は円盤をティズの腹目掛けて投げた。円盤は腹を貫通し、血飛沫を撒きながら主の手のもとへ戻ってきた。衝撃でティズの帽子が宙を舞う。ティズは吐血し倒れ、肺に血が入っている激痛に耐えながらも静かに呼吸をする…地面に血溜まりが出来ていく。

「カヒュー…カヒュー………」


「はっ。弱えな…おい!ステラ。目的通りリオネビットとかいうやつ殺しにいくぞ。」


「さっすがダズルさん!頭良いです天才ですぅ!僕ちゃんと2人のこのダズル&ステラのタッグ!まじで怖いものなし!無敵ですぅぅ!ヒューヒューっ!」


「…お前は呪いだけだろ。調子に乗るな。行くぞ」

ヤギの獣人…ダズルは海の方へ歩いていく。ステラも頷きながらそれについていく。


「…ちょっと…待てや…おふたりさん…」

後ろから声が聞こえ、ダズルとステラは振り向く。ゆっくりと立って顔を上げると、ティズの目は覚悟に染まっていた。ティズが手を伸ばす。ステラが小馬鹿にしたように笑うと、次の瞬間彼の左腕が切り落とされた。ステラは右腕で傷口を押さえ絶叫する。ダズルは目を見開きステラを見た。

「…なんで攻撃できるんだ!お前ェェ!」

ダズルが叫ぶ。


「…もう…うちは…実質死んでるみたいなもんや…憎しみも、後悔も…アンタらに攻撃する気もない…」


「今うちを動かしてるのは、ただ『守りたい』気持ち…こんな理論が通るなんて、呪いは優しいんか厳しいんか…」

少し笑ってティズは目を瞑り両手を握って胸の前にそっと置いた。鎖鎌がティズの周りを回る。

「リオネ………好いとーよ…」



ダズルとステラは地面に横たわり死んでいる。ティズは海の方へふらふらと歩いていく。堤防の目の前まで来ると、バタリと倒れこんでしまった。這いずって堤防に寄りかかると、声が出ない悔しさから涙を零した。


「ん…誰か泣いてる?ザヤさん?そこにいるの?」

リオネが堤防にヒレを当てる。


「…気のせいか。あーあ、ザヤさん…来ないなあ」

リオネはコンクリートにヒレを置いてため息をつくと、空を見上げた。夕暮れ、星がキラキラと輝き始めている。

反対側では、ティズがポロポロと涙を流しながらゆっくりと俯いている。目を閉じて、少女はそっと眠りについた。



「…もう完全に日が暮れた。突入するしかないな」

オペは正面玄関に向かって走り様子を伺うと、仲間達の方を向いて頷いた。仲間も続いて玄関横の壁につく。オペが硬く閉ざされた扉を手で触る。扉から火花が出て少し隙間が出来ると、オペは隙間に手を入れる。

静かに正面玄関が開かれた。




「結果がどうなろうと、今夜…世界は大きく変わることになるだろう。総員突入!」

反乱軍SIM 全能統治軍本部正面玄関 突破。

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