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[第36記]妄想の話

「あぁ〜オネェさん…ちょっとこれ。」

カフェでケーキを指差して店員を呼び止める。


「はい…なんでしょうか…?」


「俺ぁケーキはフォークで食べないって決めてるんスよ。フォークは溝に挟まったケーキが勿体ない。かといってそれを舐め取るのもお行儀悪いでしょ〜?だからスプーンで食うんだ。あれなら舐め取ってもなにも違和感がない。わかりますかねぇ〜これ…」

ガニメデは店員に丁寧に身ぶり手ぶり説明をする。


「も…申し訳ございません…すぐに持ってきます」

店員は頭を下げて謝った。店員が持ってきたスプーンを受け取ると、そのスプーンで綺麗に飾りつけられたケーキを上から押しつぶした。ガニメデはそのままスプーンを立てかき混ぜた。ケーキはもはや原型を留めていない。



「あー…美味かったな。反乱軍の奴らがどこかは知らねえけど…どうせ郊外のほうだろ?」

日が落ちてくると、ガニメデは人のいない方へ歩いていった。少しづつ獣人の比率が高くなっていく。


「…この辺りで物を売ってるのはあそこだけか」

周りを見渡し、ガニメデは小規模なマーケットを発見した。中に入ると、数人の獣人が買い物かごを持って商品を物色していた。


「…なあぁ…ちょっとイイっスか?オニーサン。」

ガニメデは野菜を選んでいるオオカミのような獣人の肩をポンと叩いた。その男はオペだった。


「俺、全能統治軍のレガリオなんスよ〜ちょっとこの辺りで探してるものがあって…お時間良いっスか?」

オペの目を真っ直ぐ見つめたままガニメデは言う。


「…そうなんですね。お疲れ様です。レガリオっていうのは何ですかね?」

ガニメデの目から視線をそらさず、オペは答えた。


「……お気になさらず。お聞きしても?」


「えぇ。どうぞ。」

オペはニコリと笑う。ガニメデも笑顔を返した。


「そのカゴ、めっちゃ重そうっスね〜、ずいぶんな量買い込んでいるっスけど、1人で食べるんスか?」


「友達とシェアハウスをしていて…みんなで分けながら食べます。まあ獣人は食べる量がもともと多いっていうのも…もちろんありますけどね。ハハハッ」


「…全然汗をかかないっスね。もの凄く正直な人なのか…はたまたもの凄く嘘つきなのか…」

ガニメデはオペの顔を睨みつける。


「…俺の妄想を話してもいいっスか?この辺りに政府に歯向かってる奴らの集まりがあって、静かに暮らしてる…でも物資がいつかは足りなくなるからちょうど今貴方が背負ってるようなリュックに外で買ったものを詰め込んでアジトに帰る…でその組織のアタマの名前はオペロジャック…とかどうっスか?」

オペから一切目を離さずに、ガニメデは続けた。オペはゴクリと唾を飲み込み、少しの沈黙が生まれる。


「いやぁ…凄いストーリーだ…作家を目指してみてはいかがですかね。言っても、現実でそんな組織があったらすぐに全能統治軍に見つかっておしまいですよ」


「…でスね。お時間をどうも。あ…ブロッコリーなら紫に変色したやつが甘くて美味しいっスよ」

オペの目の前にある棚を指差してそう言うと、ガニメデはその場を後にしようとした。すると突然、店内に何者かの声が響き渡った。


「オペ殿〜!このお菓子買ってくれないかね?」

ホーネットはスナック菓子を掲げながらオペの方へ歩み寄る。カゴに菓子を入れると、顔を見上げて驚いた。オペは震えながらホーネットを睨んだ。


「おっ…と?ワガハイ、何かしたかね…?」

パリィィィン!

ガニメデがオペの頭を掴み、棚に叩きつける。足蹴りをして反撃するもすぐさま肘で後頭部を打たれよろける。オペは足をかけてバランスを崩そうとするが、ガニメデは足や腰を巧みに使い逆にオペを転ばせた。警報のような音が鳴り響き、天井から火花が走る。


「やっぱりお前じゃねぇ〜かよ〜ぉ〜?あぁ〜!?」


「…会いたくてたまらなかったぜ、レガリオ。」

オペが膝をつきガニメデを見る。


「そうスか。じゃあ俺のために死んでくれっス」

ガニメデは上へ人差し指を立てた両手を合わせると、右手をグルリと回して人差し指を下に向けた。するとオペは身体が軽くなったような感覚を味わう。しかしそれもつかの間、宙を待って天井に立ったオペが周りを見渡すと、店中の商品と他の客が無重力のように天井にへばりついていた。ガニメデに視線を戻すと、数個の袋がオペに目掛けて飛んできていた。


「くっ…!」

腕で箱を弾きとばす。しかし中身の粉がオペの顔に散布され真っ白になってしまう。視界が開けた瞬間、ガニメデはオペの顔目掛けてキックを繰り出していた。彼の脚は容姿なくオペの顔面を叩き、商品棚へと吹き飛ばした。


「あんたら獣人はフィジカルが強い…呪いを持っているとなると尚更ね。レガリオとか言っても俺以外は結局はその身体能力で誤魔化せちまう。でも俺は違う。いくら凄え肉体だろうと空間には敵わないっスよね」

ガニメデは挑発するように腰を曲げ手を当てた。


「…肉体は空間に勝てないな。だが俺はあいにく…それ以外の武器をいくつか持っているのでね」

オペがニヤリと笑う。ガニメデの背後からガラス片が飛んでくるが、彼はそれをすんでのところで避けた。頬に少し掠った傷がつく。




「俺の妄想の話をしてもいいか?お前をぶちのめしてこのあと全部大成功。…なんてのはどうかな?」

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