表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/28

[第24記]春は晩酌

「あっははは!だって1人で納得して…!ははは!」


「もぉ〜〜っ!夢でもオペが悪いぜあれは!」

恥ずかしそうにオペを叩く。


「そこのバカ夫婦。ちょっとええ?」

しゃがんでいるザヤが指を鳴らす。


「「夫婦じゃない!」」

オペとサディが同時にザヤの方へ振り向く。


「バカを否定しぃや……まぁええ、シズの容態が危ない。今すぐ飛行機戻ってアジト帰るで」


「こいつは?」

サディがイオを指差す。


「あー…グルグル巻きにして飛行機乗せよ。流石に眠らせたら墜落する状況なら煙出さんやろ。」



フィーン…

飛行機がマインダボイラーの滑走路に着陸する。


「シズの担架持ってこい、輸血もするんだ」

オペは迎えにきたメンバーに指示を出す。


「分かりました!シズさん血液の型は!?」


「Rhマイナスの…AB型…」

シズは担架で運ばれていった。


「こいつ拘束しといて。煙出すから気いつけや」

ザヤもメンバーに指示をし、イオを引き渡す。


アジトに入ると、廊下の先から何者かが駆けよってくる。ルドだ。

「あんたら…大丈夫だったか…?行けなくてすまん」


「大丈夫…ではないが…シズも助かりそうだしレガリオの1人も倒せた。充分だよ」


「そうか…!そりゃ大手柄だ」

嬉しそうにルドがオペの肩を叩く。


「…ルド。話がある…今夜俺の部屋に」

オペはルドに肩を組み、少し前屈みになる。ルドは真剣な顔をした。


「ふぁ〜…眠。うちもう寝よかな」

ザヤは腕を上に伸ばしてあくびをし、自室に向かう。

それからザヤを除いた4人で食事をし、オペは自分の部屋に入った。


ガチャ

「よし。準備OKだ」


「分かった。では話そう」

サディが座ると、オペは話をはじめた。



「なるほどね。」

…話が終わるとルドは椅子にもたれかかる。


「どうだ?やってくれるか?」


「ああ。正直オレも思ってたんでね。任せな」

ルドは笑みを浮かべ、ウインクをしてみせた。


「頼もしいよ。」


「じゃあオレは戻るよ。」

ルドは帽子をクイッと下げ会釈をしてから扉をあける。そこにはザヤがいた。ルドは引きつった顔で後退る。オペも驚いて少したじろぐ。


「はは、なんやびっくりしすぎやで?」


「ザヤ…音しないまま来ないでくれ」


「ごめんごめん。シズちんの意識が安定したで」

笑いながらシズのカルテを見せる。


「そうか!」

オペは部屋を飛び出し病室に向かった。

シズのベッドの横には既にサディがいた。


「あっ。オペ」

シズが微笑む。声は掠れておらず元気そうだ。


「良かった…!」


「大げさなんだよ。ボクは大丈夫。」


「ちょっとええか!?とんでもないニュースや!」

病室にザヤが駆け込んできた。


「エウロパがレガリオの1人の位置をゲロった!すぐに行こうや!突撃や!」

ザヤが飛行機のカギを揺らす。しかしオペはルドと顔を見合わせて言った。


「…俺たち2人で行く。」


「はぁ!?死ぬで!?うちも連れてかんと」


「いや?オレがいるから平気だね。あんたの半分くらいの力は出せる。やれるよ」


「アタシもいく…!」

サディが立ち上がる。


「ダメだ。シズを見ててくれ」

オペが静かに否定する。サディはなにも言わず再びシズのベッド横の椅子に座った。


「ルド、行こう。」


「…はいよ」


ザヤから飛行機のカギを取り滑走路に向かう。運転手に行き先を伝えると、ルドとオペはマインダボイラーに別れを告げた。


「…これで良かったんだ。気ぃ負うんじゃないよ。」


「そうだな…あと話は変わるが…今から行く『緋鶴(ひづる)』はどんなところなんだ?」

オペが地図を眺めながら機長に尋ねる。


「昔は『ニホン』…なんて名前だったらしいですが、二千年ほど前からある塔があったり…落ち着いた雰囲気で良いところですよ。」


「二千年ねぇ。すごいじゃん」



フィーン…飛行機が着陸する。周りには桜の木がライトアップされ、花びらが舞っている。オペはその花びらをつまんで顔の上に掲げた。


「綺麗だ…」


「せっかく緋鶴にきたんだ。横丁とやらに行ってみようぜ?」

ルドは煌びやかに光る路地を指差した。


「…いいか。息抜きも大事だしな。いこう。」

道に入っていく。赤や橙色の提灯が二人を歓迎し、焼き鳥屋の煙と焼酎の匂いが甘く誘惑する。ルドは居酒屋に入るとカウンターに座り、手招きした。


「まぁ座りなよ…積もる話もあるだろうさ」

隣に座ったオペの背中をポンと叩き、帽子を外す。

ふわっと赤い髪が広がった。ルドはツマミと酒を注文し、静かに話を始める。


「……サディのこと好きだろ?」

オペが口に含んだお冷を吹き出し咳き込む。


「ゲホッゲホッ!急に何言ってるんだ!?」


「バレてないと思ったか?飛行機でサディが寝てる時もお前チラチラ見てたしよ。なんならこっそり手繋いで満足してたし。男なら抱きしめるくらいしろよな」

ツマミを食べながら説教する。


「ならルドは出来るのかよ!?」

オペは顔を赤くして立ち上がりルドを指差す。


「はっ、出来るけどアンタ嫉妬するだろ?」


「する!!!サディは俺のだ!!」

店主に注がれた酒を飲み干し叫ぶ。


「はっはっ、兄ちゃん青いねぇ!」

店主が笑って厨房から身を乗りだす。


「オラも昔はヤマトナデシコのかわい子ちゃんに恋してたもんさぁ…そうだなぁ…あれは…」

―16年前


「…いや、大将の過去はいいよ。」

ルドが店主の回想を止める。


「そうかい?そうかぁ…でも聞いてくれたらこのツマミと酒の代金、負けてやったんだけどなぁ…」


「大将、話せ!サディにも活かせるかもしれん!」

オペは瓶を持って片足を椅子に乗せる。酔っているようだ。


「良いねえ!気に入った!今夜は宴だァ!」

店主が看板の表記を"閉店"に変えて大量の瓶を出す。




オペ…ルド…そして店主は、夜通し酒を呑み交わしながら色恋沙汰について胸の内を喋りあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ