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[第25記]春夏秋冬

「うぅ……のみすぎた…」

オペが目を覚ますと、背中に毛布のようなものが掛かっていた。どうやら昨日酒を飲んだあとにそのまま寝てしまったようだ。


「おっ起きてる。随分寝たなあ。おい!ルド!友達起きたぞ!」

ガラガラと扉が開く。すると買い物袋を持った店主とルドが入ってきた。


「オペ、起きたか。大将が『サシミ』作ってくれるってよ。いろいろと買ってきたからよ」

ルドは袋を上げてニッと笑った。


「任せな!」と店主は手を洗って魚を捌き始める。ルドとオペは刺し身を食べた後、店主に礼を言った。


「色々世話になったな。大将。実はオレら保呪者でさ…匿って貰ったみたいになって申し訳ない。世界変える為にレガリオとやり合いに来たんだよ。」

ルドは頭を下げて謝罪した。店主は驚いたが、優しく微笑みルドとオペを抱き締める…。


「政府の奴らとやり合うのは大変だろうが…オラはいつでも味方だァ。全部終わらせたら仲間全員でこの店さ来て打ち上げしな!ただにしてやるからよ!」


「ははは!ありがとうよ!ごちそーさん!」

二人は店主に別れをつげて横丁を後にした。



「あ、そこの公園でゆっくりしないか?」


オペはベンチに座るルドに自販機で買ったお茶を渡して自分のボトルのキャップを開ける。


「ん…うまいな。リョクチャ…っていうのか」

桜が舞い、春の匂いがお茶を飲む二人を優しく包み込む。ただボーッとしながら桜の樹をながめていると、公園の入り口から何者かが歩いてくるのが見えた。


「お、獣人とは珍しい。お客様ですか?」

ベージュのカーディガンを羽織った人間だ。髪は濃い青色で、黄緑の瞳をしている。


「あぁ…俺たちを見ても驚かないんだな。」


「ハハ…まぁ見たことありますからね。それよりも貴方たちは大事な観光客だ。大切におもてなしするってのが筋ってもんでしょう?」

その人間は団子を取り出してオペとルドに渡した。二人が顔を見上げると人間はニコリと笑って頷く。


「美味しい!ほっぺたが落ちそうだよ」

オペは口の周りを舌で舐めながら団子を頬張る。


「そんなに美味しそうに食べられるとこちらも幸せな気持ちになりますね。あっちにも素敵な景色があるんです。良かったら行きませんか?」

人間は優しく微笑む。


「良いのか!宜しく頼む…俺はオペでこっちがルドだ。」


「私のことはカリス…とでも呼んで下さいな。」


オペとルドは公園を出て川を見る。その後もカリスに緋鶴の美しい場所を隅々まで紹介してもらった。夜になり桜がライトアップされると、カリスは「特にお気に入りの場所がある」と少し町から外れた河川敷のようなところへ二人を連れた。


「仕事で疲れたりするとここに来るんです。アーチ型の赤い橋でいくつかの小さい島が繋がってるのがどこか幻想的で…間に流れる川も綺麗ですし…」


「確かに素敵なところだ…!緋鶴に来てよかったよ」


「さて!晩ご飯も良い店を知ってるんです!天ぷらが絶品で…」

パン、と手を鳴らしカリスはおもてなしを続けようとする。


「あー…すまない。そろそろ行かないと」

オペは申し訳なさそうにカリスから目を逸らす。


「おや…何か予定が?」


「レガリオを倒さないといけなくてな…」

ルドが説明をする。するとカリスが表情を変える。


「差し支えなければお聞きしたい…イオとエウロパが行方不明になっているのはあなた達が原因ですか?」

少し声のトーンが下がり、真顔でルドを見る。


「…そうだ、と言ったら?」

橋の真ん中にいるカリスを、小島にいるルドが挑発する。


「……葬らせていただくかもしれませんね」

その場で回転する。桜のようなものがブワリと散ると同時に風が吹き荒れる。視界が晴れた時にはカリスは黒い模様付きの布に赤いラインが入った和服を身に纏っていた。腰には刀もある…


「何の話でしたっけ…そうそう、私を倒すんでしたね。喜んで相手しましょう。宜しくお願いします」

刀の鍔に手を添えて軽くお辞儀をする。顔を上げたカリスの髪には周りの提灯の赤い光が反射する。


「はっ…レガリオかよ…探す手間が省けたな」

ルドはリボルバーを取り発砲する。しかし…

キィン!

銃弾はカリスの間合いに入った瞬間に真っ二つに分かれてしまった。破片が後ろの橋に着弾する。ルドがカリスを見ても抜刀はしておらず、以前として鍔に手を添えたまま橋の上に立っている。


「バリア系の能力か…?」


「私はちゃんと刀で銃弾を対処しましたよ。では次は私から貴方にいかせていただきます」

カリスは刀を少し抜く。チャキ…と音がした直後、彼のいたところには砂利が舞い姿が消えた。


「どこにいった!?」

オペとルドは周りを見るが、カリスの姿はどこにもない。上から光が見えた気がした二人が見上げると、ボォ…と何かが燃えている…カリスだ。


ド ォ ン


カリスは急降下し、炎の軌跡が残る。衝撃波が二人を吹き飛ばす。


燦陽夏(さんようか)……」

カリスは静かにつぶやいて刀をチャキン…としまう。


「熱い…!なんだ…ここだけ熱が高くなった…!?」

オペは熱さで顔を歪ませたが、すぐに持ち直してハンマーで殴りかかる。

キン!刀で弾かれてしまった。


「次は対応してみせる…!」

ルドは銃に弾を込めながら言った。




「やってみなさい…透脚秋(とうきゃくしゅう)

カリスが再び消えると、辺りには大量の紅葉が振り、地面が紅葉だらけになった。

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