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[第28記]スキルパルス

「あの…君たちは人間だよな?俺が怖くないのか」

困惑しつつも、2人を見てオペは話す。


「え?あぁ…まぁ珍しい感じのひとだけど…別に気にしないよ。困っている人がいたら助けるってお母さんも言ってたし…」


「そう…なのか…」

アイジの優しさに少し安堵する。しかしすぐにハッとした表情でここがどこなのかを問う。


「記憶喪失なのか?ここは2140年のロンドンだ。」

オペの方を向くと、アイジの兄は静かに答えた。


2140年。自分が生きている時代から約150年前。頭のなかを思考がグルグルと回る。そして難しく考えるのをやめ、ため息をついた。するとアイジがオペの手を掴み、「案内してあげる」と微笑んだ。


「楽しんでこいよ。俺はいつものとこにいく」

少しニッと笑う。アイジの兄は軽く手を振りながら別の方へ行ってしまった。


そこからオペはアイジにロンドンの街を案内される。

毎日通る道。行きつけのレストラン。父親の好きな喫茶店。景色が綺麗な場所。


「あ、そうだ!オペさん、僕ん家にこない?お母さんもきっと喜ぶよ!お母さんの作るお菓子も凄く美味しいし!ぜぇ〜ったい気に入ると思うな!」

日も沈む頃、アイジからの誘いを受ける。


「いや…大丈夫だ。もう充分この街を楽しんだよ。」

誘いを優しく断ると、オペはなぜか無性に行きたくなった橋の下に足を運ぶ。


「あっ…あれは…」

そこには…アイジの兄がいた。兄はオペがこちらをみているのに気づくと顔をそらした。


「…なんの用ですか。俺はアイジみたいに人懐っこくないんです。あなたみたいに暇でもないし。」

近づいてくるオペを見て大きなため息をつく。


「あぁ…確かに暇だが…というかアイジくん、めちゃくちゃ良い子じゃないか!あリがとうって言っておいてくれよ。」


「まぁ…はい。で、それだけですか?用は。」


「いや…何してたのかなって気になってさ。今も息切れしてるし。修行してたのか?」

頭の後ろに手を当てて、申し分なさそうに聞く。


「そうですね。自分で技作ってました。引きます?」

オペを睨みつけると、兄はため息混じりに言った。


「技!?自分で作れるのか!?かっこいいじゃないか!俺もやりたい!教えてくれ!」

オペは目を輝かせて兄にすり寄る。兄は少し顔を赤くして、照れたように再び顔をそらした。


「……じゃあ…教えてあげますよ。スキルパルス」

前方を手の甲で叩くような仕草をすると、周りに衝撃波が走り、地面にいた虫が死んだ。


「とまぁ、こんな感じで自分の能力を空間に付与して一瞬だけ放出する技です。俺は剥奪の能力を持ってるんで、虫が死にました。まだそれだけですが。」


「技名もかっこいい…」

ワクワクしたように身体を揺らすオペに、兄もノッてきたのか熱心に教えてくれた。


―4時間後

「違う違う!もっとため込んでから解放!」

兄ともすっかり打ち解け、少しづつコツをつかんできた。汗をかきながらオペが宙を叩くと、強い風が2人を襲った。


「どっちだ今の…ただの風か…?」

オペが兄と顔を見合わせる。


「オペさん、不具合の能力なんですよね?ならこれ…ここに置きますね。」

兄がラジオを手に取りオペから少し離れたドラム缶のうえに置く。ザザッ…という音がして、人の声が流れ始める。兄は離れてラジオを差して言った。


「どうぞ。」


「おらぁっ!」

オペがラジオに向けてパンチを繰り出す。風が吹き、ラジオが止まると、砂嵐が流れ始めた。


「やっったあああ!オペさん!!成功ですよ!やりましたね!」

兄は嬉しそうにオペとハイタッチをする。ラジオから再び声が流れる。


「なるほど…数十秒だけか。でも良い技だ。あリがとうな。教えてくれて。えーと…」


「あっ、そうだった。俺の」



「…ハッ」

オペが目を覚ます。ベッドから飛び起きると、横に書き置きがされていた。オペが恐る恐る、でも何かを期待したような顔で紙を見ると、綺麗な字でこう書かれている。


「サディが今日の夕食を作る 残すなら殺す 食わないとしても殺す シズ」

少し気の抜けたようなため息をつき、食堂に向かった。シズがテーブルでスパゲッティを食べている。


「夕食作るのがサディって書いてたから来た…」


「良かったよ。来てくれて。これオペの。」

シズは隣の席にあったスパゲッティが乗った皿をスッと傾ける。オペが隣に座ると、シズはフォークをくるくる回しながら言う。


「なんかあったの?ずっと気色の悪い笑みを浮かべてたけど。サディとなんかする夢でも見た?」


「いや…なんか…もっと重要な…大事な夢を見ていた気がする…詳しいことは思い出せないが…」


「ふぅ〜ん…」

シズがスパゲッティを頬張る。


「あっオペ起きてる。いいタイミングだな。どう?」

サディが手を拭きながらオペの向かいに座る。


「美味しいよ。どんどん上手くなってるなサディ。」

オペはニコッと笑いかける。


「へへっ…あ、シズ。ほっぺについてるぞ。」

サディがナプキンでシズの頬をゴシゴシ拭く。


「んむっ…あリがとうサディ様…」




オペは食べ終わった皿をどけて頬杖をつきながら

2人を見つめて優しく微笑んだ。

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