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[第46記]未練

早朝、船に揺られながらオペは柵にもたれかかりボーッとしている。歩いてきたシズは彼の隣に立って頬杖をつき軽く息を吸うと、眠たげの残る声色で話した。

「…ありがとうね。オペ。」


「何がだ?」

海の方を向いたままオペは答えた。


「ボクに居場所を与えてくれて。それと…ボクの恩人のサディのことを明るくしてくれて。」


「…サディが明るいのは元々だよ。俺も辛い時に、挫けそうな時に、何度あの明るさに救われたか…。」

オペがそうぼやくと、シズはオペに近づいて言った。


「気づいてないんだ。あの子は太陽じゃない。月だよ。あの輝きは自分で得ている物じゃないのさ。むしろ、内の…本当のサディは…静かで暗い性格。」

シズは呟きながら歩くと、オペを指差して言う。

「太陽があることで周りを照らせるんだ。」


「太陽…?俺が…?ははっ…まさか…」

オペが少し驚いた後、再び海を見る。


「魂は嘘をつけない。」

シズはオペから離れ船内に向かいながらそう言い振り向く。その顔は少し笑みが零れたような…そんな顔だった。

「キミの魂は…激しく燃え盛っている。本当に周りを照らす太陽はオペだよ。ボクもそれに照らされた。」


シズが見えなくなりしばらくすると、サディがこちらの方へ歩いて来た。オペの背中を叩いて話し始める。

「なんだよ〜緊張してるのか?」


「…サディ…俺は…サディのことを照らせているだろうか」

オペは彼女の方をゆっくり向くと、不安そうに問う。サディの表情に少し戸惑いが浮かぶも、すぐに優しい笑顔に変わる。そして全てを包むような口調で答えた。

「…あぁ。充分過ぎるくらいにな」


一方、船内でシズはベッドに座り自分の手のひらを眺めていた。手には雪の結晶のようなネックレスが乗っている。

「アウダさん…貴方が愛したこの世界、もうすぐ変わります…きっと…変えてくれます…オペなら…」

ネックレスの金具を外して首に付けると、それを服の中にしまい込んだ。そして覚悟を決めたように拳を握った。


別の部屋でルドはリボルバーを分解し直し…磨き念入りにチェックをしている。また別の部屋ではナヴィがパソコンで情報を集めている。ティズは甲板でため息をつきながら下を向いて海を眺める。各々がそうして時を嗜む中、船は進み続け…ガルガイド港に到着した。

「夜に突入なのに早めに着いちゃったな……なぁ、」

オペは取り出した時計に目をやる。時刻は午前8時。後ろについてきた5人の方へ向きなおる。


「最後にさ…全員でやりたいことやってかないか?」

オペは仲間たちに提案する。


「…ははっ、もちろん良いぜ。リーダー。」

ルドは答えた。そこから6人はサディの提案でボウリングができる施設へ向かった。

「やっぱ思い出のボウリングだろ!」

サディは球を持ってニヤリと笑う。


「…じゃあ、ビリのオペは好きな人の名前でも…」

ルドがスコアボードを見てオペの方へ振り返る。オペは両手を顔に当てて唸った。隣でサディが様子を伺う。

「俺が好きなのは…サディノイラだ」


「…知ってた」とシズは紅茶を飲む。

「まぁなんとなくは」とナヴィが頷く。

「バレッバレやね」とティズが控えめに笑う。


「これは……もう罰どころの話じゃなくないか」

オペは、顔を赤らめ目を逸らすサディの方を向き呟いた。

その後はシズの提案でカフェに行った。コーヒーを飲んで顔をしかめたオペを見てサディが笑っていた。

次にティズの提案で映画を見た。内容は面白いかと聞かれれば首を傾げてしまうが、仲間と見る映画はとても楽しかったのを覚えている。そしてルドの提案で夜景を見た。シズ達が気を使って離れ、オペとサディは2人きりで景色を楽しんだ。ルドとティズも途中でシズとナヴィだけの空間を作ったため必然的に2人きりになった。

「…ルドはんありがとうね。SIMに背いたうちにあんな怒ってくれて……見捨てないでくれて。」


「…あぁいいのさ。…勘違いすんなよ…別にお前に想いを寄せてる訳じゃない。お前らしくないからやめな」


「…仲間としては?」


「ははっ!決まってるだろう?…大好きだ。」

ルドはティズの目を真っ直ぐ見て少し微笑み言った。ティズは嬉しさと恥ずかしさが混ざったように少し笑った。


「…で、オペのやりたいことはなんなんだよ」

サディが質問する。


「ホントにみんなと比べたら大したことないんだけど…」

オペがそう言って取り出したのは、カメラだった。

「この6人で、写真が撮りたいなって…」


「いいね!最高の1枚撮ってもらおうぜ!」

サディは通行人に話しかける。オペはカメラを渡してレンガの壁の前に移動した。サディ達も移動する。

「じゃあ撮りますねー、はい!笑って〜!」

パシャッッ


前の方でサディが驚いた表情をしている。オペはサディに寄っている…ルドに押されて倒れたようだ。後ろの方でシズとルドはそんな2人を笑いながら見ており、シズの横でルドを見ながらナヴィが驚いている。ティズは幸せそうに優しく微笑み5人を見ている。

そんな写真だ。


「…いい写真やね」

オペが持っている写真を覗き込んで、ティズが呟く。オペはゆっくりと頷く。後ろではサディがルドを叩き、シズ達が笑いながらそれを見ている。




ジャケットの内側に写真を大事にしまうと、オペは深呼吸して覚悟を決めたようにそっとつぶやいた。

「…もうやることはひとつだけだ。」

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