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[第1記]日没のなかで

―2495年

「…じゃあ行ってくるね。あっ、オペももうお兄ちゃんだから分かると思うけど、玄関の扉は開けないようにね。いってきます。」

獣人の女性が外へ出ていく。


「うん…いってらっしゃい姉さん」


「…遅いなぁ…見るなって言われてるけど、姉さんの部屋のテレビ見ちゃおうかな。」

少年は目に付く本をひと通り読むと、姉の部屋に行きテレビを付けた。報道の音が部屋に広がる。


「本日の保呪者(ほじゅしゃ)捕獲数は12人です。それではまずこちら…ダズル・ホーマン…」

顔の画像と共に名前が晒されている。


「サナベル・ツェペリ……ジョン・ハルダン……ステラ・ヤンダーソン……アゴリア・サードン……」

画像が切り替わり順番に名前が呼ばれる。


「ソメルハック・コガー……」

オペロジャックはテレビに顔を近づける。知っている名前と共に映っていた顔は、姉のものだった。


「…これらの12人は全能統治軍(ぜんのうとうじぐん)の収容所へ。後に強制労働所へと移送されます。続いて全能軍の優秀成績者の紹介です。まずはニッ」

テレビを消す。オペロジャックは動揺して震える手を抑えて少しづつ今の状況を理解する。


「…とりあえず情報を得ないと…!」

再びテレビの電源ボタンを押す。しかしテレビの画面は暗いままだ。オペロジャックの額から汗が垂れる。


「なんで…点かないんだ…!そうだ、ラジオなら…」

リビングに戻りラジオを触る。その瞬間……


バチチッ…バンッ!

ラジオから火花が散り、煙が噴き出る。


「ぐっ…!一体どうしたらいいんだよ…」

へたり込み涙目になる。しばらくしてオペロジャックは逃げるようにベッドに潜り、眠りについた。するとその日、彼は妙な夢を見た…



「おっ。来たのか。調子どうだ?」

話しかけてきた男は紺色のフードを被っていて顔が見えない。タバコを吸っている…


「僕は今世界に絶望してるんで…最悪だよ」


「…もしお前がこの腐った世界を変えたい、と強く願うなら…己が手でチームを創るんだ。守りたいものを詰め込んだ最強のチームをな。そしてお前がその仲間たちのリーダーとして邪魔モンを叩きのめす。」


「…………できますかね。僕にそんな大層なこと。」


「家族のために世の中を変えるんだろ?ビビる必要なんてない。お前は力を持ってる。最強だ。」


「…はっ…」

オペは目を覚ます。そして荷造りを済ませると、玄関を開けて飛び出した。



「うわぁぁぁ!助けてぇぇ!捕まる!」

獣人は街を走り回る。後ろには政府の追手。


「おい!政府のやつ!僕が相手だ!」

政府の軍が振り返ると、オペロジャックがいた。


「あ?坊っちゃん保呪者か?獣人で怪しいけど、お兄ちゃん今忙しいから後でな」


「僕だって能力持ってるんだぞ!捕まえてみろ!」

オペロジャックは挑発する。政府の軍は近づき腕を強く掴む。痛みのあまりオペロジャックは唸った。


「いっ…いたい…!はなせっ!はなせぇぇぇ!」


「保呪者かい…そうかい…なら話は違ってくるな。なら検査を……っておいマジじゃねぇかよ!連行しないと」


ゴンッ!鈍い音がして政府の軍が地面に倒れる。

後ろにはコンクリートブロックを持った、先ほど逃げていた獣人がいた。


「坊っちゃんありがとうよ。気ぃ反らしてくれて。」


「へへ…計画通りだよ。お前がチーム1人目だ!」


「チーム?もしかして坊っちゃんレジスタンス創るのか!」

獣人は目を見開き、オペロジャックの肩を掴む。


「れじ…すたーと?」


「反乱軍だよ!政府に対して不満なやつらで集まって戦う組織!」


「そう!それ!創るんだ!入ってくれよ!」

オペロジャックは相手の腕を握る。


「もちろんだよボウズ!何のために戦うんだ?やっぱ政府に嫌気が差したからか?」


「姉さんが攫われちゃって…それを助けるためだ!」


「そうかい!家族想いだねぇ!あぁすまねぇ自己紹介が遅れたな。オレはパール!宜しくなボウズ」


「僕は…オペロジャック!宜しくねパール!」



―2500年

ベッドの上に仰向けになった灰色の毛並みの獣人が目を覚まし、オレンジ色の目が輝く。ゆっくりと身体を起こし、茶色い和服のようなものの上から緑のジャケットを着ると、眠たげに目を擦りながら扉を開けた。


「おはようございます。オペロジャック様」

スーツとネクタイをした老獣人が挨拶をする。


「ふぁ〜…おはよう。オペで良いって言ってるだろう。呼び捨てにしてくれよ」

眠そうに文句を言いながら、緑の帽子を被った。


「いえいえ…こんなジジイめを政府軍から救ってくれた救世主です。呼び捨てなど恐れ多い…」


「ううむ…あまり堅苦しいのも好きじゃないんだ…あっ、では間を取ってオペ様でどうだ?」


「アッハッハ、かしこまりました。オペ様。」

老獣人は笑い、噛み締めるように名前を呼んだ。


「よし」

オペは優しく微笑み、食堂へ向かった。


「あ!おはようオペ!」

「おはよう!」

「あらオペさん…おはよう」

食堂に入った途端、皆がオペを笑顔で迎える。


「あぁ、おはよう。」


「…パールはどうした?」


「パールさんは…逃げました。ここでの生活に我慢出来なかったみたいで…今は安否もわからず…」


「そうか…これで今週5人目だな」

続いてオペは中央広間に向かう。そこでは屈強な獣人達が訓練をしていたが、オペが広間に入った瞬間、後ろで腕を組み、姿勢よく整列した。


「「おはようございます!オペ司令!」」


「うむ。おはよう。戦闘班のみんな。」


オペが照れたように頭をかく。すると整列している1人の班員が怪我をしている事に気付く。


「…それ。どうした。」


「え…あぁ、政府軍にやられて…」


「…そうか。奴ら、どんどん強くなっているな」


「ですね。最近銃が支給され始めたらしくて」




「銃…?」

オペの口に少し笑みが溢れる。

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