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[第32記]化け物

「…なぜ急に気が変わったんだ?」


「質問しているのはワガハイだよ?オペ殿。君たちと一緒に戦うというのも()()()()()()と思っただけだよ。」


「面白そうだと…?ふざけた理由だ…」


「ふざけるのはとても重要なことだよ。真面目な空気感のなかで突拍子もないことをしたいと思ったことは?誰にだってあるはずだ。自分から狂気へ羽ばたくとき、人生は豊かになる。ワガハイの言っていることがわかるかね?」


「…つまりお前は、自分が楽しければ良いってことか?とんだイカれ野郎だ…どうする?オペ…」

ルドがオペの方へ視線を移す。


「…悪いが。俺の仲間たちには手を出さないでほしい。真剣にやってるから面白さは期待しないで欲しい…でも…協力してほしい…」


「はぁ〜…オペ殿…己がいかに無理難題を言っているのか分かっているのかね…?」

ホーネットは額に手を当て、ため息をついた。


「すまない。でもそれ以外は認められない」


「ホホホッ!じつに自己中心的だ!ワガハイとオペ殿は似たもの同士なのかもしれないね!」

大笑いし、オペの目の前に手を差し出す。オペも手を取り、2人は握手を交わした。


「いいだろう!手を貸そう…!」


「本当か…!?良かった…!」


ホーネットはマントの中から折りたたまれた紙を取り出し、オペの手にそっと握らせ言う。

「ワガハイの連絡先だ。アジトで開けてくれ。」


「ではな。帰るぞ、トグル。」

トグルはこくりと頷くと、ホーネットはカフェの扉を開けた。上についたベルが静かに音を立てる。オペとサディも後を追いかける。しかし、カフェを出ると2人の姿はどこにもなかった。


「…なんだったんだ?あいつらは…」

サディは困惑しながら天を仰ぐ。


「さぁな…ろくなやつじゃないのは確かだ。」

オペはそう言い、カフェの中に戻る。するとオペの携帯が鳴った。

プルルルルル…


「…ん、なんだ。ああ、ああ…分かった。」

電話に出て話し始める。


「…このあたりで政府軍に絡まれてる保呪者がいるらしい。俺らのうち誰かに行ってほしいそうだ」

電話を切りオペが言う。


「…ボクが行くよ。」

シズがオペの肩をポンと叩き扉に手をかける。


「いいのか?安静にしてたほうが…」


「ボクのこと舐めてるの?もう全快したよ。その保呪者の詳しい場所、送っておいて。」

バタン…カフェの扉が閉まる。


「…じゃあシズに任せて俺らはアジトに戻ろう」

オペはルドに肩を貸しながら歩き、アジトへ戻った。



「た…助けて下さい!俺はただの獣人ですよ!」

政府軍は猿のような獣人を追いつめる。獣人は立つ体力すら尽きたようで、地面にへたり込んでいる。


「呪いの反応が出てるんです。私たちとしても連行しないと上に怒られてしまいますので…」

政府軍のうちの1人が説明する。


「足でも撃てば大人しくなるだろ」

銃を取り出し獣人に向ける。

ヴォン…ギャキィ!銃身が焼き切れた。


「なっ…なんだ…お前はぁ!?」


シズは顔にかかった垂れ耳を指でのけた。

「…ふぅ、間一髪ってところかな。大丈夫?」


「誰ですか…!?貴方は…」


「おしゃべりするのは後で。まずこいつら」

銃弾がシズを襲う。シズは鎌を振り回し弾く。

手を伸ばし魂を操ると、政府軍たちは痛みだした。


「がぁぁ…!いてぇ…」

ガンッ

シズは鎌の柄で勢いよく頭を突き、政府軍と獣人を気絶させた。獣人が目を覚ましたのはアジトだった。


「ここは…どこですか?あなたは…?」


「ボクはシズリィロ・マホガニー。ここはSIMっていう…反乱軍のアジトだよ。キミの名前は?」


「ナヴィ・ナバスティです。…反乱軍…ですか」


「…回りくどいのは嫌いだから結論だけ言うね。キミは『保呪者』だ。だからここで生活することになる。急で申し訳ないけど、みんな優しいから…」

横たわるナヴィに、シズが優しく微笑みかける。


「保呪者…!?化け物じゃないか!俺はただ…普通に暮らしたかっただけなのに…なんでこんな目に…」

ナヴィは激しく動揺し、掛け布団を握りしめた。


目がスッと冷ややかな視線に変わると、心底イライラしたような口調で話し始めた。

「…ボクたち化け物だって普通に暮らしたかったさ。でもそうすると政府軍に捕獲されて強制労働送りだからね。助けなければよかったかな?」

そう言うとシズは扉を閉め廊下に出てしまった。


「おっ、無事で良かった〜」

少しして扉が開くと、サディが部屋に入る。


「ん?なんだ黙っちゃって…あ、アタシはサディ。ここの副リーダーみたいなもんだ。さっき果物貰ってきたんだけど食べるか?アタシ剥くの上手いぜ〜」


「…う、うぅ…!ごめんなさい…!」

ナヴィが涙をこぼす。


「どうした…!?シズがなんかしたか!?」


「違うんです…!俺…化け物だって言っちゃって…!こんなに温かい人が化け物なわけないのに…!」


「……あー…なるほどね。まぁいきなり連れてこられて冷静じゃなくなってたんだろ。落ち着いたらアタシと一緒にシズのところへ行こう。な?」




ナヴィは布団の中で泣き続ける。サディは何も言わず、ただ彼の側に居続けた。

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