[第40記]朝飯前
キィン…ギャギャギャギャ…
「ザヤ…こんな真似はやめてくれ…!頼む…!」
オペは刀を鎖に押し付けながら言う。
「『こんな真似』?はは…うちは最初から向こうに付いてたんや。気持ちは常に変わっとらん…ただ情報流す盗聴器としてSIMにいただけやけん。」
鎖でオペを弾き飛ばす。オペに投げられた刀をルドが受け取り、間髪入れずにザヤへ斬りかかる。
「動きが甘いけぇルドはん…!」
後ろから殴りかかるオペを小鎌で斬りつける。上半身を大きく反らして避けるも、バランスを崩してしまったオペ。ザヤは鎖をオペに巻きつけ壁に叩きつける。ルドにも小鎌を振るうが、こちらは刀で防がれた。
「甘い?ならこれでどうだい。」
刀についているスイッチを押すと、ルドの身体は透明になっていった。
「…カリスの刀で透明化しよったね。でも残念やけどあいつと戦って…うち負けたことないけん。」
ザヤは自分に纏わせるようにしていた鎖を移動させて片方の小鎌の持ち手を握ると、そのまま大きく振り回した。周りの建物に凄まじい速度で傷がついていく。
キィィィン…!
ルドは刀でその斬撃をなんとか凌いだが、衝撃が刀に伝わり透明化の機能が壊れてしまった。
「クソッ…」
オペがハンマーを持ってザヤに突進する。しかし…
ザンッ
持ち手の部分から上は切断された。オペは汗を流し動けなくなってしまった。攻撃が見えなかったのだ。
「…音速くらい余裕で越せるけん。うちの気持ちも分かってや…ルドはんも動かんといてや?首飛ぶで」
ルドは刀を強く握りしめてザヤを睨んだ。
「お前がウェイクロックの奴らの情報流したからあいつらは…核なんかで死んだのかよ…!?答えろォ!!」
腰から銃を取り出しザヤの頭に向ける。手は震え、目の奥は溢れきった怒りで満ちている。
「…もうアンタは何を言ってもうちのことを恨むやろうな。それでええ…ドルドージュでシズはんを斬ったのも、情報流したのもうちや。さっさと…引き金引いたらええ…元々うちのことは嫌いやろ…?」
ルドへ近づいていくと、ザヤは銃口を握って自分の額に当てた。ルドの脈が早くなっていく。
「お前と過ごした時間…ウザいとか大人げないとかは思ってたけどよ…なんだかんだ楽しかったぜ」
「…ッ…」
ザヤの目が少し泳ぐ。そしてザヤは深く息を吸い込み、ルドに鎖を巻きつけてオペの方へ投げ飛ばした。
「…今からきっかり12時間後にロダーにあの家の場所を報告するけん…最期にパーティーでも開きや。オペはんには…信頼されてる仲間がおるやろ」
ザヤは帽子を拾い上げ、軽くはたいて被るとオペの方を少し振り返って去っていてしまった。
「うわ…!大丈夫かよ…何があった!?」
ルドに肩を借りながら家に入ると、サディが心配そうにオペに駆け寄ってきた。
「てか…ザヤは…?」
サディが聞くと、オペは首を横に振った。ルドはひと呼吸置いてから起きたことを説明し始めた。
「…ザヤは政府軍側…総帥直属の幹部だった」
ルドがそう言うとサディは驚いた表情をした。
「この場所も半日後に政府のやつらにバレる。もう道は2つしかない…俺たちで転々と逃げ続けるか…すぐにここを出て総帥を潰しにいくか…」
オペは俯いて話す。サディは少し考える。
「いや…もう1つ道がある。ザヤをSIMに連れ戻す」
「…サディ…あいつは完全に政府側だ…もうこの5人で逃げるか戦うかしないと…」
オペがそう言いかけると、サディはそれを遮った。
「いや!そんなのまだ分からないだろ?アタシの真理の目でザヤの心の中を読む。それで決めよう」
サディは真っ直ぐとオペの目を見て言った。
「…………」
「だめ…かな…?」
「…フッ、残念ながら俺も同じ思考だ」
オペはサディに笑いかけた。
「でも…ザヤのいる場所がわからんな…」
椅子に座り悩むオペ。サディも腕を組み考える。
「あっ…そう言えば…なぁナヴィ、パソコン貸してくれ。この辺に海辺に近いとこあるか調べたい…」
サディはなにかを閃いてキーボードを打った。
「海辺…?海辺にいるのか?」
「ザヤと一緒に風呂に入ったときに…色々話してど〜しても気になる事があって…ちょっとだけ心を見たんだけどよ…多分…海らへんにいるな…」
サディがそう言って検索した結果出てきた場所は、とある港ただ一箇所だけ。
「…なぁ…アタシの頭の中にはひとつ考えがある。これを言ったら確実に止められると思うけど言うぜ。ザヤのいるところには…アタシ1人で行く」
「サディ!?正気か!俺とオペが束になっても傷ひとつ付けられなかったんだぞ!?全員で行こう…!」
ルドはサディの肩を掴み叫ぶ。しかしサディは何も抵抗せず、少し笑って静かに言った。
「……アタシは傷を付けに行かない。」
ジャケットのベルトからナイフを抜き軽く回すと、サディは刃を持ってルドにそれを差し出した。
「サディ…」
ルドは唖然とする。
「ふっ、止めてもいくんだろ?」
オペは微笑みサディの方へ歩くと、そっとナイフを取った。そしてナイフを軽く振って言う。
「…ナイフは預かった。」
「…!」
ハッとした様な顔をすると、頭をかきながら笑う。
「…ははっ、朝ご飯には間に合わせるよ」
玄関の扉を開けサディは振り返る。
「いってきます!!」




