[第39記]名演技
「もう朝か…サディ。起きて。」
オペは隣で静かに眠っているサディの、顔にかかった髪を人差し指で優しくどけた。
「ん…おはよう…」
ベッドの中でもぞもぞと動き、オペに抱きつく。
2人はベッドから出て服を着る。そしてオペはドアノブに手を掛けるが、その手は少し震えている。そんなオペにサディは上からそっと手を重ね、頷いた。
「…よし。行こう。」
部屋を出てリビングへ向かう。
「ナヴィ、コーヒーおかわり頂戴」
シズは新聞を読みながら空のマグカップを渡す。その向かいではザヤがノートパソコンを見ていた。
「…おはよう。みんな。そうか、ルドは…」
オペが椅子に座ると、少し悲しそうに下を向いた。しかし、玄関の扉が開きルドが入ってくる。
「おっ、オペ起きてるじゃねえか。すまん、ちょっと散歩してたんでな。あ、俺にもコーヒー入れてくれ」
オペは嬉しそうに涙を流した。
「みんな…!ありがとう…」
「ハッ、最初から命をかけてオペについて行くつもりだったんだ。今さらって感じだろう?」
ルドは髪を整えながら笑った。
「ホーネット達にも連絡したら?これだけ一気に戦力を削られたんだ。あいつらにも頼りたいでしょ」
シズがコーヒーを飲みながら言う。オペは小走りで部屋から紙を取り出し、書いてある番号を入力した。
プルルルルル…
「おかけになった電話番号は、現在使われて…」
オペは電話を切ると大きいため息をついた。
「そうだった…こうゆうことする奴だった…」
「ヘックチュ!ズビ…」
トグルの横でくしゃみをする。
「どうしたホーネット。風邪か?」
「…まぁこの6人で覚悟を決めるしかないな。にしても政府軍の本部、ガルガイドだろ?飛行機あるアジトも今は占拠済み…どうやって移動すんだよ?」
サディは腕を組んで顎に指を当て考えながら言う。
「どころか、無事につけるかどうかも怪しいで。」
ザヤはパソコンを閉じて脇に抱え話す。
「この家の近くに、どうやらロダー総帥直属の部下がいるらしい…監視目的かなんかやろな。」
「…先に潰すしかないな。いったん様子を見てくる。ザヤ、案内してくれるか?」
オペは帽子を被りハンマーを腰のベルトに装備しようとした。しかしルドはそれを止めた。
「他の道具は持って来れなかったけどよ…これはお前の武器だと思って持ってきたんだ。使え。」
ルドが取り出したのは緋鶴で手に入れた刀だった。
「…ルド…やっぱり俺は…」
「お前が優しいのは知ってる。だが殺したくないなんて、そんなことももう言ってられないんだ。」
「…わかった。持っていくよ…」
鞘についた紐を肩にかけ、オペは玄関の扉をあけた。ルドは何も言わずに頷いた。オペも静かに頷く。サディはオペに向かって手を振り、優しく送り出した。
「…じゃ、行こか。こっちや」
ザヤが案内したのは街中にある時計台の下にある広場だった。周りには人はいないようだ。
「ここに総帥直属の部下がいるんだな…どこだ…?」
背中の刀に手をかけ周りを警戒するオペ。すると後ろからジャリン…と鎖のぶつかるような音が鳴った。
ジャギィ!キキキキ…
後ろを振り向き刀で鎖の打撃を受けるも、別方向からの小鎌での斬撃がオペの左目を襲った。素早く敵への距離を詰め刀を振るうも、敵は鎖で自らの身体を後ろに引っ張りオペの攻撃をかわした。
「まさかとは思ったが…本当に残念だよ…ザヤ。」
「…完全に不意を突いたはずなんやけどなぁ。よー受けきったなオペはん。」
ザヤは手を少し動かし鎖鎌を自分の方へ戻した。
「今までのはずっと芝居だったのかよ?一緒にボウリングしたり笑いあったり…あの笑顔も全部…!」
オペは叫ぶ。ザヤの口が少し開く。少しの沈黙が流れ、ザヤはゆっくりと話し始めた。
「……そのとおり。保呪者が嫌い…ってわけじゃないんよ?好きなやつもおる…でも仕方ないけん。あんたらは政府にとって邪魔なんよ…」
ザヤは鎖を飛ばしオペの首を締め付けた。
「ぐっう…!」
「そこでや。SIMを完全に解散して政府の下で暮らさん?そうすればロダー総帥はオペはんと…そうやな…あと1人ぐらいは危害を加えないらしい。あんたにも大切な人おるやろ?うちと一緒に来ぉへんか?」
ザヤがオペに近づき手を差し伸べる。オペは刀をザヤ目掛けて振るうが、オペの首から凄まじい速さで移動した鎖は刀をいなすようにぶつかった。
ヒュンッ…キィン
オペは刀をザヤ目掛けて投擲したが、弾かれる。
「気でも狂ったんか?なんで急に刀を捨てるん…」
「捨てたんじゃねぇ…『託した』んだよ…!」
オペはニヤリと笑みを浮かべる。ザヤの後ろに飛んだ刀を何者かがキャッチする。
「ルド!!!」
「任せな!」
キィン!ギャギャギャギャ…
ルドが振るう刀は顔まであと数センチのところでザヤの鎖に阻まれた。しかしザヤの後ろにはルドの影…バーテンダーが回りこんでいた。影から銃弾が飛ぶ。
バァン!!弾は鎖で軌道を逸らされ、ザヤの帽子に命中した。ザヤは帽子を脱ぎ投げ捨てた。
「来てくれて助かったぜ…ルド…!」
「ドルドージュから帰って来た時に打ち合わせしといて良かったねェ。あそこで話したのさ。ザヤの動向に注意して2人きりにならないようにしようってね。」
ルドはオペの方に移動し、刀をひと振りして笑った。
「…10と10を足しても100には届かないんやで?」
ザヤは後ろ髪を軽くいじると鎖をぶつけ鳴らした。
「俺らの場合は…かけ算だ。だよな?ルド。」
「あぁ…だね。」
オペとルドは構えを取りザヤへ向かっていく。




