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[第45記]決戦前夜

「設備を全体的に強化しろ。例の機構も進めたまえ」

ロダーは歩きながら部下に指示を出す。


「…どうだね?間に合いそうかね?」


「ええ。大丈夫そうです。鐚蟒瀲は完成しました。ただ…あのままではまだ心もとないですね…」

隣の秘書は書類を見ながら頷く。


「…そうか、大丈夫、何も心配はいらない…」

不敵な笑みを浮かべてロダーは呟いた。



「19か、わらわの勝ちじゃな。」

ガニメデが手札を見ながら立っている。その向かいに座るイオ、エウロパ、カリスの3人はチップとトランプのカードを交互に眺めている。


「コール。」

カリスがそう言うと、ガニメデは頷いて持っている手札から1枚を引き抜いてカリスの前へ投げた。


「エース、ブラックジャック…。勝ちですね」


「やりよるのぉ〜…」

エウロパは悔しそうに身体を反らせて言う。


「…のぉ、お主ら…もうすぐあいつらが攻めに来るってロダー殿が言っておったが…本当に保呪者って敵なのか?分かり合えるのではないか…?」

しばらくしてエウロパは、カードをいじりながらそっと呟いた。3人は彼女の方を向いて驚いた。


「…何言ってるんスか?保呪者に兄さんとお袋さんを殺されたんスよね?保呪者を殺し返したくないんスか?」

ガニメデは苛ついた様に目の前の手札に手を叩きつけた。


「わらわがアイツらと戦った時…あの時の彼らは…本当に信じあった仲間の絆のようなものを感じた。このまま保呪者を捕らえ利用し続けるのより、彼らに賭けてみるのもよいかなと…そう思ったのじゃ」

エウロパはチップを1枚手に取って優しく微笑んだ。


「…確かに可能性のようなものは感じるねー。それに、おれが捕まってた時もめちゃくちゃ優しかったし。」

イオはエウロパに賛同した。


「イオさんに関しては流されやすいですからまだ分かりますが、エウロパさんがそんな事言うなんて珍しい…」

カリスが驚きながらエウロパを見つめる。



「おや。勢ぞろいでトランプか。楽しそうだね」

扉を開け入って来たのはロダーだった。レガリオ達が頭を下げるのをそっとやめさせ、彼は続けて言った。

「…エウロパとイオ、2人は私についてきてくれ」


廊下を歩く。地下へどんどん下がっていく。空気が少しつづ重くなり、明かりもなくなっていく。そしてロダーは錆びついた扉を開けた。中は暗くて何も見えないが、狭い部屋ではなさそうだ。むしろ…

「本部の地下に…こんな広い空間があったんですね」

イオはロダーに話しかける。ロダーは何も言わない。


「中に入ってくれ」

ロダーに言われるがままに2人は中に入る。

ギィィ…バタンッ…!扉が閉められた。困惑した2人を、暗闇が不気味に抱擁する。


「…のぉ…イオ…この空間…お主以外にここに人間は…いや…能力者はおるのかの…?」

エウロパは呼吸を乱しながら問う。


「…?いや、殺気のようなものは感じない。」


「じゃあ…何でわらわの腕……ないんじゃ…?」

エウロパの肩から血がボタボタと滴り落ちる。


「なっ…霧を出すから!息止めてて…!」



プルルルルル…

「…すまん、電話や。いったん外出てくるばい」

ティズは玄関を出ると、携帯を取り耳を下げる。

「ザヤ、君がまだオペロジャックたちを始末できていないのは責めないでおこう。しかしこれは紛れもなく事実だ。」


「…ロダー様。うちもうちなりに動いてるねん。」


「それは丁度良かった。新しく仲間を迎えたんだ。」

ロダーが言うと、ティズは少し顔を曇らせた。

「とても強くてね…君よりも強いかもしれない…いや、まぁそんなことはどうでもいいのだよ。オペロジャック達生き残りの幹部の始末はもう取り下げる。」


「なして急にそんなことを?和解する気になったん?」


「ハハハ…まさか。もっと簡単な任務を代わりに君にやってもらおうかと思ってね。確実にこなせるはずだ」

笑いながらロダーは言った。


「私の知り合いのマニアックな富裕層が利用した事がある『ドルフィン・デリバリー』を名乗る者…保呪者で、しかもオペロジャックたちに協力しているらしいんだ。」


「その人物を殺してくれ」

ロダーにそう言われた瞬間、ティズは顔が凍りついたように固まった。震える手を抑え、深呼吸して答える。

「…申し訳ないけど、うちはそんな組織知らな


「君がマリンヴェルタで彼と喋ったことは知っている。連絡が取れるということもね。頼んだよ」

ブツッ……

ティズの言葉を遮って、ロダーは話し…電話を切った。


「…………………」

携帯を握りしめたまま、ティズの腕は脱力したようにダラリと下がる。心の淀みを漏らすように深く息を吐く。


家に入ると、オペ達が料理を食べながら話していた。

「…移動手段が確保できた。ガルガイドには船で行く。明日には出発だ。夕方辺りに突入する。」


「オペ…うち…突入の前に海辺に行きたいかもやわ。うちだけでええ。きっとすぐ終わる…ええか?」

ティズはそう言うと料理を口に入れ、オペの顔を伺った。


「…いいだろう。理由は聞かないでおくよ」

オペはニコリと笑った。




ティズは料理を下げて部屋に戻ると、鎖鎌を手に取った。

「…すぐ終わる…リオネは…うちが…」

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